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ビル・ゲイツが「過去最高」と語った投資とは?

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Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏は、テクノロジー業界の場合、投資したうちの10%が成功し、残りの90%は失敗に終わると考えています。Microsoftを後にし第2のキャリアを歩み出したゲイツ氏は、投資におけるこの成功率が変わるとは思っていなかったとのこと。しかし、過去20年にわたってさまざまな分野に投資してきたゲイツ氏は、ある種の投資の成功率が非常に高いことに驚いたと述べています。

Bill Gates: The Best Investment I’ve Ever Made - WSJ
https://www.wsj.com/articles/bill-gates-the-best-investment-ive-ever-made-11547683309


病気との戦いにおいて「新しい薬を発見する」といったブレイクスルーは大きな注目を浴びます。しかし実は、新しい薬を発見するだけでは、病気の撲滅には十分ではありません。病院や研究所から遠く離れた場所で暮らす人々に薬を行き渡らす必要があり、これは現実に大きな課題として立ちはだかっています。発展途上国では薬を得るために自分の暮らす地域から遠く離れた村や、戦場に向かう必要性がしばしば発生するからです。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は過去20年間にGavi, the Vaccine AllianceThe Global Fund to Fight AIDSGlobal Polio Eradication Initiative(GPEI)に対して100億ドル(約1兆円)の投資を行ってきたとのこと。多くの人々はこれら団体の名前を知らないか、名前しか知らないかですが、いずれの団体も大きな成功を収めており、ゲイツ氏は「これまで行った最高の投資先かもしれない」だと語っています。

第二次世界大戦後、多くの国々で公衆衛生が発達しましたが、発展途上国での死亡率は依然として高い状態で、そういった地域では人々が薬で簡単に治る病で死んでいました。Gaviは「貧しい国々の子どもたちでもワクチンを接種しやすくする」ことをミッションとして掲げ2000年に設立された団体で、その後、「低所得の国々で大きな死因となる3つの病について、子どもに薬を行き渡らせる」というミッションも追加されました。GPEIはポリオの死者が世界中で35万人以上を記録した1988年に設立されたポリオの撲滅を目標とする団体で、その活動のおかげで2000年代にはポリオの報告数は数千件にまで減少しています。


HIVにしろポリオにしろ、何十年前から病気に対抗する薬は開発されていましたが、長い間、非常に高価な存在であり、貧しい国々に行き渡らせるためのネットワークは存在しませんでした。この問題を解決しようと考えたのが上記の団体で、アメリカやイギリスなどから出資を募り規模の経済を作り出すことで多くの薬を低価格化させました。これら団体の影響力はすさまじく、Gaviが設立されてから低~中所得の国々での5歳以下の子どもの死亡率は約40%低下し、ポリオに関しては撲滅されかけています。2000年代に大きな問題として取り上げられたHIVは、Global Fundが設立されてから4年で死亡率がピークを迎えましたが、その後、半分近くまで低下しています。

ゲイツ氏が2000年頃に「命を救い病気をなくす」というゴールを掲げてこれらの団体に投資を始めた時は成功するかどうかもわからなかったとのことですが、団体はゲイツ氏の予想を超えて成功を収めました。そして古典的な「投資」という考え方でも、大きな富を生み出したとゲイツ氏は述べています。病に冒された人々はベッドで眠り職場や学校に行けませんが、病気を減らすことで多くの人が活動できるようになったためです。

ゲイツ氏がシンクタンクのコペンハーゲンコンセンサスセンターが持つアルゴリズムとデータを使って「自分の財団が100億ドルをGavi、GPEI、Global Fundに投資せず、S&P500に投資していたら?」ということを調べたところ、お金は120~170億ドル(1兆3000億~1兆8500億ドル)になっていたそうです。また、100億ドルを発展途上国のエネルギープロジェクトに投資していた場合は1500億ドル(約16兆円)、インフラに投資していた場合は1700億ドル(約19兆円)だったそうですが、ワクチンや薬、ベッドなどを人々に提供する保健機関に投資を行った場合は2000億ドル(22兆円)にまで膨れあがっていたと算出されたとのこと。

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しかも、Gavi、GPEI、Global Fundは過去に成功を収めているだけではなく、それぞれが「互いから学ぶ能力」に優れており、状況の変化に応じて戦略を変えることが可能とのこと。次の二世代にわたって病気との闘いはより極地化、激化していくとみられており、これらに対応できるであろう団体の能力に対してゲイツ氏は信頼を寄せています。

トランプ大統領をはじめとし、世界中の多くがGavi、GPEI、Global Fundをこれまで以上に必要としながらも「歴史のどの時点よりも献身的ではない」とゲイツ氏は述べています。ゲイツ氏が寄付した100億ドルは、世界全体の寄付の10分の1にすぎず、団体の資金の多くは政府からによるものです。しかし、世界的に孤立主義が広まりつつあり、団体が資金を得るには大きな戦いが強いられるようになっています。

過去のデータと経験から、お金が病気との戦いにおいて最も重要であることが示されています。Gavi、GPEI、Global Fundなどの機関は過去20年にゲイツ氏と妻のメリンダ氏が行った「最高の投資」であり、世界が次の数年間、数十年間に行える最高の投資の一部であるとゲイツ氏は語っています。健康分野に対する対外援助と致死性の病による死亡率の減少は密接な関係にあり、近年は減少傾向にある病気や死亡率を今後も減少させていくのかどうか、世界は決断を迫られる時期にあるとゲイツ氏は述べました。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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