ポケットモンスターがどうやって作られているのかが垣間見えるデザイン・アイデアスケッチなどの貴重な資料&インタビューが聞けるムービーが公開中
シリーズ累計販売本数が2億本を突破したゲーム「ポケットモンスター」のゲーム音楽を作曲したりディレクターやプロデューサーを務めてきた増田順一さんに、ポケットモンスター 赤・緑やポケットモンスターブラック・ホワイト、ポケットモンスター サン・ムーンなどの開発秘話を聞いたり初期デザインやアイデアスケッチなどを見せてもらう、という貴重なムービーが公開されています。
An Exclusive Look At Pokémon’s Early Design Documents - YouTube
インタビューに応えてくれるのはゲームフリークの増田順一さん。
ゲーム開発における資料などのアーカイブについて質問され、増田さんは「最近は保管プロセスがあるけど、昔はFAXとかで送信しているような紙ベースでやっていたもので、コンピューターで絵を描いたりもしていなかったのでなかなかものが残っていないですよね。特に赤・緑時代とかルビー・サファイア時代はこういうものを見せるとも思っていなかったのでね」と笑いながら回答。
ポケットモンスター 金・銀に登場するガンテツボールの種類やボールの材料などが書かれた資料。紙の右上には丸秘のはんこが押されています。
手で示している部分にあるのは、赤・緑時代のプログラムのバックの何がどこに入っているのかを示すメモ。
さらに、開発当時の報告書には「コンピューターのクラッシュにより2日のロス」と書かれているそうです。当時の報告書を見ながら増田さんは、「昔はコンピューターがよくクラッシュしていたので、ポケモン消えなくてよかったと思います」と語ります。
ルビー・サファイアの資料には、レジロック・レジアイス・レジスチルという3体のポケモンをゲットするためのイベントに点字を盛り込む、というアイデアについて書かれています。
資料のアーカイブを意識し始めたのは2010年に発売されたブラック・ホワイトの開発からだそうで、そこからはアイデアスケッチなどに日にちも書き込むようになったそうです。また、手書きでのアイデア出しも続けており、紙の資料としてまとめやすいからか、スケッチブックを使うようになっていったとのこと。
「ウインドウのシステムがどう」といった具合に、ちょっとしたことでも思いついたことを書き込んでいる模様。
人と会話するというのはローカライズが大変なので、文章の組合わせをやめてスタンプにできないか、と考えたメモ。
「こういうの(紙に)に書いておくと、このアイデアから次のアイデアに進められるというか、アイデアにアイデアを重ねられるので。イラストとかもそうだし、こういうもの(紙にアイデアが残されている)があったときに、それじゃあこういうもの(新しいアイデア)が出せるね、と次々プラスに転じていける」と、アイデアを残しておくことの重要性を語る増田さん。
例えば、バトルで自分の手持ちポケモンが振り向くというアイデアをブラック・ホワイト時代に考案したそうですが、これはブラック・ホワイトには実装できなかったそうです。また、メモにはポケモンの性格で振り向くかどうかを決めると書いてあるそうですが、実際にはポケモンをかわいがると振り向くようになるという仕様にして、X・Yで実装することになったとのこと。
サン・ムーンでディレクターを務めた大森滋さんも登場。
実際に会議をしながらスケッチブックにアイデアやスケッチを書くそうで、イメージを共有するために大きなスケッチブックを使用しているとのこと。以下のスケッチブックに描かれているのはサン・ムーンの、バトル開始時のトレーナーやポケモンの登場シーンの流れを記したもの。
さらに、サン・ムーンで実装されたポケリフについてのアイデアメモ。ポケリフレを通してどうやってポケモンと仲良くなるのかのプロセスや、各動作に至るまで細かくアイデアがメモされています。
以下の資料は戦闘時に与えるダメージに関するパラメーター。しかし、「プログラムしながらどんどん数字とか変えてるから、ここに書かれてる数字が正しいかは別になってくる」とのこと。
また、「赤・緑時代はアセンブリ言語で書いてるので、かけ算もない言語なので、足し算を回数することでかけ算にしている」と、赤・緑の開発当初を振り返りながら懐かしむ増田さん。
現在ならばサインカーブを使えばいくらでも細かくデータをとれますが……
昔は曲線に沿って無数のデータを記録するということはできませんでした。
そこで、データの数を減らすためにプラス部分を8つのデータで簡易に表し……
マイナス部分はプラス部分を反転させること表現したそうです。これにより、サインカーブを8バイトと1ビットでコントロールできたとのこと。
また、ポケモンのサウンドプログラムも、赤・緑時代は増田さんが自身で書いていたそうです。鳴き声は以下のように複数の波形を作って表現していたそうです。
指で示しているのがAパターンの波形。この波形が「プー」という音を鳴らすとします。
こちらはBパターンの波形で、「ポー」という音を鳴らします。
AとBの違いはマジックで書いている部分の長さの違いです。
赤・緑ではこの異なる波形を切替えて、「プポポプポ」といった具合にポケモンの鳴き声を表現したそうです。ベースとなる音は40種類ほどしか存在しないそうで、音の長さと音程を変えることで各ポケモンの進化形の鳴き声なども作ったとのこと。
最後は「ポケモンの鳴き声がどこか似ているように感じるのはそういった理由から」と増田さんが語り、ムービーは終了です。
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