世界初の睡眠コントロール可能なアイマスク「Neuroon」は実際に「1日2時間睡眠」を可能にするのか?
人間の睡眠をコントロールして「多相睡眠」を可能にし、1日2時間睡眠を実現するというデバイスが「Neuroon」です。Kickstarterでのキャンペーンを経て市販化された「スマートアイマスク」が実際にどのような効果をもたらしてくれるのか、実機を使ってみたレポートが公開されています。
NeuroOn analysis - results and discussion - alxd
https://alxd.org/neuroon-analysis-results.html
このレビューを行ったのは、ウェブ開発者などの肩書を持つalxdこと、パウエル・チョジャッキーさんです。チャジョッキーさんはNeuroonと、実際の医療の現場でも用いられる脳波測定装置を使うことで、どれほどの精度でNeuroonは動作できるのかを確かめています。
Neuroonは、ポーランドの企業「Inteliclinic」が開発した睡眠検知・睡眠コントロールが可能というデバイスです。スマートフォンと連動し、睡眠時の脳波と筋肉の動き、そして眼球の動きをモニタリングすることで睡眠のフェーズを検知し、人間の睡眠をコントロールすることを目的としています。
額の部分に電極を持つほか目の部分にはLEDを内蔵し、段階的に明るさを調節して効率的に目を覚まさせる仕組みが備わっているとのこと。
そんなNeuroonについて、チャジョッキーさんは詳細な検証実験を実施しています。数か月にわたって複数の人をサンプルにして行われた実験の結果、実際に医療現場で使われている機器との違いが浮き彫りになっています。
人間の睡眠の深さには波があり、目を覚まさせるのに適切なタイミングが存在しています。そのタイミングを、脳波や体の動きなどから検知する睡眠ポリグラフ検査で用いられる検査装置と、Neuroonを使って検知させた際の違いを示したのが以下のグラフ。睡眠ポリグラフ検査装置が「起床が適切」と判断したタイミングとNeuroonの判断が一致したケースは73.8%と、まずまずのものだったことがわかっています。一方、一致しなかった「26.2%」についてチャジョッキーさんは、「そのタイミングで起こせなくても、次の波を待てばよい」という理由で大きな問題ではないとしています。
しかし一方で、「適切ではない」という判断を下す判断の食い違い率の高さが問題になる、とチャジョッキーさんは指摘。睡眠ポリグラフ検査装置が「今はダメ」と判断したタイミングでNeuroonが「OK」と判断した確立は31.6%となっており、これはすなわち3回に1回は誤判断しているということになります。タイミングの悪いときに起こされた経験がある人ならわかるはずですが、リズムから外れた状態で起こされてしまうと生気がなく、ヤル気の起こらない状態のまま1日の大部分を過ごしてしまうことになるため、この誤差は問題だとチャジョッキーさんは指摘しています。
さらにチャジョッキーさんは、使っているうちに内部でタイムラグが発生する点と、睡眠フェーズ判定の荒さを指摘しています。以下のグラフのうち、上のグラフ(unshifted)では医療用機器(青)とNeuroon(赤)の睡眠フェーズ判定の違いが示されています。これを見ると、青色のラインが上下した後にNeuroonの赤いラインが後を追うように追従している傾向がわかります。これがNeuroonに生じているタイムラグで、脳波の検知では最大160秒、睡眠の検知では最大で90秒発生していたとのこと。このタイムラグを補正した下のグラフ(shifted)だと線の上下がある程度一致しますが、細かく上下している青のラインに比べ、Neuroonの赤いラインはざっくりとした動きにとどまっていることがわかります。これは、睡眠フェーズ判定の荒さを示しているとのことです。
結果として、チャジョッキーさんの結論は「Neuroonは医療用グレードの機器ではないが、コイントスよりはマシ」という、やや辛らつなもの。ソフトウェアの更新などで改善を期待したいところですが、チャジョッキーさんはNeuroonについて「マーケティングに走りすぎて肝心の開発が十分に行われていなかった」とする旨の結論を語っています。
チャジョッキーさんによる検証の詳細は、ブログのエントリで確認することが可能です。
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