幾何学なフォルムで居心地抜群のドーム型住居を作る方法を実際に3年半もドームで暮らしているデベロッパーが公開
入手しやすい材料だけで、時間も費用も労力もかけず、簡単に作れてかつ居心地抜群というドーム型住居を実際に建造し、3年半も住んでいるというのがデベロッパーのBruce Hauman氏。本来非常に建造が難しいとされる幾何学のドーム型住居を、どのように簡略化して作ったのかについて、Hauman氏はブログでまとめています。
Frameless Geodesic Dome
http://rigsomelight.com/2013/09/09/frameless-geodesic-dome.html
「家を建てる」という行為は多くのエネルギーと費用を必要とするため、「家を持つ」ということは人生における大きな決断になります。しかし、部屋を借りるお金がもったいないという理由から家を購入し、借金を背負い人生の大切な時間をより労働に費やさなければならなくなるのもおかしな話。アメリカでは、このような理由から家を所有せず「自動車に住む」ことを選ぶ若者がアメリカでは増えつつあることも報じられています。
「自動車に住む」ことを選ぶ若者がアメリカでは増えつつある - GIGAZINE
そこでBruce Hauman氏が提唱している住居の形が、簡単に作れるドーム型の家。ドーム型という構造は建設の時間・コスト・難しさを最大限に省き、かつ住み心地は抜群になるとのこと。移動式住居にはティピーやゲルなどがありますが、Hauman氏が作った骨組みなしのドーム型住居はそれらに匹敵するほどの低コストであり、かつ、高い防水機能や強度を持つ構造になります。
これがHauman氏が3年半暮らしているというドーム型住居。木々の生い茂る場所に窓つきの住居が建っています。
中はこんな感じ。ランプやMacが置いてあり、電気が引かれているのがわかります。
床にはベッド。
ソファや自転車などが置かれていることから、かなり広々とした空間の様子。電動ヒーター、ファン、小型のエアコンが設置されているので、暑さや寒さにも耐えることが可能です。
ドーム型住居の幅は18フィート(約5.5メートル)で高さは13フィート(約4メートル)、広さは約19.4平方メートルとなっています。壁は、厚さ1.9センチのブルーボードと呼ばれる絶縁パネルを2枚重ねにしたものを、厚さ約5mmののプラ段2枚でサンドイッチ状に挟んでいるとのこと。レイヤー状になっているため、全てを合わせると壁の厚さは6センチ以上になっています。また、床にも二層に重ねられたブルーボードが使われています。
ドーム型住居の建造コストは2100ドル(約23万円)で、特別な材料や工具はなく、全て簡単に手に入りやすいもの。また、素材をカットし家を組み立てるまでの時間は、2人で行えば3日から5日だとHauman氏は述べています。
通常、幾何学のドーム型住居は非常に複雑な構造をしており、建造には多くの時間と労力が必要になります。Hauman氏によると、標準的な方法で幅約5.5メートルのドーム型住居を作ろうとすると、288個の骨組みと405枚の三角形のシートが必要であり、住居を作るのに必要なパーツは全部で693個にも及ぶとのこと。しかし、建築家のバックミンスター・フラー氏のアイデアのもとにSteve Miller氏が作った「ポリドーム」は、この方法を効率的に簡略化させていました。
Mars Hill Plydome Project Tour - YouTube
ポリドームは骨組みを持たず、張力を利用することで外装こそが骨組みになるという構造を持っています。1つのシートが従来の構造の7パーツに匹敵するため、必要なパーツが7分の1に縮小され、建造が簡単になるわけです。Hauman氏はポリドームからアイデアを得て、ドーム型住居を建造するに至りました。
このとき、雨をしのげ、かつ張力を生み出す素材として使われたのがプラ段。外装に使われるプラ段には重要な2つの役目があるため、約5mmという分厚さが必要です。あまり薄すぎると住居に必要な強度が得られなくなる点には注意しましょう。
ということで、ドーム型住居の簡単な構造は以下の通り。幾何学の形は一見すると複雑に見えますが、実は五角形と六角形の連続として表現できます。以下の画像を見ると、濃い青色で表されている部分が五角形、薄い青色で表されている部分が六角形になっています。
これはサッカーボールと同じパターンです。
まず、Hauman氏は6角形の半分を1枚のシートで作成することに。シートの上には3つの三角形が、縁を付けた状態で並んでいます。この縁の部分がオーバーラップすることで、こけら板の役目を果たすとのこと。プラ段に垂直になるようにボルト用の穴を開けたあとに、この形でカットされていきます。
五角形の場合も基本的に同じで、パーツの形を決めてから、穴を開けて、カットされていきます。しかし、五角形の場合は六角形と違って形がシンメトリーではないため、2つのパターンを描く必要がありました。
1つはひし型で……
もう1つはこんな形。まずは、この3つのパターンを計164パーツとなるように作成します。
さらに、上記3つのパターンとは別に、仕上げのための別パターンのパーツを作る必要がありました。これは、ドームの下部分は壁がフラットな状態になっているため。
また、プラ段の壁はブルーボードの内側と外側に設置されますが、両者はパターンこそ同じものの、内側はやや小さめに作る必要があります。実際にHauman氏が使ったのは以下のパターン。
このような移動住居は、夏の間太陽熱が室内にこもり暑くなりすぎるという問題がつきものですが、Hauman氏のドーム型住居はてっぺんにファンを備えており、大きな木々の陰になる部分に住居を置けば、木陰とファンの相乗効果で、外界の木陰ぐらいの涼しさには保てるとのこと。それでも暑い時は小型のエアコンを稼働させればOK。一方で、太陽の熱で室内が暖かく保たれるので、冬の寒さには強い構造になっているそうです。
一方で、絶えず紫外線を浴びているプラ段は数年で劣化してしまうため、外装は数年ごとの交換が必要。ですが、Hauman氏が3年半の間ドーム型住居で暮らした時点では、これはさほど大きな問題とみられていない様子。外側のプラ段のシート数枚を交換する必要はありますが、シート数枚にかかる費用は少額で、労力もさほどかからないそうです。
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