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人間が人の肉を食べる「カニバリズム」の歴史とは?

by RitaE

人間が人間の肉を食べる「カニバリズム」と聞くと、恐ろしいシリアルキラーや食料のない場所で孤立した極限状況に追い込まれた人が行う場合を連想する人も多いかもしれません。しかし、実際のところカニバリズムは世界中の広い地域で行われてきた長い歴史を持っているそうで、カニバリズムの歴史をまとめたムービーがYouTubeで公開されています。

A brief history of cannibalism - Bill Schutt - YouTube


15世紀のヨーロッパ人は、「奇跡の万能薬」を発見したと考えていました。


その薬はてんかんや……


出血


打撲


吐き気など、さまざまな病気に効くと考えられていました。


茶色の薬は粉末にして飲み物に混ぜたり……


膏薬(こうやく)として直接塗ったり


あるいは固形状のものを直接食べたりと、多様な形で処方されました。


「マミア(MUMIA)」と呼ばれたその薬は、なんとミイラとなった人体をすりつぶしたものだったとのこと。このように、古くはミイラを「薬」として用いることが一般的であり、人間が人肉を少量ながら食べていた一例といえます。


人肉を食べる人間を指す「cannibal(カニバル)」という言葉の起源は、冒険家のクリストファー・コロンブスの時代にさかのぼります。


西インド諸島に到達したコロンブスの一行は、スペイン女王に送った報告の中で、原住民が友好的で平和的だと伝えています。


しかしその一方で、「カリブ族(carib)」という部族に関しては別のウワサを報告しました。


そのウワサとは、カリブ族がアラワク族などの他部族に対して暴力的な襲撃を行い……


捕まえた捕虜を食べる「人食い人種である」というもの。


これに対してスペインのイザベル女王は、「人肉を食べる者を捕まえて奴隷にする」ことを許可しました。


その後、コロンブスが期待していたほどの黄金が現地から得られないとわかると、ヨーロッパ人による略奪や誘拐などが行われるようになります。


しかし現地人がヨーロッパ人に抵抗すると、その人は「人肉を食べるカリブ族だ」とみなされて捕えられてしまったとのこと。


この「カリブ(carib)」という言葉がヨーロッパに伝わる過程で、いつしか「カニバル(cannibal)」になったといわれています。


当初は原住民をおとしめるための言葉が、やがて人肉を食べる全ての人に対して使われるようになったのです。


もっとも、食人行為そのものは実際に世界中で広く行われてきたものであり、はるかに複雑な歴史があります。人肉とはわかりにくい形で薬として人肉が食べられていたマミアもその一つです。


時代や場所を越えて見られる食人としては、飢餓や遭難などで食料がない緊急事態に追い込まれた人が、死体の肉を食べるといったケースがみられます。


これは、死体を食べるかそれとも死ぬかといった極限状態での食人といえます。


しかし、日常的な場面で食人を行ってきた文化も少なくありません。


食人という習慣が文化の一例として認められていたケースは、マミアの例を含めていくつか存在します。


たとえば15世紀以降のヨーロッパでは、マミアの需要が増加した結果、エジプトから盗み出されたミイラだけでは足りなくなってしまいました。


すると、マミアで稼ぎたい人々はヨーロッパの墓地を掘り返し、盗んだ死体をミイラ化させてマミアとして売りさばくようになったとのこと。


こうして、原料のミイラがヨーロッパ産となった後もマミアは薬として用いられ続け……


薬の百科事典である「Merck Index」には、20世紀に入った後もマミアの存在が記されていました。


さらに、ミイラがヨーロッパにおいて用いられた唯一の人体に由来する薬というわけではありません。液体状や粉末状の血は、てんかんの薬として用いられたほか……


人間の肝臓


胆石


脳から抽出した脂


粉末状にした心臓などは、ヨーロッパで人気の高い調合薬だったとのこと。


また、中国では2000年前から食人が社会的に認められてきました。


最もよくあったとみられる食人の形態は、親が成人した自分の子どもの肉を食べるというものです。


これは通常、病気の親を治す最後の手段とされており……


太ももや指など体の一部分を切り取って与えるため、子どもが死ぬようなことはありませんでした。


また、葬送儀礼の一つとして食人が行われることもありました。


最も著名なものとして、ニューギニア島に住むフォレ族の例が知られています。


20世紀の中頃まで、フォレ族の人々は自分の葬式の際に何をして欲しいのかの希望を伝えており……


「自分の死後、体を家族で食べて欲しい」と希望を伝える者も少なくありませんでした。


この食人儀式により、クールー病という治療不能な病気が共同体に広まってしまったと指摘されています。


食人は世界の広い地域で古くから行われており、単一の歴史というものは存在しません。確実にいえるのは、人間が数千年にわたって人肉を食べてきたということです。

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