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ライバル関係にあるIntelとAMDが結ぶライセンス契約の理由と意味とは?


「IntelとAMDがライセンス契約を結ぶのではないか」という憶測が一部の半導体業界関係者の間で話題になっています。Intel・AMD双方からは何のアナウンスもなく、いまだ噂の真偽は不明ですが、CPU製造ではライバル関係にある両者が一体どのようなライセンス契約を結ぶのか、仮に契約を結んだとすればそれにはどのような意味があり、今後のCPU開発競争でどのような影響があるのか専門家が推察を行っています。

Is AMD Licensing Radeon Graphics To Intel?
http://www.forbes.com/sites/tiriasresearch/2016/12/06/is-amd-licensing-radeon-graphics-to-intel/

2016年12月5日に、HardForumにカイル・バーネット氏が「AMDとIntelとの間でライセンス契約が結ばれる。これでAMDのGPU技術がIntelのiGPUに採用されることになる」と書き込みました。半導体ビジネスをするバーネット氏は、Intel・AMDだけでなくNVIDIAとも緊密な関係を持っている人物で、何の根拠もなくデタラメな噂を書き込むとは考えにくいことから、Intel・AMD間で何らかのライセンス契約が締結されるのではないかと注目を集めています。


「もしもバーネット氏の書き込みの通りIntelがAMDとライセンスを締結したとすれば」という仮定の下、IntelとAMDの取引はどのような意味を持つのか、その理由は何かなどをケビン・レウェル氏が考察しています。

まず、IntelがAMDにライセンス契約を求める必要性として考えられるのは、NVIDIAとの関係の変化があるとのこと。IntelはCPUの製造がメイン事業ですが、iGPUのようなCPUに内蔵するGPUチップの開発も行っていることからGPUメーカーという性格も持ちます。しかし、GPU製造が本業のNVIDIAやATIを買収したAMDのようにはGPU開発に軸足を置いていないのが現状であり、多くのGPU関連特許をNVIDIAやAMDからライセンス提供を受けることでGPUを開発しています。

これは、第7世代Intel Coreプロセッサー「KabyLake」のCPUダイ。すでにCPUコアよりもGPUコアの方が大面積を占めるようになるほどで、CPUにおいても内蔵GPUの性能は重要性を増しています。


IntelとNVIDIAは、「NVIDIAの所有する特許権をIntelが侵害している」としてNVIDIAがIntelを訴える形で長年にわたって訴訟を行ってきましたが、2011年に包括的なクロスライセンス契約を締結することで和解したという過去があります。

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この契約によってIntelは年間2億ドル(約230億円)以上のライセンス料をNVIDIAに支払ってきたと予想されていますが、このクロスライセンス契約が2017年3月31日に期間満了を迎えることから、Intelはライセンスの提供元をNVIDIAからAMDに乗り換えるのではないか、というのが今回のIntel・AMDのライセンス契約締結の理由だとレウェル氏は考えています。NVIDIAからAMDに乗り換えることでIntelが得るメリットは、ライセンスコストの引き下げにあります。一方AMDはIntelから多額のライセンス使用料を得ることで安定したキャッシュフローが得られるという利点があります。

「GPU開発のためのライセンス提供を受けるため」という第1のシナリオだけでなく、さらに踏み込んだ内容になる可能性についてもレウェル氏は考察しています。その第2のシナリオとは、「IntelのCPUに内蔵するiGPUをAMDが提供する」というもの。これは、CPUだけでなくGPUをも本業として開発するAMDにGPU部分は丸投げするという、「餅は餅屋」的な発想です。


ちなみにIntelは、AtomプロセッサーのiGPUにARMのMaliを採用した実績もあることから、ライバル企業のGPU内蔵を検討していても不思議ではありません。

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しかし、IntelとAMDはCPU製造業という点ではライバル関係にあることから、第2のシナリオにはデメリットも大きいとレウェル氏は考えています。IntelはCPUに組み込むGPUの提供をAMDから受けるにあたってCPUの設計情報をAMDに渡すことが避けられません。これによって、AMDにIntelのCPU設計技術やロードマップなどの情報が伝わることは、CPU製造ではライバル関係にあることからIntelにとって不利益になるというわけです。

他方でAMDとしては、GPU性能の劣るIntel・CPUのグラフィック性能を向上させることは、現時点でも劣勢のCPU(APU)販売がさらに厳しいものになる危険性を伴います。2017年初頭にリリースされると予想されている新マイクロアーキテクチャ「Zen」で、Intelと再びCPUという土俵で戦うと宣言しているAMDにとって、冷や水をあびせられかねないという危険がありそうです。

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第2のシナリオは第1のシナリオにくらべてAMDにとってはビッグビジネスになることは明らかですが、仮に第1のシナリオであっても経営再建中のAMDにとっては願ってもないキャッシュフローの獲得になるとレウェル氏は述べています。CPU製造においては唯一のライバル関係にあるIntelとAMDによるライセンス契約は、互いにとって「敵に塩を送る」側面があることから、どちらにとって有利なように事が運ぶのかは、半導体業界関係者だけでなくPCユーザーにとっても注目を集めそうです。

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in メモ,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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