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CD・DVD・BDが劣化する要因や種類ごとの寿命についてカナダ保存研究所が解説


大事なデータや思い出として残しておきたい映像・音声は、クラウドサービスやHDDに保存する方法の他、CDやDVD、Blu-rayディスク(BD)といった光ディスクの記録媒体に保存しておくケースも多くあります。このような光ディスクはコンパクトで管理や配布もしやすい一方で、かつて主に記録媒体として使用されたVHSは情報が15年~20年で劣化して消えてしまう「磁気メディア危機」を迎えたように、光ディスクもデータの劣化・損失が起こる可能性があります。そのような劣化や損失が起こる要因などについて、カナダ保存研究所(CCI)が解説しています。

Longevity of Recordable CDs, DVDs and Blu-rays — Canadian Conservation Institute (CCI) Notes 19/1 - Canada.ca
https://www.canada.ca/en/conservation-institute/services/conservation-preservation-publications/canadian-conservation-institute-notes/longevity-recordable-cds-dvds.html

CCIが示す光ディスクごとの平均寿命は以下の通り。CCIによると、最大限に寿命が必要な場合にはフタロシアニン染料と金金属層を備えたCDを用いるのが良いですが、DVDやBDに比べてCDはストレージ容量が少なく、また金金属層はコストが高いため、重要なデータの保存でもこのタイプの光ディスクを使用できない場合も多いとのこと。また、以下の表で示している平均寿命は一般的な温度と相対湿度の影響のみに基づいており、保管環境によって寿命はさらに低くなるそうです。

光ディスクのフォーマット

平均寿命

CD-R(フタロシアニン染料、金金属層)

100年以上

CD-R(フタロシアニン染料、銀合金金属層)50年から100年
DVD-R(ゴールドメタルレイヤー)50年から100年
CD50年から100年
CD-RW20年から50年
BD-RE20年から50年
DVD+R(銀合金金属層)20年から50年
CD-R(シアニンまたはアゾ染料、銀合金金属層)20年から50年
DVD+RW20年から50年
BD-R(無着色・金メッキ)10年から20年
DVD-R(銀合金金属層)10年から20年
DVDおよびBD10年から20年
BD-R(染料または無染料、単層または二層)5年から10年
DVD-RW5年から10年
DVD+R DL(二層)5年から10年


下記の図にも記されているように、CDは複数の層で構成されています。アーティストの音楽CDなど見た目が加工されているものは一番上にラベルのレイヤーがあり、その下に保護層、金属反射層、染料の層、ベースとなる層と続きます。CDのベースとなる層はポリカーボネートが用いられますが、金属や染料、最上部の保護層はさまざまな材料で構成されるため、何が使われるかによって安定性に差異が生まれます。


まず染料については、初期のCDで主に使用された青色のシアニン染料や1996年に導入された濃い青のアゾ染料よりも、薄緑色のフタロシアニン染料が光、高温、相対湿度に対して高い安定性を持っているとCCIは説明しています。以下の表はCDがどの染料を使っているのかを判断する見方で、染料の種類ごとに反射層の色、ディスクの非ラベル面からの外観、光をディスクに透過させた時の外観が異なって見えるそうです。

染料と染料の色反射層反射光によるディスクの非ラベル面からの外観ディスクを透過した光によるディスクのラベルのない面からの外観
シアニン(青)青い
フタロシアニン(ライトグリーン)ライトグリーン
シアニン(青)銀合金青または緑がかった青青または水色
フタロシアニン(ライトグリーン)銀合金ライトグリーンライトグリーン
アゾ(ダークブルー)銀合金ダークブルーまたはライトブルーダークブルーまたはライトブルー


ディスクを読み取るためのレーザー光を反射して、メディア再生プレイヤーの信号検出器にレーザー光を戻す役割を果たす「金属の反射層」もCDの安定性に大きく関係しています。反射層に金が用いられていると非常に安定しており、金属層の腐食が進む「レーザー腐敗」のリスクがありません。一方で銀や銀合金は腐食しやすく、特に汚染物質にさらされたときにCDが読み取れなくなる可能性が高くなります。

DVDの場合は、CDよりもはるかに多くの容量を保存できるため、情報を保存するための媒体としてよく用いられます。DVDはCDの半分の厚さのディスクが2枚重なる形で構成されており、それらは別々に製造されてから接着される工程になっています。DVDもCDと同様にラベル面、プラスチックのベース、保護層、金属反射層、染料の層などで構成されています。DVDで用いられる染料はアゾまたはシアニンですが、CDよりも使用されている色素が少ないため、見た目は少しわかりにくくなっているそうです。また、金属反射層もCDと同様で、金または銀、銀合金で構成されています。


DVDの構成で重要になるのは、2枚のディスクを重ねる形で構成するという工程による「接着剤」とのこと。CCIの研究によると、高温および高湿度の条件下では、接着剤の化学反応により金属層が腐食したという事例が、潜在的な問題として判明しています。

DVDと比較して7倍の容量を提供するBDは、情報層が最大4つまで分かれていることで、より大きな容量を提供しています。BDの特徴は、ベースとなる層にハードコート層が使用されており、この層がディスクの読み取り面となる底面にある、情報伝達層と金属反射層を強力に保護している点。BDには黄色っぽく見える染料を使用しているタイプと、濃い灰色から茶色っぽく見える非色素シリコンと銅合金のタイプの2種類がありますが、CCIの安定性に関する調査によると、BDのどちらのタイプもCDやDVDと比較して安定性がかなり低い事が示されています。


CCIは安定性の調査結果と合わせて、CD・DVD・BDといった光ディスクの損傷率を下げる方法を示しています。まず、光ディスクのデータが早期に損傷する主な理由の1つとして、不適切な記録技術が用いられているケースがあります。光ディスクごとに記録速度が規格化されており、CDは4倍速から12倍速程度、DVDでは4倍速から8倍速、BDは4倍速程度で記録するのがお勧めだそうです。また、レコーディングを行う際にレコーダーのホコリを取り除いたり、光ディスクがレコーダーに対応しているかを細かく確認したりといった、適切なメンテナンスも重要になります。

また、光ディスクの保管と取り扱い方法についても寿命を左右する重要な要素になっています。CCIが推奨する方法としては、標準サイズのジュエルケースもしくは一体型のポリプロピレン製ケースに垂直に収納し、CDやDVDを購入した時に付いてくる冊子やチラシなどを取り除いて保管するのがベストだそうです。ディスクを紙やプラスチックのスリーブに収納すると、物理的な保護としてはかなり弱く、またディスクと化学的な相互作用を起こす可能性もあるとCCIは警告しています。取扱い方法の注意点としては、指紋を付けると読み取りの障害になるため、中央の穴と外側の縁を人さし指と親指で挟むように持って使用する必要がある他、ディスクに判別用の名前を書きたい場合は、粘着ラベルを使用するのは厳禁とのこと。加えて、「ディスクを拭く際には絶対に円を描くように拭かない」「傷がつかないように柔らかい布で拭く」などのクリーニング方法もCCIは示しています。

CCIは最後に、光ディスクに情報を保存・保管するための大事なポイントとして、コピーを作成することを推奨しています。理想的には、3つのコピーを少なくとも2種類の記録媒体に作成し、そのうち1つは保管場所を離して管理しておくのが重要とのこと。また、メディアのブランドを異なるものにすることによって、すべてのデータが同じ理由で失われるリスクを避けることができるとCCIは述べています。

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in ハードウェア, Posted by log1e_dh

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