劇団四季の創作の拠点とも言える稽古場、「四季芸術センター」見学レポート~後編~
前編では四季の俳優さんたちが使う施設を主に紹介しましたが、後編では大道具、小道具などの部屋を見せてもらい、その作業の様子を見せてもらいました。ここで作られた小道具などが舞台で使われ、そしていったん役目を終えると長野の「四季芸術資料センター」に格納されるというわけです。
今春から初上演となる「サウンド・オブ・ミュージック」の衣装制作や「美女と野獣」「オペラ座の怪人」の特殊メイク制作など、至るところに興味深い光景が広がっていました。また、館内の電気をほぼすべてまかなっているというパワフルな太陽光発電施設も見せてもらいました。
詳細は以下から。館内の見取り図。ほとんどが稽古場で占められています。
屋上のソーラーパネルのあるところに上らせてもらいました。巨大なソーラーパネルが所狭しと置かれています。
太陽光発電システムで今どれだけの電力を供給できているか表示するパネル。冬でも太陽光発電だけで一通りの館内設備の電力はまかなえてしまうのだというから驚きです。
裏側から見てもやはり巨大。
また、この本館地下には、川の氾濫を防ぐ役割がある雨水貯水池があるのだとか。
衣裳室に入っていきます。
たくさんの衣裳がここから生み出されていきます。
豪華絢爛なドレス。
「サウンド・オブ・ミュージック」の司教の服も、ほとんど完成形でトルソに着せられていました。
試着室もあります。
百貨店などのように、試着用の靴も衣裳室である程度用意しているようです。
真剣な表情。
ミシンでなく、手縫いで作業することも多そう。
シックなワンピースが台の上に。これからさらに手を加えられるのでしょうか。
1公演の衣裳だけで、部屋が半分ほど占拠されてしまうほどの量があります。
そのためハンガーも大量に用意されています。
布地がずらりと並んでいます。
特徴的で目を惹く衣裳です。
すそ合わせをしている様子。ドレスのAラインシルエットが美しい
これは子役用の衣裳なので、これまで見てきたものより小さくてかわいらしいです。
「サウンド・オブ・ミュージック」の衣裳がずらりとかけられていました。
「クレイジー・フォー・ユー」の衣裳の一部も保管されていました。
たくさんのトルソが使われています。ここですべての役者さんの衣裳を扱っていると聞くと、これでも足りないくらいかもしれないと感じます。
ミシンもたくさん置かれていました。
作業に必要なものが1カ所にまとめられています。
廊下には靴下などの小物が引き出しに入れられて並んでいました。
次は音響室に入ります。
メインの音響室は本格的な設備を備えています。
ここを開けると、隣にある稽古場に直で音を届けられるという仕掛け。
ここで様々な音声収録が行われます。
役者さんの目線に立つとこんな風に見えます。
メインの部屋の奥にもいくつか部屋が用意されています。
上の写真よりさらに小ぶりな部屋も。
部屋と部屋との間には、マイクスタンドのような機材もずらりと並んでいました。
突然呼ばれてもいつでも出て行けるように、緊急出動セットなるものが用意されていました。
応接室もあり、中には「アイーダ」のポスターに使われている図案が飾られていました。
かつらなどを扱う「床山室」へ。
「ハムレット」に登場するオフィーリアのかつら。
ちょっとした美容室のような設備が整っています。
渡り廊下で、小道具さんの部屋がある旧館へ向かいます。これまで見てきた新館は2006年に建てられたもので、それ以前はこちらをメインに稽古が行われていました。
小道具さんの部屋は工房といった趣。いろいろな道具がぎっしりと置かれています。
ものすごい存在感のマネキン。一体なんの演目に使うのだろうと尋ねてみると、これは衣裳部から修理依頼が出されたものだということです。「舞台道具以外のものなぜかここに回ってくるんですよ」とと主任さんは笑います。
こんがり焼けたこれらは、特殊メイク用の型。「オペラ座の怪人」のファントムや「美女と野獣」のビーストの特殊メイクはこの型を使って作られます。
ごろごろと型はたくさん置かれています。役者さん一人ひとりで当然型が異なるので、相当な数になります。
ここで焼成し、形にします。
焼き上げたものは洗濯物のようにピンチで留めて干しておくようです。
ビースト役に必要な手袋を焼成するのにはコツが必要なようで、注意書きがはられていました。
「ウィキッド」に登場するマスクもありました。
シャンパンが入っているように見えるグラスを作っています。
固まったあとはこうして逆さにして乾かしておくようです。
電気のこぎりなど、いろいろな機材が。
薬品や塗料もずらずらと並べられています。
韓国のスタッフもいるため、ゴミ箱の分別などはハングルでもアナウンスされていました。
小さなネコのパペットがありました。かわいい。
これらは「サウンド・オブ・ミュージック」で使われるそうです。
大道具はあざみ野でも作られているようです。
大道具を作っていた辺りには、大がかりな機材などが高く積まれていました。
ここは劇団四季予約センター。チケットの予約の電話をするとここにつながり、オペレーターの方が案内をしてくれます。
ここでももちろんエコの精神は生きています。
旧館にもこの印象的なフレーズがはられていました。
ダンベルがずらり。
レッスン編で潜入した新館の稽古場と作りがよく似ています。
音響、照明ともにばっちり。
新しい劇場「四季劇場[夏]」がオープンするにあたり、稽古場の呼び方が変更となったお知らせが掲示されています。
マネキンや道具が棚にぎっしりと収められています。
道具はきちんと整理されて棚に入れられています。ヘアアイロンなども各種取りそろえてあります。
ヘアアクセサリも床山さんの領域なので、いろいろときらびやかなものが卓上にはそろえてありました。
ここは社員さんのオフィス。天井からぶらさがっているのは蛍光灯のヒモで、フロア全体ではなく部分的に照明を調節することで節電に努めているようです。人のいないエリアは電気が消えているのでよく分かります。
エコに対する取り組みは館内全体で徹底しているようです。コンセントも帰り際に抜くべきもの、そのままにしておいてよいものと色分けされています。
大きな建物の中にさまざまな機能の部屋があり、それら全てが演劇のために機能しているということにあらためて驚きました。どのスタッフさんも真剣に仕事に取り組んでいて、演劇は俳優はもちろんのこと、技術スタッフや経営社員が一丸となっているからこそ、毎日のロングラン公演は実現しているのだろうと感じました。
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