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「古いレコードをデジタル化して公開するプロジェクトに著作権を侵害した作品が含まれる」としてソニーやユニバーサルミュージックがインターネット・アーカイブを訴える


ユニバーサルミュージックグループやソニー・ミュージックエンタテインメントなどの音楽レーベルが2023年8月11日、インターネットアーカイブが進めるSPレコードをデジタル化して公開するプロジェクトを、著作権侵害の疑いで提訴しました。

2023.08.09 G78 Complaint v6 - INTERNET ARCHVIE RECORD LABELS LAWSUIT complaint.pdf
(PDFファイル)https://fingfx.thomsonreuters.com/gfx/legaldocs/jnpwwwejopw/INTERNET%20ARCHVIE%20RECORD%20LABELS%20LAWSUIT%20complaint.pdf


The Great 78 Project – Community Preservation, Research, Discovery of 78rpm Records
https://great78.archive.org/


Music labels sue Internet Archive over digitized record collection | Reuters
https://www.reuters.com/legal/music-labels-sue-internet-archive-over-digitized-record-collection-2023-08-12/

Record Labels Hit Internet Archive With New $400m+ Copyright Lawsuit * TorrentFreak
https://torrentfreak.com/record-labels-hit-internet-archive-with-new-400m-copyright-lawsuit-230812/

現代に多く残っているレコード盤は、1948年にコロムビア・レコードが採用したLong Play(LP)盤です。それ以前のレコード盤は、「Standard Playing(SP)盤またはレコードの回転速度に由来する「78rpm record」と呼ばれるものでした。

ポリ塩化ビニールで作られるLP盤に比べて、SP盤は酸化アルミニウムや硫酸バリウムなどの粉末をシェラックと呼ばれる天然樹脂で固めることから、落下や衝撃、カビの発生に対して非常に弱かったとされています。


1960年代に生産が終了しており、一般的なレコードプレーヤーでの再生が困難なSP盤は、時代の流れとともに廃棄や破損、劣化に伴ってその数を減らしてきました。

そこで、「すべての知識への普遍的なアクセスを提供する」をモットーに掲げるインターネット・アーカイブは1898年から1950年代の間に作成されたSP盤のレコードを発見や研究、保存することを目的とした「Great 78」プロジェクトを2017年に開始。これまでに40万枚を超えるSP盤がデジタル化され、オンライン上で公開されています。

Great 78プロジェクトは「SP盤をデジタル化することで、将来の世代に研究の楽しさを与えるために、SP盤という文化的な資料を保存する」ことを推進しています。


しかし、ユニバーサルミュージックグループやソニー・ミュージックエンタテインメントをはじめとする音楽レーベルが2023年8月11日、インターネット・アーカイブによる「SP盤をデジタル化してオンラインで公開する」という行為が著作権の侵害にあたると主張し、訴訟を起こしました。

音楽レーベル側によると、インターネット・アーカイブが収集した一部のSP盤には、フランク・シナトラエラ・フィッツジェラルドビリー・ホリデイビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」など、著名なアーティストによる作品(PDFファイル)2749点が含まれており、これらの作品は著作権を侵害する形で公開されているとのこと。

音楽レーベル各社は、インターネット・アーカイブに対して「著作権で保護された作品をこれまでに何百万回も違法に配布しています」と指摘しています。

また、Great 78プロジェクトの「SP盤の発見や研究、保存」という目的に対して音楽レーベル側は「一部のSP盤の録音はすでにさまざまなサービスを通してストリーミング配信やダウンロード販売が行われています」と主張し「SP盤自体は失われても、その作品は人々から忘れられることも、破壊されることもありません」と述べています。


さらに音楽レーベル側は、「保存と研究という限定的な目的の範囲からGreat 78プロジェクトは逸脱しており、著作権を無視して、あらゆる人に音楽への無料かつ無制限なアクセスを提供しようとしています」と批判しています。

加えて「インターネット・アーカイブが著作権で保護された録音物を無断で公開すると、音楽レーベル側やそのアーティストに対して一銭も入ることはありません。このことは、アーティストやその相続人に害を及ぼすだけでなく、音楽の価値を損ないます」と指摘しています。


原告である音楽レーベル各社は、インターネット・アーカイブに対して、著作権侵害を行った作品を削除するとともに1作品あたり最大15万ドル(約210万円)の損害賠償を請求。最大約3億7200万ドル(約539億円)の損害賠償が発生する可能性があります。

音楽レーベル各社からの訴えに対して、インターネット・アーカイブはコメントしていません。

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in ネットサービス, Posted by log1r_ut

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