サイエンス

なぜ10代の若者は「リスク」を好むのか?なぜ年をとるとリスクを回避するようになるのか?


一般的に、10代の若者はそれ以上の世代に比べてリスクや危険な行動をとりがちです。若者が著しくリスクをとる理由について、脳科学の分野から解き明かしたことをカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームが報告しています。

Developmentally distinct architectures in top–down pathways controlling threat avoidance | Nature Neuroscience
https://www.nature.com/articles/s41593-025-01890-w


This Brain Mechanism Explains Why Teens Love Risk More Than You : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/this-brain-mechanism-explains-why-teens-love-risk-more-than-you


若者がリスクをとりがちなのは人間だけでなく、マウスなどの他の動物でも同様の特性が報告されています。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の神経科学者であるカッサンドラ・クルーネ氏らの研究チームは「これらの特性は、脅威となる状況に迫られた場合の回避行動の減少につながる可能性があります」と説明し「今回の研究では、思春期の脅威回避レベルの低下に因果関係を持つ脳の回路メカニズムを明らかにしました」と語りました。

研究チームはまず、マウスを使った実験を実施。エサを食べている最中に電気ショックを連想させるビープ音が流れた場合、若いマウスはビープ音が流れてもできる限り長くエサを食べ続けましたが、高齢のマウスはビープ音が流れるとすぐにエサから離れ、ビープ音が止まるのを待っていました。


続いて研究チームはマウスの脳に蛍光分子を注入し、これらの行動を支える生理機能を追跡しました。一般的に、蛍光分子が強く光るほど活発な神経活動が行われていることが示されます。

分析の結果、老いるにつれてマウスの脳の背内側前頭前野(dmPFC)と呼ばれる部位がリスクに対して敏感に反応することが明らかになりました。また、体の他の部分の老化と同様に、dmPFCの変化も段階的に起こることが判明しています。

研究チームによると、若い頃は恐怖や痛みの記憶をつかさどる基底外側扁桃体(BLA)が複雑に入り組んでいるため、リスク回避を犠牲にして行動するとのこと。しかし老化が進むにつれて徐々にシナプス密度が低下すると、BLAは嫌悪感などに関連する側坐核(NAc)との結びつきが強くなり、若い頃よりも積極的にリスクを回避するようになるそうです。


一方で研究チームは「発達中の脳におけるdmPFC、BLA、NAc回路の原因機能に関する研究が不足しているため、これらの領域間の相互作用が、リスク回避行動の発達的変遷をどのように生み出すのかについての理解に大きなギャップが残されています」との課題を示したほか、科学系メディアのScienceAlertは「今回の実験はマウスで行われたため、今回発見されたパターンが人間にも当てはまるかどうかは明らかではありません」と指摘しました。

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in サイエンス, Posted by log1r_ut

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