2016年10月11日 19時00分メモ

海水と太陽光だけで砂漠でも作物を栽培できる農場「Sundrop Farm」が本格稼働を開始

野菜などの作物を栽培するためには太陽と土壌、そして水が必要であるため、これまで砂漠のように気候が厳しく水が存在しない地域で耕作することは難しいとされてきました。この中で最も難しいといえるのが「水の確保」であるわけですが、オーストラリアでは太陽光発電と海水を使うことでトマトなどの栽培を行う農場「Sundrop Farm」が本格稼働を開始しています。

Home - Sundrop
http://www.sundropfarms.com/

First farm to grow veg in a desert using only sun and seawater | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2108296-first-farm-to-grow-veg-in-a-desert-using-only-sun-and-seawater/

Sundrop Farmの全景。20ヘクタールという広大な敷地には、太陽光を反射する鏡が敷き詰められたエリアと、作物を栽培する温室が並ぶエリア、そして中央に立つタワーなどが配置されています。

Sundrop Farmが太陽と海水だけで作物を作る仕組みは以下のとおり。鏡で反射した太陽光を使って発電し、海水を脱塩する装置を運転して作物の生育に必要な真水を作り出します。同時に、発生した熱で温室を暖めるほか、海水はシステムや温室の冷却にも用いられます。なお、栽培する作物はトマトなどの野菜や、ベリー類や果物など、さまざまな品種に対応が可能とのこと。

太陽光を集め、39メガワットの電力を生み出す発電用のタワー。地面には、手前から鏡のエリア、温室のエリア、そして2km離れた海からパイプを使って送ってきた海水をためておくプールが設置されています。

敷地内に敷き詰められた無数の温室

その中では最新鋭の栽培装置が置かれており、トマトが育てられています。

装置の中にはココナツの皮を砕いたものが敷き詰められ、従来の農業のような土は用いられていないとのこと。また、キレイな水が使われているため、殺虫剤を使わずに栽培できるのも大きなポイントとなっています。

ちょうど人の背の高さあたりにトマトの実ができているので、収穫も楽な様子。

実際にこの農園ではトマトの栽培が本格的に始められており、収穫されたトマトはスーパーで販売されています。

かつてこの地域には火力発電所があり、地元の雇用を支えていました。しかし、発電所が閉鎖され、人々が職を失ったところにこのSundrop Farmが作られることになり、人々の雇用を守る上でも大きな役割を果たしています。

出荷されて行く膨大な量のトマト。年間で1万7000トンの生産能力を備えているそうです。

本格的に稼働を開始したSundrop Farmですが、冬場の太陽エネルギー減少に対応するために、発電所から電力を購入せざるを得ないという現状も。とはいえ、同社のCEOであるPhilipp Saumweber氏は今後も技術改良を進めることで、化石燃料による電力に頼ることなく栽培することが可能になると語っています。

Sundrop Farmは現在、オーストラリア南部のポートオーガスタで本格稼働を行っているほか、アメリカ・テネシー州とポルトガル南部の沿岸沿いにあるオデミラにも建設を計画中。さらに、中東地域など従来は農業に適していないとされてきた地域でも、トマトをはじめさまざまな農作物を栽培することが可能になるようです。