「我々はコンピューターのシミュレーションの中で生きているわけではない」と研究者

By Bruce Aldridge

我々人間が生きる現実世界は実はシミュレーションに過ぎないというのが「シミュレーション仮説」で、テスラやSpaceXのイーロン・マスク氏などもこの概念に賛同しているのですが、新たに「我々はコンピューターのシミュレーションの中で生きているわけではない」と研究者が主張する論文が発表されました。

Quantized gravitational responses, the sign problem, and quantum complexity | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/3/9/e1701758


Physicists find we’re not living in a computer simulation | Cosmos
https://cosmosmagazine.com/physics/physicists-find-we-re-not-living-in-a-computer-simulation

宇宙のシミュレーションなど、人類はさまざまな分野でさまざまな事象をシミュレーションしています。そして、人類が滅びを迎えることなく高度な文明をさらに発展させていった場合、人間が暮らす世界そのものをシミュレーションできるようになる可能性は大いに考えられます。さらに、もしも人間よりも高度な文明を持つ生物が存在する場合、我々人類が生きる現実世界をシミュレーションすることは可能であり、実際に既に人類が生きる世界はシミュレーションの中の出来事なのかもしれない、というのが「シミュレーション仮説」です。

現実世界はシミュレーションに過ぎないという「シミュレーション仮説」とは? - GIGAZINE


そのシミュレーション仮説に関する新しい研究結果が、イギリスのオックスフォード大学の理論物理学者たちによる研究チームから発表されました。研究では、「重力異常」と「計算の複雑性」から我々が暮らす現実世界は「単なるシミュレーションではない」と結論づけられています。

研究に参加したZohar Ringel氏とDmitry Kovrizhi氏は、金属の中で起こる特定の量子現象をコンピューターシミュレーションで再現することは不可能であるとしています。2人は当初、量子モンテカルロ法を用いて量子ホール効果に関する研究を行っていました。量子モンテカルロ法は、量子論における多体問題を解析するために無作為サンプルを使用するもので、量子ホール効果は強い磁場と非常に低い温度により起きる物理現象です。

しかし、Ringel氏とKovrizhi氏によると、量子ホール効果のような特異な現象に量子モンテカルロ法を用いようとした場合、常にうまく実行できなくなることが明らかになっています。これは、粒子の数が急激に増加することでシミュレートが指数関数的に複雑になっていくためだそうです。

By Masakazu Matsumoto

粒子の数に比例してシミュレートの複雑さが高くなる場合、粒子の数が倍になるならばシミュレーションに必要なコンピューターパワーも倍となります。シミュレーションする粒子が増える度にコンピューターパワーを同じように追加していかなければならないとなると、これは実現不可能なシミュレーションであると言わざるを得ないというわけです。具体的には、数百の電子に関する情報を格納するだけで、物理的には宇宙に存在する原子の数よりも多くのコンピューターメモリが必要になると研究者たちは計算しています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii