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Duolingoはどうやって基本無料の語学学習アプリを時価総額2兆円超のビッグビジネスに変えたのか?


語学学習アプリの「Duolingo」は基本利用無料でありながら大量のレッスンを受講することが可能で、ゲーム性の高い仕組みやユニークな通知メッセージなどでも話題を呼んでいます。そんなDuolingoのユーザーはほとんどが無料会員であり、有料会員は全体の10%未満だとのこと。一体どのようにしてDuolingoは世界で最も成功した語学学習アプリになったのかについて、経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルが動画で解説しました。

How Duolingo Turned a Free Language App Into a $7.7B Business | WSJ The Economics Of - YouTube


Duolingoは1日あたり3000万人以上のユーザーが使用している人気の語学学習アプリで、中には10年以上使っているユーザーもいるとのこと。


Duolingoの年間収益は5億ドル(約7兆9200億円)を超えており、記事作成時点の時価総額はなんと140億ドル(約2兆2000億円)に達しています。


これほど成功したビジネスであるにもかかわらず、Duolingoで用意されているレッスンはすべて無料で受講することが可能で、有料会員はわずか8.6%だとのこと。つまり、ほとんどのユーザーは無料でDuolingoを使用しているというわけです。


また、アプリの収益源としてありがちな広告収入も全体の8%未満で、広告がたくさん表示されているわけでもありません。


Duolingoが成功を収めている理由のひとつに、「ゲーム性の高さ」があります。語学学習と聞くと、学校での勉強のような単調な繰り返しを連想するかもしれませんが、実際にDuolingoを使ってみると勉強というよりはむしろゲームのようなものだと気付きます。


無料ユーザーには1日ごとに「HP」が付与され、1日5回問題に間違えるとHPがゼロになり、次の問題にチャレンジすることができなくなってしまいます。


また、レッスンごとに進捗バーがあって、学習の進み具合をゲームの進行度のように把握できます。


さらに、問題を解くことで経験値を獲得できたり、連続プレイ日数が記録されたりする仕組みを活用して、ユーザーがDuolingoを使い続けるように仕向けています。


これらの取り組みにより、Duolingoは最初の数年間で300万人ものユーザーを獲得することができました。


Duolingoの創業者兼CEOであるルイス・フォン・アン氏によると、Duolingoはサービス開始時から「モバイルで無料、そして楽しいもの」を提供することにこだわっていたとのこと。


しかし、やがてDuolingoに投資した取締役会からは「収益を出すように」という命令が下り、組織内で収益化に向けた取り組みが本格的に始まりました。しかし、アン氏は「私たちはDuolingoを無料で語学学習できる手段にしたかったので、少し困りました」と語っています。


そこでDuolingoは2017年に広告を導入し始めましたが、収益源に占める割合はそれほど大きくありません。


大きな収益源は、月額10ドル(約1600円)で「広告の削除」「無制限のHP獲得」といった特典が得られる有料プランです。


Duolingoは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック期間中、旅行できない代わりに語学を学習したい人々から人気を集め、大きく成長しました。アナリストによると、Duolingoはダウンロード数で主要なライバルに10倍以上の差を付けており、800万人の有料会員を有しているとのこと。


アン氏は、「ご存じの通り、収益の大部分はアクティブユーザーの10%未満から得られます。彼らは収益の約80%を占めています」と述べています。


「語学学習をゲーム化した」と聞くと単純なように思えるかもしれませんが、その裏では多くの試みが行われ、アプリに継続的な改善が施されています。


アン氏は、「ユーザーがアプリを使うたびに、どのくらいの時間アプリを使用しているのか、翌日また戻ってくるのかなどを計測します。そして私たちはいろいろなことに挑戦します。通知をいつ送信するのか、通知に何を書くのか、レッスンをもう少し難しくあるいは簡単にするのか、長くするのか短くするのかといったことです」と述べました。


Duolingoのプッシュ通知はバリエーション豊富で、連続学習記録が途切れそうな時はそのことを警告してくれます。


当初、Duolingoのメッセージは単純なものでしたが、ミームを取り入れたり、ユーザーの感情に訴えかけたりすることでユニークなものに進化していきました。


中には「It looks like these notifidations aren't working. We're going to stop sending them for now.(この通知は意味がないみたいですね。しばらくは送らないようにします)」といった、ユーザーに罪悪感を抱かせるようなものもあります。こうしたメッセージを送ると、ユーザーは罪悪感を覚えて再びアプリを開く割合が高くなりました。Duolingoによれば、このメッセージによってユーザーの定着率が3%上昇したとのことです。


さらに重要なのは、Duolingoがそれぞれのユーザーに異なるメッセージを送っているという点です。DuolingoはAIを活用し、特定のユーザーに通知を送る時間帯やメッセージの内容の有効性を調査しています。


Duolingoが使用しているのは、経験を蓄積する「探索」とそれを生かした「予測」を最適化する機械学習手法である「バンディットアルゴリズム」です。これは多くのスロットマシンを相手に異なるプレイを行い、どのマシンで大当たりが出るのかを調べるようなもの。


大当たりが出たプレイを特定したら、今度は本当にそのプレイが有効だったのか、それとも運に左右されただけだったのかを調べ、本当に有効な方法を探っていくとのことです。


Duolingoはこれと同じことを、大量のユーザーに異なる通知を送信することで実行しています。その結果、たとえば「通知の時間を最適化することは、英語学習者より中国語学習者の間で有効である」といった傾向が明らかになりました。


Duolingoのユーザーは毎週130億回もレッスンを行っており、Duolingoはその全データをAIの改善に利用することができます。これにより学習体験がパーソナライズされ、ユーザーの学習を継続させることが可能になるとのこと。


ほとんどのA/Bテストでは、ユーザーのうち約5%が知らず知らずのうちに被験者として選ばれています。


アン氏も正確な数はわからないものの、Duolingoがこれまでに行ってきたテストの回数は1万回を超えているとみられます。アン氏は、「私たちはより多くの人がお金を払ってくれるように、より多くの人が使ってくれるように、そして友人にお勧めしてくれるように、A/Bテストを行ってきました。これがなければ私たちは成功できなかったでしょう」と語っています。


世界で最も成功した語学学習アプリになっているとはいえ、Duolingoにも課題は存在します。たとえば、Duolingoには有料ユーザーが少ないため、ダウンロード数で圧倒しているBabbelと比較しても収益はそれほど大きな差がありません。


アン氏は、レッスン終了時に表示される広告の数を増やすといった変更を行えば、すぐにでも有料会員数は増加するだろうと断言。その上で、こうした施策はDuolingoの成長を阻害する原因にもなると指摘しています。


そこでDuolingoは、ユーザーに料金を支払わせるための新たな方法を模索しています。そのうちのひとつが、2024年に日本でも導入された新たな有料プランの「Duolingo Max」です。


Duolingo Maxは月額約30ドル(日本での料金は月額4490円)で、ユーザーはAI搭載のボットと会話のロールプレイングをすることができます。かつてDuolingoは人間のユーザー同士で通話できる機能を検討していたそうですが、AIテクノロジーの発達によって人間とAIボットが自然に会話できるようになりました。これは、実際に人間と会話するよりもハードルが低く、ユーザーにとっても利用しやすい機能として好評です。


新たな有料プランが開始されたDuolingoですが、今後も基本無料ですべてのレッスンを提供し続けるとのことです。

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in 動画, Posted by log1h_ik

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