東京の家賃上昇率は実はアメリカやイギリスなどの主要都市に比べると圧倒的に緩やかで優秀
サンフランシスコやロンドンなど、近年、地価の高騰が著しく急激な家賃上昇に見舞われている大都市がある中で、日本の首都・東京は、他国の主要都市に比べて家賃上昇の割合が圧倒的に緩やかで優秀であると指摘されています。
Why Tokyo is the land of rising home construction but not prices - FT.com
http://www.ft.com/cms/s/023562e2-54a6-11e6-befd-2fc0c26b3c60,Authorised=false.html
Tokyo may have found the solution to soaring housing costs - Vox
http://www.vox.com/2016/8/8/12390048/san-francisco-housing-costs-tokyo
下図は、イギリスのロンドン、東京都、東京都港区、アメリカのサンフランシスコにおける1995年に対する2015年の家賃上昇率と人口増加率を表すグラフです。東京都全体では人口増加に対して家賃上昇の割合が小さく、東京の中でも人口増加率が高い東京都港区でさえ、家賃上昇の割合が抑えられていることが分かります。これに対して、ロンドンは東京都港区に比べて人口増加率が小さいにもかかわらず、家賃上昇率は400%オーバーという信じられないほどの家賃上昇を見せていることが確認できます。
ただし、このグラフの家賃上昇率はインフレ率を一切考慮していないという点には注意が必要です。1995年から2015年において、日本は完全なデフレ状態だったのに対して、ロンドンやサンフランシスコは一定のインフレ率を保っていたとのこと。しかし、インフレ率を考慮したとしても、サンフランシスコの家賃上昇率は100%程度とのことで、わずか10年間に実質的に家賃が2倍に高騰しているそうです。
ロンドンやサンフランシスコで家賃が高騰している原因は極めて単純で、人口流入に対して住宅の供給がまったく追いついていないから。例えば、アメリカ西海岸のベイエリア一帯では2015年単年で6万4000人の労働者が増えたのに対して、新しい住宅の供給はわずかに5000軒にとどまったとのこと。これに対して東京都において2014年に新しく供給された住宅は14万軒以上で、東京都の3倍の人口を抱えるカリフォルニア州が8万3657軒増であるのに比べると圧倒的に新規住宅の供給量が多いことが、家賃上昇率の多寡に現れていると言えそうです。
そもそもなぜアメリカで住宅の供給が追いつかないかの原因を探ると、そこには「Not In My Back Yard(NIMBY)」活動というものがあると考えられています。これは、新規住宅の建築に対して周辺住民がストップをかける行動を指しており、「新しい住宅は知らない他人の事情だ」というわけで、周辺住民によって新規住宅の建築が阻止されている状態にあるようです。
これに対して日本では新規住宅の建築に対する規制は緩く、例えば東京で一軒家を取り壊して6つのワンルームを備える共同住宅を作ろうという土地所有者がいた場合、周辺住民がこれを阻止できる法律はほとんどありません。このため、旺盛な需要に合わせて新規住宅が供給されるという市場原理にのっとって、家賃上昇の割合が自然と緩やかになるというわけです。
急激な家賃上昇に悩まされているボストン、サンフランシスコ、ニューヨークなどの大都市では、東京における都市開発事情は解決策を作る参考になるのではないかとVoxは指摘しています。
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