ビル・ゲイツが総額113億円をアルツハイマー病の研究に投資
快感を保つ「次世代コンドーム」の開発や農村部に対する10万羽の鶏の寄付など、研究への投資や慈善活動に力を入れているMicrosoft創業者のビル・ゲイツ氏が、アルツハイマー病の研究促進を目的として新たに民間ファンドへの5000万ドル(約57億円)の投資を含めた総額1億ドル(約113億円)の私財投資を発表しました。
Why I’m Digging Deep Into Alzheimer’s | Bill Gates
https://www.gatesnotes.com/Health/Digging-Deep-Into-Alzheimers
Bill Gates' newest mission: Curing Alzheimer's - CNN
http://edition.cnn.com/2017/11/13/health/bill-gates-announcement-alzheimers/index.html
Bill Gates Announces Investment in Alzheimer’s Disease | Time
http://time.com/5021339/bill-gates-alzheimers-research-dementia/
なぜアルツハイマー病の研究が必要なのかを語るゲイツ氏は以下ムービーから。
Investing in the Fight Against Alzheimer's - YouTube
アルツハイマー病の患者は近年増加しており、アメリカで最も多い死因トップ10にランクインするほどの勢いですが、いまだに原因が不明で治療法も確立されていません。しかも、現在の治療は多額のコストが必要で、神経変性疾患ではない人に比べてアルツハイマー患者は年間の出費が5倍以上に跳ね上がるとのこと。治療が長期にわたることもあって、高齢者やその家族に大きな金銭的負担を課してしまうことも問題視されています。
(PDFファイル)Alzheimer’s Associationによると2017年のアメリカにおけるアルツハイマー病や認知症の治療に対する出費は2590億ドル(29兆円)に上っており、このままブレークスルーが起こらないと支出はどんどん増加すると予測されています。特に低所得・中所得の国々での患者数・支出の増加が大きくなるものと見られています。
ゲイツ氏はこれまでにHIVやポリオ撲滅のためにビル&メリンダ・ゲイツ財団を通じて投資を行ってきましたが、感染症以外の病気に対しての私財投資はこれが初めて。
過去1年間にわたってゲイツ氏がアルツハイマー病の研究を調査したところ、アルツハイマー病を予防したり避けたりするための優れた研究が既に存在することから、ゲイツ氏は以下の5つの分野において研究が進めば「アルツハイマー病のあり方を変えられる」と見ています。
1:どのようにアルツハイマー病が進行していくかを特定する
アルツハイマー病の研究の難しい点は、患者の死後に解剖を行って初めて、脳の中で何が起こっていたのかが明らかになることです。そのため、現時点でアルツハイマー病がなぜ発生してどのように進行していくかがはっきりと分かっていません。まずは原因とバイオロジーを理解することが重要と言えます。
2:早期のアルツハイマー病を識別する方法を開発する
上記と同じく、アルツハイマー病の詳細は患者の死後になって初めてわかることから、早期の診断は非常に困難です。血液検査などの簡易な方法で早期にアルツハイマーの診断ができるようになれば、より効果的に治療に取り組むことが可能です。
3:治療のアプローチ方法を増やす
現在のアルツハイマー病治療はアミロイドとタウ蛋白をターゲットにしていますが、この2つに効果がなかった場合に備えて、別のアプローチの研究も進める必要があります。
by Jeremy Hiebert
4:臨床試験の効率化
イノベーションが起こるかどうかは臨床試験が進められるスピードに左右されるといっても過言ではありません。研究によっては被験者を集めるのに数年かかることもあるので、いかに被験者を効率的に集め、臨床試験をスムーズに進めるかということが重要になります。
5:データを効率的に使用する
それぞれの研究は、研究を進めるために膨大なデータを収集しますが、それらは別々の場所に存在します。アルツハイマー病に関する研究の情報を一元化して普遍的に使用できるようにすることで研究者が容易にパターンを探せるようになります。
上記5つの分野を発展させることができれば、アルツハイマー病の影響を大きく減らすことが可能だとゲイツ氏は考えているとのこと。そして、取り組みの第一弾として、ゲイツ氏は新たな治療アプローチを探す民間ファンドであるDementia Discovery Fundに約57億円を投資。大手製薬会社はアミロイドやタウ蛋白をターゲットにした治療法を開発していることから、メインストリームではない研究を行うスタートアップをサポートするDementia Discovery Fundに投資を行うという決定を行いました。
ゲイツ氏は「取り組みの最初の結果は10年以内に出ない可能性があり、非常に高くつくことも考えられます」としつつも、「一度その日がきたら、我々の財団は貧しい国の人々がアクセスできるよう拡大方法を探していきます」と語っています。
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