賞金総額1億円のゲーム大会「クラロワ 世界一決定戦」を現地レポ、世界のeスポーツ最前線はこんな感じ
Supercellを代表するモバイルアクションゲーム「クラッシュ・ロワイヤル(クラロワ)」は、最大8枚で構成されるキャラクターのカードデッキを駆使し、3分間の戦闘中、自分のタワーを守りつつ敵のタワーを攻める、戦略性の高いリアルタイム対戦型のアクションゲーム。誰でも気軽に楽しめるゲームでありながら、世界一を目指すプレイヤーが多く存在するなど、世界中で人気のモバイルゲームです。
そのクラロワ世界最強を決める初めての世界大会「CROWN CHAMPIONSHIP WORLD FINALS(クラロワ 世界一決定戦)」が、2017年12月3日にイギリス・ロンドンで開催されました。世界187カ国で2700万人以上、日本からも4万人を超えるプレイヤーが参加した「優勝賞金15万ドル(約1700万円)&賞金総額約1億円」という、eスポーツ大会としては世界屈指の規模で行われた世界一決定戦には2人の日本代表選手も参戦。栄えある「クラロワ世界一」の称号をかけた熱いバトルの様子を観戦してきました。
◆クラロワ 世界一決定戦会場
「クラロワ 世界一決定戦」が開催されたのはロンドンの「Copper Box Arena」。2012年のロンドン・オリンピックの会場のオリンピック・パーク内にある7500人収容の施設です。
会場付近には、「CROWN CHAMPIONSHIP WORLD FINALS」の札を持ったスタッフが道案内中。
案内の先にCopper Box Arenaが見えてきました。
クラロワ世界大会仕様。
バーバリアンの巨大フィギュアが出迎えてくれました。
参加選手16名ののぼりの中には日本代表のフチ選手や……
アマテラス選手。ともに日本代表として世界一を狙います。
◆決勝戦前日の様子
会場のCopper Box Arenaを大会前日に取材しました。2階席から眺める巨大なゲームステージ。巨大なスクリーンが観客席正面に並べられ、手前のアリーナにはゲーム画面が映し出されるという斬新なステージ。大会前日も入念なリハーサルが行われていました。
大スクリーンの両サイドには、赤・青の「キング」
手前にある高台が、選手の戦場となるステージです。
モニターでリハーサルをチェック中。
大会前日のリハーサルの合間に、フチ・アマテラス両選手を表敬訪問。二人は、「ワクワク半分、ドキドキ半分」としつつも、きっぱりと「優勝するつもり」と宣言。決勝での戦いに向けて、最終調整は順調なようです。
◆世界一決定戦
そして迎えた決勝大会当日。
観客席正面にある巨大なスクリーンの下に各国の中継ブースが備えられており、英語や日本語など世界9言語で、YouTubeなどのストリーミング中継が行われます。
選手が戦いの舞台へ向かうゲート。
観客席前には二つの薪。本物の火が灯されています。
客席の上に巨大なカップ。クラロワの世界観を体現する巨大オブジェが会場内にちりばめられていました。
10時前には客席はほぼ満席。なお、1500人分のチケットは完売したとのこと。
今や遅しと待つ観客たち。スマートフォンや……
応援グッズを手に持ち、スタートを待ちます。
カウントダウン開始。
オープニングセレモニーが終わり、いよいよスタート。
選手入場の後に……
大会の賞金が正面のスクリーンに映し出されました。優勝賞金はなんと15万ドル(約1700万円)。1回戦敗退でも7500ドル(約84万円)をゲットでき、勝ち抜くごとに倍々ゲームのごとく賞金は跳ね上がるという仕組み。世界レベルのeスポーツ大会のとてつもないスケールがよくわかります。
・ラウンド1
決勝大会は16人によるトーナメント制。ベスト8をかけた「ラウンド1」はアメリカのMusicMaster選手VS台湾のYaoYao選手の戦いで幕を開けました。
クラロワ世界一決定戦ラウンド1初戦MusicMaster選手 VS YaoYao選手の戦いは以下のムービー32分ごろから確認できます。
クラロワ 世界一決定戦 - YouTube
PCやコンソール(据置機)ではなくモバイルゲームの「クラロワ」は、スマートフォンやタブレットを使って対戦するというスタイルのeスポーツで、なかなか新鮮です。
ちなみにYouTubeライブで大会の様子はライブ配信されていたので日本からでも観戦OK。スマートフォンで実況・解説を聞きながら細かな状況を把握できるので、現地でのライブ観戦にも大いに役立ちました。
第1試合から白熱したバトルに観客は釘付け。
ゲーム内で敵タワーを倒すと炎が立ち上り、同時に会場も沸き上がります。
母国の威信をかけて戦う側面を持つ選手たちを、同じく母国から駆けつけた人々が熱い声援で後押し。
そして、第4試合に日本チャンピオンのフチ選手が登場。プロチームに所属するドイツのBerin選手との戦いが始まりました。
