サイエンス

妄想や白日夢にふけるクセを心配しなくてもよい理由

by Karl Gartland

授業中や仕事中につい妄想にふけってしまったり、やるべきことがあるのに集中できずぼうっとしてしまったりで、自責の念に駆られたことがある人も多いはず。しかし、近年の研究で白昼夢や妄想に耽ることは必ずしも悪いことではない、ということが判明してきており、BBCが脳研究の歴史と「思考をさまよわせること」の有益性について説明しています。

BBC - Future - Why we should stop worrying about our wandering minds
http://www.bbc.com/future/story/20151106-why-we-should-stop-worrying-about-our-wandering-minds

これまで多くの研究者が「タスクに集中する時、人間の脳のどの部分が活発化するのか」ということを明らかにしようとしてきました。その中で、「何もしていない状態であっても脳は活動している」ということが初めて示されたのは、今から約20年前のこと。当時、研究者らは脳の活動を調べるため、被験者の脳をスキャンしながらさまざまなタスクを課し、タスクとタスクの間には脳をニュートラルな状態に戻すための中休みを設けていました。しかし、この「中休み」が大きな問題でした。理論的には「何も考えないこと」で脳がオフの状態になるので、被験者らは白い十字がついた黒いスクリーンの前に移動させられ、「この十字を見つめて何も考えないでください」と伝えられましたが、実際には「脳がオフになる」という状態を実現できる人は誰もいなかったのです。


その後、1997年にGordon Shulman博士が9つの脳スキャンの結果を解析し、「人々が注意を払っている時、脳のどの部分が活発化しているのか」ということを明らかにしようとしました。しかし、結果的に目的とは真逆の事実である「人々が何かをしていなくてもネットワークは活性化している」ということが明らかになります。

「何もしていない状態からタスクに集中する状態に移行した時、脳のある部分が活性化する」という考えは、非常に合理的に見えます。しかし、数々の研究によって、実際は何もしていない状態からタスクを開始した瞬間でも脳のいくつかの部分は非活性のままで、それどころか人々が「何もしていない」と思っている時に、タスクをしている時より活性化する部分もあることが分かっています。

by Allan Ajifo

上記のような研究結果が発表されても、「脳は非活性化しない」という考えが信じられるには時間がかかりました。現在は第一線で脳の研究を行っているMarcus Raichle博士が、1998年に発表した論文は当時「データが間違っているに違いない」として認められなかったとのこと。しかし現在では、「『休息状態』にあっても脳は驚くほど活動している」という内容の論文は山ほど発表されており、Raichle博士が提唱した「デフォルト・モード・ネットワーク」という言葉が用いられることもよくあります。

では、なぜ休息中の脳が活性化するのか?ということが気になってきますが、この点についてはさまざまな仮説があるものの、まだ結論は導き出されていません。一説では、突然活性化が必要になった時のために、脳が車で言うところのアイドリングの状態になっているとのこと。「眠っている間に見る夢が人間の記憶の整理に役立っている」というのは周知の事実で、もしかすると、私たちが昼間にぼうっとしたり白昼夢を見たりすることも、記憶の強化に役立っているのかもしれない、という可能性も示されています。

また、「夕食は何を食べよう」「来週どこに行こう」など、未来のことについて思いを巡らしているのは脳が部分的にデフォルト・モード・ネットワークの状態になっているということ。脳はタスクがない時には未来のことを考えるようにプログラミングされているのです。

ハーバード・メディカル・スクールのMoshe Bar博士は「白昼夢はまだ起こっていない事についての記憶を構築している」という考えを説いており、白昼夢を見ることによって、人は実際に物事が現実のものになった時に適切な対処ができるようになるそうです。

脳をスキャンしている最中の被験者が内省状態にあるのかどうかは外から分からないため、脳が休止している状態について調査するのは非常に骨が折れる作業。もしかすると内省しているのかもしれませんが、一方で、スキャンを行う機械の音や、外から聞こえる物音について考えている可能性もぬぐえないためです。

by Robbie Grubbs

しかし、研究は徐々に進んでおり、2015年9月に行われたオックスフォード大学のプロジェクトでは、被験者460人の脳をスキャンし、休息状態にある時、脳のどの部分が互いにコンタクトを取っているのかの調査が行われました。その結果、脳のうち生活機能と経験に関わる2つの部分に強いつながりがあり、人の記憶を強化していることが判明。この働きは、まるで思考をさまよわせることで、「必要な時のため」に脳が「学んだ内容」と「実際の経験」を結びつけているようだとのこと。

「なぜ脳は人間のエネルギーのうち20%も消費するのか」「なぜ休息時と活動時で脳のエネルギー消費量が5%しか変わらないのか」などと並び、「どうして脳は休息しないのか?」ということは長年の謎となっています。しかし、これまで「悪癖」と考えられていた「ぼうっとすること」や「白昼夢を見ること」が徐々に有益なものだと分かってきており、例え時間内にタスクをやり終えられなくても、自分を責めることなく「脳にとっては大切な時間だった」と考えるようになる未来があるのかもしれない、とBBCは示唆しています。

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in サイエンス, Posted by logq_fa

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