記憶力をブーストさせて効率的に学ぶにはどうすればいいのか?
by dolbex
新しい分野を学ぶためには少なからず暗記をしたり、物事を記憶する必要がありますが、有名な「記憶術」を試してみたものの全く効果を発揮しなかった、という人もいるはず。効率的に学ぶにはどうすればいいのか?ということで、「Learn Better」という本の著者であるUlrich Boser氏が、「記憶力をブーストさせるためにはどうすればいいのか?」というインタビューに答えています。
'Learn Better' Book Shows How to Learn New Things - The Atlantic
https://www.theatlantic.com/science/archive/2017/03/how-to-learn-new-things-as-an-adult/519687/
Q:
何かを学ぶ、とはどういうことなのでしょうか?「学ぶ」と「記憶する」の違いは?どういう状態になれば「学んだ」と言えるのでしょうか?
Boser氏
私が「物事を学ぶ」「専門家になる」という状態を表現するお気に入りの例に、ラジオ番組「Car Talk」のパーソナリティの2人がいます。彼らは実際に壊れた車を見るわけではありませんが、人々は車に問題があると、「私のビュイックが変な音を立てているんですけど」と彼らに質問を投げます。パーソナリティの2人は自分たちが過去に見たビュイックやビュイックにあった問題を考えながら、リスナーの問題を解決する手助けをします。
特定のフィールドにおけるシステムやアナロジー、そしてそれらが相互にどう関係しているのかを学ぶと、最終的に考え方をシフトできるのです。そうすると、新しい問題を見た時でも、問題を解決できます。
Q:
本の中で強調表示やミーティング前に資料に目を通すことには意味がないと言っていますが、なぜですか?
Boser氏
資料に目を通すだけの再読や強調表示などは受動的なものです。確かにミーティング前に資料を確認するなどすると、安心しますが、それは「知った」ことにはなりません。学ぶためには「関連性」を作る必要があり、「自分に対して説明する」「自分に問いかける」など、もう少し複雑な行為を行った方がいいのです。ミーティングの前に資料を覚えるのではなく、自分に対して疑問を投げかけてください。「資料を再読する」といった間違った安心感を持たないように。
Q:
なぜ「他人に教えること」が学習のための有効な方法なのでしょうか?
Boser氏
「他人に教えること」の効果は、「自分に説明すること」と同じです。なぜそのことが重要なのか、なぜうまく働かないのか、ものごとの違いは何かなどを自分に対して説明してみせる「自己説明」の効果は多くの研究が証明しています。「自分に説明すること」と「他人に教えること」の違いは、他人に教える場合は、説明しようとしていることのどの部分が複雑で、どうしたらシンプルに説明ができるのかを考える必要があることです。そのため、他人に教えることで、自分に説明している状態から考え方をシフトする事ができます。
by Wirawat Lian-udom
Q:
「学習は必然的に困難なことだ」と本の中で述べていますが、なぜですか?
Boser氏
今は「学習することは簡単」「学習は楽しい!」と主張するものであふれています。オーストラリアの首都を答えられますか?
Q:
シドニーですか?多分違いますよね?
Boser氏
シドニーではないですね。他に考えは?
Q:
メルボルン?
Boser氏
違います。もう1つ言ってみてください。
Q:
なんてことだ。自分が知らないなんて信じられません。ブリスベンですか?すみません、わからないです。
Boser氏
キャンベラですよ。
今のあなたと同じ経験を、私は研究者と話している時に経験しました。「なんて恥ずかしいことなんだ。有名な国で、知っているべき事柄なのに」ってね。しかし、このようなことは学習に役立ちます。10年後、あなたがオーストラリアの首都を覚えていると保証できませんが、今はしっかりと覚えたでしょう。情報があなたにとって少し意味のあることになったからです。
私たち2人とも、きっとこれまでのどこかのタイミングでオーストラリアの首都を知ったはずです。しかし、きっと今のような恥をかくような状態ではなく、その時は重要ではなかったのでしょう。学習が難しいと言っていることの理由の1つはここにあります。もっと記憶力を働かせる必要があるのです。
そして、スキルを身につけるには、安全地帯から少し出て、挑戦する必要があります。シューティングゲームでさえ、スキルを伸ばすには挑戦することが必要です。
Q:
最も効果的なタイプのフィードバックとは何でしょうか?
Boser氏
先ほどのオーストラリアの例と同じく、間違った答えを出さざるを得なかった時に聞いた、「正しい答え」はあなたにとって大きな意味があります。なので、効果的なのは「答えを生み出す必要があるタスクを行った時に得るフィードバック」です。
Q:
「間隔反復」で反復して学ぶのが学習に役立つのはなぜですか?
by Thought Catalog
Boser氏
一度学習したことを定期的に再学習できる場所があれば、より学習がうまくいくからです。人々は「忘れること」を過小評価していますが、物事を学ぶのと同じ比率で、人は忘れていきます。もし「フランスの首都」といった情報のディテールを我々が3カ月で忘れてしまうことを知っていれば、Ankiのようなソフトウェアで何度でも学習することができます。これは何も新しい学習法ではありませんが、大学や高校ではあまり使われません。
Q:
ビル・ゲイツ氏が考案した「考える週(Think Week)」の話は非常に興味深いものでした。Think Weekのゲイツ氏はいったん日常の業務から離れてホワイトペーパーを読み、経営に影響を与える重要なテーマについて検討するというものですが、彼はなぜこのようなことを行うのでしょうか?そして、私たちがThink Weekを設けると、何を学ぶことができるのでしょうか?
Boser氏
彼はいったん全てから離れて、新しいスキルを身につけるための静かな時間を持つのです。私たちは学習における反省や熟考の役割を軽視しています。シャワーを浴びている時や寝る前に、その日に起こったことについて考えて、それぞれをつなげますよね。これが重要なんです。何かを効率的に学びたい人は、それらを「構成する」時間を持つことが大切なんだと思います。反省が学習をより効果的にするという研究結果もいくつか存在します。
Q:
人の名前を覚えるにはどうすればいいですか?
Boser氏
初めてキスをした人の名前を忘れないように、記憶する内容が「感情を伴うもの」であることは、記憶に役立ちます。あとは情報に別の情報を結びつけること。上司の娘の名前を忘れたくない時は、彼女たちの名前を、あなたが既に知っている別の情報と結びつけるのです。例えば、あなたが野球チームの「ニックス(Knicks)」が好きで、娘の名前がKellyとNeelyなら、「名前の頭文字がニックスと同じだな」という風に覚えます。こうすることによって、情報をあなたにとってより意味のあるものにしていくのです。
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