サイエンス

宇宙生まれの「スペース・ベビー」へと一歩近づく受精細胞の成長実験に中国の実験衛星が成功

By TORLEY

人類が宇宙に進出できるかどうかを決定づける非常に重要な要素「宇宙での生命の誕生」につながる実験に中国が成功したことを発表しています。中国の実験衛星「実践十号衛星 (SJ-10)」に搭載して打ち上げられた実験施設内で、マウスの胚が分裂を繰り返し、胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる段階に達したことが明らかにされています。

Embryos growing in space a 'giant leap' - China - Chinadaily.com.cn
http://www.chinadaily.com.cn/china/2016-04/18/content_24616857.htm

China claims a major breakthrough in making space babies | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/04/china-claims-a-major-breakthrough-in-making-space-babies/

中国は2016年4月6日、甘粛省にある酒泉衛星発射センターから実践十号衛星を打ち上げました。この衛星には宇宙の微小重力空間で実験を行う20種類ほどの実験装置が搭載されており、12日間の宇宙飛行ののち、内モンゴル自治区の草原地域に帰還することに成功しています。


この衛星に搭載されていた実験装置の中で、マウスの胚を使った実験が行われたとのこと。実験ではまず、電子レンジぐらいの大きさを持つ装置の中に、受精後に2細胞期に成長したマウスの胚を6000個搭載し、成長可能な環境が整えられました。実験前の胚の様子はこんな感じ。


そして打ち上げ後、微小重力空間の中で胚のいくつかが成長を続け、細胞分裂を繰り返して胚盤胞の段階に達したことがわかったとのこと。なお、この実験装置には高解像度カメラが搭載されており、細胞の状態を4時間ごとに撮影して地上へと送信する仕組みが備わっていたとのことで、発表された画像もそのカメラで撮影されたもの。


スタンフォード大学の産科学および婦人科学のAaron Hsueh教授はArs Technicaに対し、実際にどの程度の細胞が成長に成功したのかを見極める必要があるとしたうえで、「微小重力環境がほ乳類の胚の成長に影響を与えないことがわかりました」と、この実験の成果を語っています。

今後は、地上に帰還した実際の細胞を詳細に調査して結果の判断が行われることになっているとのことですが、Hsueh教授が指摘したとおり、実際にどの程度数の細胞が胚盤胞の段階に成長することができたのかが今後の鍵となりそう。この実験に際し、地上でも同数の細胞の成長過程が観察されており、双方の環境において成長した細胞の数にどの程度の違いが出てくるのかが重要となります。

中国科学院動物研究所のDuan En-Kui(段恩奎)教授は「人類が宇宙に入植するまでにはまだ長い道のりが存在していますが、それまでには我々人類が外宇宙で繁殖を続けられるかどうかを見極める必要があります。この実験では、初期段階の胚の成長が宇宙においても可能であるという、繁殖活動における最も重要な段階が証明されました」と語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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