生き物

熱帯に住むアリの一種が300万年前からコーヒーの木を「栽培」して共生してきたことが判明


オセアニアのフィジー諸島に生息するアリの一種が、特定の種類の植物を栽培していることが明らかになっています。栽培されているのはSquamellaria属に含まれるコーヒーの仲間の植物で、アリは植物の種子を木の上に運び、肥料を与えて育て、さらに実った果実の中に巣を作るという習性があり、両者は互いが存在しないと生存できないという強固な共生関係にあることがわかっています。

Ant species cultivates coffee for accommodation | Science | DW.COM | 22.11.2016
http://www.dw.com/en/ant-species-cultivates-coffee-for-accommodation/a-36477533

In Fiji, ants have learned to grow plants to house their massive colonies | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/11/on-fiji-ants-have-learned-to-grow-plants-to-house-their-massive-colonies/

この研究結果を発表したのは、ルートヴィヒ・マクシミリアン大学ミュンヘンの植物学者であるSusanne Renner氏と、同校で博士課程を履修しているGuillaume Chomicki氏の研究チームです。2人は特定の種のアリが果実の中に巣を作る習性があることを把握していましたが、実際にフィジーを訪れて観察を行ったことで非常に複雑な生態があることを発見しています。

調査によると、「Philidris nagasau」と呼ばれる種のアリはSquamellaria属植物の種子を採取して運び、別の樹木の幹にある割れ目部分などに運び入れて「植え付け」ます。植え付けられた種子は発芽して成長することになりますが、木の幹で発芽した種子は地面から栄養を吸い上げることができません。そこでアリは、種子を植えた場所で排泄を行うことで種子に成長のために必要な「肥料」を与えています。

植物が成長して果実が成ると、寄生している木の枝にはコブのような塊が見えるようになります。植物を成長させたアリは、次にこの果実の中に巣を作ります。


果実を割ってみると、中には非常に入り組んだ巣が作られています。巣には明るい部分と暗い部分がありますが、明るい部分には卵が産み付けられ、暗い部分には排せつ物などがためられているとのこと。


果実が大きくなるとアリの住み家はさらに拡大します。そして種子ができると、アリたちは新しい種子を寄生木の別の部分へと運び、新たな栽培を開始します。

このアリの行動で興味深いのは、種を植えてから2~3か月は何の成果も得られないにもかかわらず、アリが肥料を与え続けるところにあります。これはつまりアリたちは人間のように樹木を「栽培」するノウハウを身に付けているということになり、実際にアリは6種類の樹木を同様の手法で栽培していることが明らかになっています。

これまでにも、いわゆるアリ植物のようにアリを樹上で生活させている植物は存在していましたが、今回明らかにされたアリと植物の関係はお互いが存在しないと生存ができないというところが特徴的です。アリがいなければ植物は成長できず、植物がなければアリは住むところがないことになり、両者の間には非常に強固な共生関係が成り立っているといいます。さらに双方の種族を調査したところ、なんとおよそ300万年前から両者が共に暮らしてきたことも明らかにされています。


研究チームによる論文は、以下のサイトに掲載されています。

Obligate plant farming by a specialized ant : Nature Plants
http://www.nature.com/articles/nplants2016181

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in 生き物, Posted by darkhorse_log

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