フチ選手 VS Berin選手の戦いは、以下のムービーの1時間40分ごろから確認できます。
クラロワ 世界一決定戦 - YouTube
クラロワ世界一決定戦では選手の表情が大画面に映し出されます。手に汗握る緊迫した戦いは、選手の表情から嫌と言うほど伝わってきて、大会観戦をよりスリリングなものにしていました。
1勝1敗で迎えた第3ゲーム。先に2勝した方が勝ちのBO3(Best of 3)ルールで行われる試合は、いよいよ佳境へ。
不利な戦況に思わず顔を手で覆うフチ選手。
残念ながら、日本チャンピオンは1回戦で姿を消しました。
勝利に感情を爆発させる選手たち。
それに呼応するかのように、観客も拳を突き上げます。
ラウンド1の最後の試合に登場した日本代表のアマテラス選手。
アマテラス選手の戦いは、以下のムービーの3時間12分ごろから視聴できます。
クラロワ 世界一決定戦 - YouTube
「17歳の高校生」(アマテラス選手)と「34歳の1児のパパ」(Tali選手)という年齢差関係なしのガチンコバトル。
クラロワは、反射神経が最重要視されるFPSとは違うので「体力を知力でカバー」することが可能です。
残念ながら、アマテラス選手も1回戦敗退。日本勢は初戦で姿を消すことになりました。
試合の合間に大スクリーンには、選手控室でインタビューを受けるフチ選手の様子が流されていました。実はフチ選手は一切、「課金(ゲーム内の有料オプションを購入すること)」をしないでプレイするという信条を持つプレイヤー。課金なしで世界一決定戦の舞台まで勝ち上がってきた「無課キング」は、世界的にも希有な存在として海外からも非常に注目を集めていました。
インタビュワーからの誰が勝つと思うかという問いに、フチ選手が挙げたのはアメリカ代表のMusicMaster選手。
MusicMaster選手はその通りに順当に勝ち上がっていきます。他にもMusicMaster選手を優勝候補に挙げる選手が何人かいたほど、この日は安定した戦いぶりを見せていました。
・日本選手インタビュー
ベスト4を決定する「QUARTER-FINALS」へ突入。
そのころ、戦いを終えたばかりの日本代表選手に話を聞くことができました。
高い位置のステージで観客席が比較的遠いという、これまでのどの大会とも違った環境に戸惑ったというフチ選手。相手のBerin選手が自分のデッキ(手持ちカード)構成などをよく研究してきているのは感じたとのこと。分析班を抱えるプロゲーミングチーム所属の選手と言うことで、こちらの戦略を読んでいるのは承知の上。さらに、その裏をかく作戦だったそうで、「なんとかなる、と思いきやならなかった」。一歩及ばなかった最後のゲームは夢に出てきそうだと悔やんでいました。
戦いの場であるステージに上がると緊張で手が震えたというアマテラス選手。ゲームが始まっても震える手に、カード配置がズレるというミスが続き苦戦を強いられたとのこと。海外の選手との差については、このような大きなeスポーツ大会に出場する「経験」を挙げており、メンタル面を含めて強さを感じたそうです。高校3年生で受験間近のアマテラス選手は、「これからの受験に対して良い経験になりました。こういう経験はなかなかないので」と話していました。
ジャケットに付けられた日の丸。このジャケットを着たときに「日本代表」と言うことを強く意識したというフチ選手。「正直、負けた後はこれを着るのが恥ずかしくなった」と、日の丸を背負う重みを感じたとのこと。
「もう一度、こういう大会に出られたら。これからもクラロワを続けていきたい」
アマテラス選手は、この世界大会でいったんクラロワプレイをストップして受験に専念するとのこと。「受験が終わったら、またこういう場に出られるようにがんばっていきたい」と話していました。
・SEMI-FINALS(準決勝)
決勝進出をかける「SEMI-FINALS」の開始。
SEMI-FINALSの様子は、以下のムービー5時間10分ごろから視聴可能です。
クラロワ 世界一決定戦 - YouTube
ベスト4まで勝ち上がったのは、アメリカのMusicMaster選手、メキシコのSergioramos:)選手、ベトナムのTali選手、中国のWinds選手。
観客も固唾をのんで戦いを見守ります。
MusicMaster選手の的確な攻めに沸く会場の様子は以下のムービーで確認可能。
MusicMaster選手 VS Winds選手の「クラロワ 世界一決定戦」セミファイナルで沸くロンドンCopper Box Arena - YouTube
SEMI-FINALSでTali選手との激戦を制したSergioramos:)選手。
決勝進出を決める「勝利の瞬間」の爆発的な喜びようはこんな感じ。
