人間の脳にAIを接続することを目指す新スタートアップ「Neuralink」をイーロン・マスク氏が設立
By Thomas Hawk
かねてより人工知能(AI)の可能性に着目し、「AIとヒトの融合」をテーマの1つに掲げている実業家のイーロン・マスク氏が、ついに人間の脳にAIを接続する技術を開発する企業「Neuralink」の立ち上げを発表しました。
Elon Musk's Neuralink will plug AI into your brain
https://www.engadget.com/2017/03/27/elon-musk-neuralink-ai-cranial-computing/
Elon Musk Launches Neuralink to Connect Brains With Computers - WSJ
https://www.wsj.com/articles/elon-musk-launches-neuralink-to-connect-brains-with-computers-1490642652
Elon Musk’s Billion-Dollar Crusade to Stop the A.I. Apocalypse | Vanity Fair
http://www.vanityfair.com/news/2017/03/elon-musk-billion-dollar-crusade-to-stop-ai-space-x
新たに立ち上げられたNeuralinkでマスク氏は「アクティブな役割」を担うとされており、すでにマスク氏が重点を置いてきたAIを人間に組み込むための技術の開発を率いるものと見られています。Neuralinkはカリフォルニアに拠点を置き、脳に関連する病気の治療、そして将来的にはヒトとAIの「ハイブリッド」を実現することを目指しているとのこと。
これまでにもマスク氏は急激な進化を続けるAIの存在に期待と懸念を表明してきました。やがて人間の能力を超えてくるであろうAIの能力に立ち向かうためには、人間は希望者ベースでAIを脳に組み込むことでその能力をブーストアップしてコンピューターに立ち向かう必要があるというのがマスク氏の持論であり、今回のNeuralinkはその技術を実現するために設立された企業というわけです。
Neuralinkはカリフォルニア州に対して「医学研究企業」として登録を済ませており、すでに関連する学術分野の著名な専門家を雇い入れているとのこと。適応性のある電極およびナノテクノロジーを研究するバネッサ・トロサ博士や、マスク氏がスポンサーになっているAI関連カンファレンスにも参加するカリフォルニア大学サンフランシスコ校のフィリップ・セイブス教授、歌をうたう鳥の脳の神経経路を研究するボストン大学のティモシー・ガードナー教授などがその一例です。
Neuralinkでは今後、テスラやSpaceXが行ったのと同じように、安全性を立証するためのワーキングサンプルを提示する予定になっているとのこと。AIを用いたコンピューターを脳に接続することで、てんかんやパーキンソン病の症状に対処することがまずは目指されています。マスク氏は、脳の一部を補完する技術の実現までには「あと4年から5年」との見通しを示しています。とはいえ、実際に人間の脳にAIを接続することが社会に広く認められるには、まだまだ時間が必要であることは想像に難くありません。
◆おまけ
マスク氏関連の情報として、SpaceXは打ち上げ後に地上に着陸した再利用可能ロケット「ファルコン9」の再利用に向けた燃焼実験を実施しました。この機体は2016年4月に打ち上げられた後に地上に帰還していたもので、ケープカナベラルのロケット打ち上げ施設にセットされた状態で9機あるロケットエンジンの燃焼試験に成功しています。燃焼試験に成功したロケットは3月30日に貨物を搭載して打ち上げられる予定で、これに成功すると初の「ロケット再利用」が成功することになるため注目が集まります。
SpaceX test fires rocket to go into space for SECOND time | Daily Mail Online
http://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-4354468/SpaceX-test-fires-rocket-space-SECOND-time.html
また、テスラが開発した屋根タイル一体型ソーラーパネル「ソーラールーフ」の受注が2017年4月から開始されると報じられています。
Tesla starts taking solar roof orders next month
https://www.engadget.com/2017/03/24/tesla-starts-taking-solar-roof-orders-next-month/
ソーラールーフは同社の蓄電装置「パワーパック」と組み合わせて使うことで、電力を自宅で発電してさらに溜めることもできるというシステムの一部。その全容は以下の記事を見るとわかります。
テスラが家庭用バッテリー「パワーウォール2」と屋根タイル一体型太陽光パネル「ソーラールーフ」発表 - GIGAZINE
また、テスラは新型EV「モデルY」を数年以内に登場させるとも発表しています。2008年に登場した「テスラ・ロードスター」、2012年に登場した「モデルS」、2015年に納車が開始された「モデルX」、そして2017年にも生産が開始されると噂の「モデル3」に次ぐ5番目の新型車両となるモデルYがどのような車種になるのかはまだ不明ですが、自動車メーカーとしてのモデルサイクルを考えると2019年あたりには新車種を登場させておくひつようがあるという判断も含まれている模様です。
Elon Musk teases 'Model Y,' says it's coming in a few years
快進撃を続けるという表現が似合いそうなテスラですが、一方ではモデルSやモデルXではトラブルが多発しており、自動車メーカーとしての開発能力が問われるという見方も。テスラはまだ3つのモデルを発売した新興メーカーのため、マイナートラブルは付きものという見方もありますが、日本円で1000万円を超える自動車でトラブルが許されるというのは、テスラという企業に人々が抱いている期待値の高さが中和剤になっているともいえます。2017年以降に登場する予定のモデル3は、同社では初となる普及価格帯の車種であり、販売台数も飛躍的に増加することが期待されることから、いかにトラブルを少なくしてうまく対応するのかが、今後のテスラの重要な正念場と言うことになるのかもしれません。
400万円のテスラは「イーロン・マスク伝説」終わりの始まりか | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)
http://forbesjapan.com/articles/detail/15654
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