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スポーツにおける「技術」と「運」が占める割合は?そしてなぜ人々はスポーツを楽しむのか

By Chris Brooks

野球やサッカーといったスポーツが好きな人の多くは、自分が応援するチームの成績に一喜一憂しながらシーズンの行方を見守るものです。プロスポーツの世界に科学的な分析が取り入れるようになって久しいわけですが、それでも予測のつかない結果が生じることも、スポーツを見る醍醐味の1つといえます。そんなスポーツの世界で、選手が持つ「技術」とその時の「運」が占める割合は競技によってどの程度違うのか、そして最終的に「なぜ我々はスポーツを楽しむのか」という問いを解説するムービーが公開されています。

Why underdogs do better in hockey than basketball - YouTube


プロスポーツにおいて「運」と「技術」が占める割合をある理論をもとに分析し、一列に並べるとこんな感じに。いちばん左がギャンブルに代表される「運」に依存するもの、そして一番右がチェスのように「技術」が大きくものをいうもので、NHL(アイスホッケー)が最も運に左右され、次いでNFL(アメフト)、MLB(大リーグ)、サッカーのプレミアリーグと続き、NBA(バスケットボール)が最も選手の技術に結果が左右されるという結果が出ています。


この分析を行ったのがこの人、マイケル・モーブッシン氏です。


モーブッシン氏は書籍「The Success Equation(成功の方程式)」を記しており、そこからは、なぜ私たちがいろいろなスポーツが好きなのかが見えてきます。


モーブッシン氏によると、NBAは最も「運」から遠い位置にあるスポーツ。逆に、ホッケーは最も「ランダム性」が存在するスポーツとのこと。


モーブッシン氏は「全てのアスリートたちは実に素晴らしい技術を持っています。とてつもなく素晴らしい技術の持ち主です」と語ります。


数式で大きな意味を持つのは「サンプルサイズ」、つまり1シーズンにおけるゲーム数です。野球のメジャーリーグは年間162試合を戦いますが、NFLではわずか16試合のみ。


サンプルサイズが小さいために、NFLでは技術よりも運が占める要素が多くなります。


しかし、それだけが全てを決める要素ではありません。NHLとNBAはともに1シーズンあたり82ゲームを戦いますが、グラフの位置はことなります。ここで重要になる要素が「ゲームのダイナミズム」というものです。


これは「1ゲームあたり得点を入れなければならないターンが何回訪れるか」というもので、これもサンプルサイズの1つの要素としてカウントされるもの。バスケットボールの場合は、ボールを持ってからシュートするまでの時間が決まっているため、ショットの回数は多くなります。


アイスホッケーの場合、よりゲームは流動的で、しかもどっちのチームがパックを所有しているかを計ることがそもそも困難です。


プレイヤーの数も、評価に影響を与えます。1人または2人で戦うテニスの場合、ゲームの行方はプレイヤー自身のスキルによって大きく左右されます。


そのため、セリーナ・ウィリアムズのような実力のある選手が、2013年から2016年の186週間にかけてランキング1位を独占するという出来事が起こりえます。つまり、技術が試合の結果を大きく左右するスポーツの場合、結果を予測することは比較的容易になるというわけです。


しかし、バスケットボールやサッカー、野球のように複数の選手がチームで戦うスポーツの場合、試合の結果には多くの要因が絡んでくることとなります。


9人で戦う野球の場合、次の打順が回ってくるまでに8人の選手が打席に立つ必要があります。


モーブッシン氏曰く、「理想的なのは、全ての打者が打ちまくるという打順が構成されるというケースですが、そんなことはあり得ません」


「しかし、バスケットボールの場合はそれに近いことが起こりえます。レブロン・ジェームズのようなスター選手が攻守の両面にわたって大活躍してチームを勝利に導く、ということが往々にして起こります」


「また、アイスホッケーでも、シドニー・クロスビーのような選手がゲームに出ずっぱりになって試合の行方を決めてしまうこともあります」と語るモーブッシン氏。試合の流れが速く、運動量も多いアイスホッケーの場合は、例えトッププレイヤーでも試合中に交代して休憩をとる必要がありますが、まれにトッププレイヤーが試合に出続けて試合を有利に進めることがあるというわけです。


また、フットボールの場合でもチームの司令塔の役目を担う「クォーターバック」が、攻撃の要となります。


モーブッシン氏は「フットボールこそ、数人の優秀な選手に集約されるスポーツだと思います。そこでは、クォーターバックとコーチのコンビネーションが勝利を占ううえで最も重要な要素となります」と語っています。


そしてここで重要になるのが「タレントプール」、つまり、優秀な選手の層がどれだけ厚く存在しているかということになります。


バスケットボールでは、以下の表が示すように、野球やアイスホッケー、アメフトと比べて非常に背が高い選手が多く存在しています。


「もし、サンプルサイズを小さくすると、そこには確率的な分散が生じます。身長が2メートルあるバスケットボール選手でも、技術がある選手とそうでない選手がいます。しかし『身長が高い』という理由によってNBAでプレーしている選手が存在します。その結果、分散が多くなることで、技術の有無が大きな意味を示すようになります」


一方、サッカーやアイスホッケーでは、バスケットボールのような人並み外れた体格は必要とされません。そのため、ゲームの行方はより「運」に左右されるほうに力がはたらきます。


これを示すのにモーブッシン氏が使ったのが、スポーツ分析の専門家から教えられたという数式「統計論のピタゴラスの定理 (Pythagorean Theorem of Statistics)」とのこと。


この数式では、2つの無作為で独立した変数がある時、これらの変数を加算できることが示されています。今回の場合を当てはめてみると、技術と運を加算したものが、実際の結果としての解として現れるということ、つまりは技術と運が実際起こることの内容を決める要因となるというわけです。


1シーズンあたりの試合数が減るほど、運が占める要素は減少します。


これは、コイントスを行う回数を増やせば増やすほど、表と裏が出る割合は50:50に近づいて行くのと同じこと。


方程式の仕組みにより、実際の結果から運の要素を引くことで、必要とされる技術の量が導かれます。


そして、NBA、サッカーのプレミアリーグ、メジャーリーグ、NFL、NHLにおける運の要素を導き出した数値がコレ。NBAが最も運が占める要素が低く、NHLが最も運に左右されるという統計が出ています。


一方、シーズンの最後に行われるプレーオフの状況を見ると、別の結果が見えてきます。ある統計によると、野球は「最強のチームが勝利する」ということが最も不確かなスポーツであるとのこと。


ここから、「我々は何をスポーツに求めるのか?」という疑問が浮かんできます。


「我々ファンは、チームと一緒によい時と悪い時を一緒に楽しむために応援しているのでしょう」


「それは、われわれ人間に備わったものであり、それがあるからこそ試合を見るのが楽しいと感じるのだと思います」とモーブッシン氏は語っています。

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in 動画, Posted by darkhorse_log

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