アメリカ国防総省が5年間にわたってUFOに関する知られざる調査を実施していたことを認める
By Kristian Mollenborg
アメリカ合衆国の防衛を担うアメリカ国防総省が、2007年から2012年にわたって省内で秘密の「UFO調査」が行われていた事実を認めました。
Glowing Auras and ‘Black Money’: The Pentagon’s Mysterious U.F.O. Program - The New York Times
https://www.nytimes.com/2017/12/16/us/politics/pentagon-program-ufo-harry-reid.html
Pentagon admits running secret UFO investigation for five years | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2017/dec/17/pentagon-admits-running-secret-ufo-investigation-for-five-years
この一件はニューヨークタイムズなどのメディアが報じたもので、国防総省は2007年から2012年にかけて毎年2200万ドル(同時期のレートで約20億円規模)の予算を投じて「Advanced Aerospace Threat Identification Program」と呼ばれていた計画を進めていたことを認めています。日本語で「先端航空宇宙脅威識別計画」を意味するこの計画は5年間にわたって進められてきましたが、同省の予算配分政策の変更を受けて2012年に予算がカットされました。しかし、実際にはその後も日常の業務とは別に取り組みが続けられているとのことです。
五角形をした国防総省の建物、通称「ペンダゴン」の一番内側にある「Cリング」と呼ばれる建物の5階で進められていたこの計画は、ネバダ州選出の上院議員であるハリー・リードの要請により予算がつけられ、諜報部職員のルイス・エリゾンド氏によって率いられていました。当時リード氏はアメリカ民主党の上院院内総務をつとめており、強いリーダーシップを示していたことで知られています。かねてから未確認飛行物体など宇宙に関する現象に関心を示していたというリード氏が進めていたこの計画は、リード氏の友人であるロバート・ビゲロー氏が設立したビゲロー・エアロスペースに調査が委託され、その予算の大部分が投じられたとのこと。同社は宇宙関連技術を開発する企業で、2017年12月時点では、宇宙空間で膨らんで居住スペースをつくる膨張式モジュールの開発を行っています。
Bigelow Aerospace
http://bigelowaerospace.com/
しかし興味深いことに、国防総省の中でもこの計画について把握していた人物はあまり多くはなかったとのこと。年間予算が6000億ドル(約68兆円)にものぼる国防総省全体の中で、年間約25億円という計画はほとんど誰にも気付かれることなく進められてきました。業務を請け負っていたビゲロー氏は、宇宙人が存在し、UFOが地球にやって来ていることについて「完全に確信している」と、CBSテレビのインタビュー番組「60ミニッツ」で語っています。また、リード氏はニューヨークタイムズの報道を受け、「真実はそこにある。冗談ぬきに」とUFOの絵文字つきでツイートしています。
The truth is out there.
— Senator Harry Reid (@SenatorReid) 2017年12月16日
Seriously. https://t.co/ytafycaZqe
さらにリード氏は「もし答えを知っているという者がいるとすれば、それらの者は自分自身を欺いている。私たちは答えをまだ知らないが、問いを投げかけるに十分な事実を手にしている。これは科学と国家安全保障の問題であり、アメリカがこれらの答えを見いだす先陣を切らなければ、他の誰かがそれをやるだろう」とツイートし、UFO研究を行うことの意義を主張しています。
If anyone says they have the answers, they’re fooling themselves.
— Senator Harry Reid (@SenatorReid) 2017年12月16日
We don’t know the answers but we have plenty of evidence to support asking the questions. This is about science and national security. If America doesn’t take the lead in answering these questions, others will.
同計画によって公開された以下のムービーは、アメリカ海軍の戦闘攻撃機「F/A-18ホーネット」が未確認飛行物体と遭遇したとする時の様子を捉えたもの。相手の素性が確認できない限り、未確認飛行物体は国家に対する脅威となり得るというのがリード氏らの主張です。
5年間にわたって進められてきた計画でしたが、国防総省は「ほかに予算をつけるメリットのある優先事項があるため」として計画に対する予算の配分を停止。そこでプロジェクトは頓挫するかに思えましたが、計画に携わっていたエリゾンド氏によると2017年時点でも調査は続けられているとのこと。
マサチューセッツ工科大学の宇宙物理学者であるサラ・シーガー氏は、今回の計画のメリットについては無関係と前置きしたうえで、「物体の由来が不明だからといって、その物体が他の銀河からやってきたとはいえません。非常に奇妙な現象が目撃され、詳細な調査が必要と判断された場合であっても、まだまだ科学で説明がつかない現象は多く残されているのです」と語り、「未確認飛行物体=宇宙人」と結びつけがちな世論にクギを刺しています。
計画を立ち上げたリード氏は2017年1月に上院議員の任期を終えて議員生活を引退しています。ニューヨークタイムズの取材に対してリード氏は「私がやってきたことについて恥ずかしく思ったり、申し訳なく思ったりする気持ちはない。これは、私の議員人生の中で成し遂げた良いことの一つだと考えている。他に誰も手をつけたことがない問題に私は取り組んだ」と語っています。
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