「クラロワ 世界一決定戦」セミファイナルを勝ち抜き雄叫びを上げるSergioramos:)選手 - YouTube
・番外編:クラロワファンを直撃
盛り上がる会場の中で、クラロワ世界一決定戦を観戦するために世界中からロンドンを訪れたファンに声を聞いてみました。
ドイツから来た24歳の2人組。クラロワがリリースされてから毎日1時間半はプレイしているとのこと。プレイするのはもちろん「見るのも好き!」ということで、観戦するためにドイツから来たそうです。「勝つためにはデッキの選び方と、とにかく集中力が大事」と話していました。
フランスから来た17歳の2人。シャムランさん(右)は、友だちに勧められてクラロワを始めたそうですが、やっているうちにどんどんのめりこんでいき、今では学校のある日は1日2時間ほど、学校がない日は1日8時間もプレイしているとのこと。今回のようなイベントに参加するためにはもっと強くなる必要があるからと毎日プレイを積み重ねているそうです。シャムランさんにとってクラロワは「気の合うゲームプレイヤーと知り合うためのツール」とのことで、なんと、ゲームを通して知り合った仲間と世界一決定戦の会場で合流できたそうです。
左がフランスからきたアゼリスさん、右がスイスからきたカンゴールさん。アゼリスさんは自身もeスポーツの選手で、クラロワの大会の前日にはバルセロナのゲームイベントに参加していたとのこと。なんと、今回の世界一決定戦に出場しているほとんどのプレイヤーと知り合いだそうです。
日本人も発見。ロンドン在住の黒川さんは、「近所なのでせっかくだから行ってみよう」ということで大会を観戦。クラロワはリリース直後からずっとプレイしているそうですが、ゲーム内課金は未体験とのこと。「強くなるためには課金が必要なのでは……?」と思って聞いてみたところ、課金しなくても根気よくプレイしていけば強くなることができると答えてくれました。クラロワに関しては見るのも好きで、みんなと観戦していて同じところで熱くなり、一体感を感じられるのがよいそうです。
・FINAL(決勝戦)
ふたたび熱戦の舞台に戻っていよいよ決勝戦。宙に浮かび回転するクラウンをかけた最終決戦が始まります。
両雄の入場。
MusicMaster選手 VS Sergioramos:)選手。決勝戦は若きプロゲーマー同士の戦いになりました。
「クラロワ世界一」の称号をかけた勝負の様子は、以下のムービーの6時間7分ごろから視聴可能です。
クラロワ 世界一決定戦 - YouTube
先に3勝した方が勝ちのBO5ルールで行われた決勝戦は、Sergioramos:)選手が3対1でMusicMaster選手を下し世界一を決めました。
表彰セレモニーで戴冠。
観客からは惜しみない拍手が贈られていました。
そして、優勝賞金の15万ドル(1700万円)をゲット。
Sergioramos:)選手はプロゲーミングチームNovaのメンバーとともに喜びを爆発させていました。
・優勝者インタビュー
大会終了後に行われた優勝者インタビューに登場したSergioramos:)選手は、試合中とはまったく違う屈託のない笑顔が印象的な好青年でした。
「楽しいから」始めたクラロワで、世界大会で優勝できるとは考えてもいなかったというSergioramos:)選手。17歳の若きチャンピオンは、「賞金の使い道はまったくわかりません。高額すぎるので(笑)」と話しつつも、ここまで応援してきてくれた父、母、家族全員やサポートチームへ感謝の言葉を述べていました。
最後に、クラロワを始める人へのアドバイスとして、「YouTubeなどでいいバトルをたくさん見るのがいいと思います。そうすることで戦略を学べます。クラロワはシンプルに見えて、とても奥深いゲームなので」と話していました。
初となるクラロワ 世界一決定戦はSergioramos:)選手が制し、世界一の称号を得ました。クラロワを始めた約1年半前に世界大会で優勝できるとは想像もしていなかった青年は、一夜にして大金と「世界最強」の名誉を得たというわけです。
Clash Royale Crown Championship World Final by Aapo Huovila(Supercell) - YouTube
世界では確実にスポーツとして根付いたeスポーツは、日本でも徐々に広がり始めています。海外ではeスポーツアスリートを徹底サポートするチームの存在が当たり前など、海外のトッププロ選手と日本人プレイヤーとの「差」は確実に存在するものの、世界の大舞台で戦う日本人選手に追いつけ追い越せと、世界トップレベルのプレイヤーが登場する日が待ち遠しく感じてならないイベントになりました。
クラッシュ・ロワイヤル (Clash Royale)を App Store で
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