ロシアのプロパガンダを発信する160の偽ニュースサイトは工作員になった元フロリダ州保安官とつながっている
「DC Weekly」「New York News Daily」「Boston Times」など、アメリカのどこかの地方報道機関を装った名前の偽ニュースサイトからロシアのプロパガンダを発信する作戦が行われています。この作戦に深く携わっているのが、元フロリダ州の副保安官でロシアに亡命した人物であると指摘されています。
Over 150 Russian fake news sites linked to former Florida deputy sheriff, report finds
https://www.nbcnews.com/news/us-news/fake-news-sites-florida-deputy-sheriff-russia-rcna154315
Once a Sheriff’s Deputy in Florida, Now a Source of Disinformation From Russia - The New York Times
https://www.nytimes.com/2024/05/29/business/mark-dougan-russia-disinformation.html
問題の人物、ジョン・マーク・ドゥーガン氏は、もともとはフロリダ州パームビーチ郡の副保安官を務めていました。
しかし2016年、収集した個人情報をさらすドキシング攻撃を行ったとして刑事告発され、ロシアに亡命しています。
ドゥーガン氏は、ロシアでは英語プロパガンダの提供グループに属しており、ジャーナリストを名乗って公聴会で証言したり、国営テレビに出演したりしているとのこと。
偽情報などに対抗する組織・NewsGuardのマッケンジー・サデギ氏は2023年11月、定期的なネットパトロールを行っていた際に「DC Weekly」というニュースサイトを発見しました。
The Fugitive Florida Deputy Sheriff Who Became A Kremlin Disinformation Impresario - NewsGuard
https://www.newsguardtech.com/special-reports/john-mark-dougan-russian-disinformation-network/
ニュースサイトに精通するサデギ氏が、未知のサイトの存在やその中身に違和感を覚えて調査したところ、「DC Weekly」はワシントンには存在せず、モスクワでホストされていて、ドゥーガン氏が所有するIPアドレスと紐付いたサイトであることがわかりました。ただし、サデギ氏がWhatsApp経由で連絡を取ったところ、ドゥーガン氏は取材に応じたものの当該サイトについては知らず、ロシアとのつながりについても否定したとのこと。
NewsGuardによれば、ドゥーガン氏が展開しているとみられる偽情報サイトの数は160以上あって、ChatGPTやDALL・E 3などを活用して「フロリダにゼレンスキー大統領の別荘がある」「ゼレンスキー大統領がアルゼンチンからコカイン300kgを密輸しようとした」などの偽情報が量産されていました。
今回、サデギ氏はドゥーガン氏が具体的に偽ニュースサイトとつながっていることを発見しましたが、それ以前からドゥーガン氏はYouTubeで親ロシア的プロパガンダを発信している人物としてマークされていました。
ドゥーガン氏の活動を注視してきたクレムソン大学のダレン・リンヴィル氏によると、偽ニュースサイトに掲載された記事は、ロシアのインフルエンサーやボットネットによって拡散され、ロシア側メディアによって「事実」として報道されるという流れをたどるとのこと。
その情報をさらに西側諸国のメディアや政治家が拾い上げて報じれば大成功で、たとえば2023年12月に拡散した「ゼレンスキー大統領がヨット2隻を購入した」というニュースはこの流れで拡散されたもので、共和党のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員やJ・D・ヴァンス上院議員らによって取り上げられました。
リンヴィル氏は、近頃はプロパガンダの内容がウクライナ関連からアメリカの大統領選にフォーカスを移しつつあることを指摘しています。
なお、ドゥーガン氏は2023年にYouTubeのアカウントを凍結されています。このことについてドゥーガン氏はTelegramで「ウクライナにある、アメリカ運営の生物兵器研究所を破壊するロシアの作戦について語ったのが原因」と述べました。
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