「スター・トレック」の権利元が「二次創作の10個のガイドライン」を突如制定
By Nathan Rupert
既存の作品のキャラクターや世界観などを利用して、既存作品のクリエイター以外の人、例えばファンの人たちが二次的に創作したコンテンツのことは「二次創作」と呼ばれていて、同人誌や二次創作映像といったものがあります。「スター・トレック」シリーズは昔からファンの人たちとの交流を重視し、ファンの人たちが作る二次創作作品について黙認してきたところがあるのですが、突如として「二次創作の10個のルール」を制定しました。
Star Trek Fan Films
http://www.startrek.com/fan-films
スター・トレックの権利を有する放送局のCBSと映画会社のParamount Picturesが公開した「二次創作の10個のガイドライン」は以下の通りです。
◆01:二次創作作品は15分以下の長さ、もしくは最大2つのエピソード・合計30分以内であり、制作者が独自に考えたストーリーで構成されること
◆02:二次創作作品のタイトルに「Star Trek」を使ってはいけない。ただし、副題に「A STAR TREK FAN PRODUCTION」を使うことは許可されている。また、「公式」という単語をタイトルおよび副題に含めることは禁止
◆03:二次創作作品の内容はオリジナルであり、公式作品のストーリー複製や作り直しは禁止
◆04:作品内でスター・トレックのグッズを使う場合は公式グッズのみが許可され、いかなる複製品の使用も許可されない
◆05:二次創作作品は本当のファンが作った作品であるべきで、作品のクリエイターやキャストはアマチュアでなければいけない。スター・トレックの過去作品に登場および関係した人が二次創作に関わるのは禁止
◆06:二次創作は非営利目的でなければいけない
・CBSおよびParamount Picturesはガイドラインを順守する二次創作作品が、5万ドル(約511万円)を超えない限り、制作資金を集めることを制限しない。出資金が5万ドルに到達した時点で出資金の募集をやめる必要がある
・二次創作作品は基本的に無料での提供のみに対応、もしくは収益を生まないストリーミングサービスでの提供が許可される
・二次創作作品のDVDやBlu-rayの提供は禁止
・二次創作作品は広告収入を得るために使用されてはいけない。例えば二次創作作品に関連する再生前/再生後広告・バナー広告は広告収入に含まれるが、これに限定されるものではない
・二次創作作品は作品で使用したセットや小道具、衣装の販売や使用許可で収益をあげてはいけない
◆07:二次創作作品は家族でも見られる内容で、一般的なモラルに反しない内容でなければいけない。不敬な言語の使用・わいせつ・ポルノ・麻薬・アルコール・タバコなど健康を害したり法律に違反したりする内容を含めることは禁止。また、暴力的描写・詐欺行為・名誉毀損・誹謗中傷・露骨な性描写・脅迫・ヘイト行為といった不適切な行為を含めることはできない。二次創作作品は個人のプライバシーや権利を侵害してはいけない
◆08:二次創作作品は二次創作であることを適切に示す、定められた文章をクレジットに表記する。また、いかなる宣伝用の資料にも定められた文章を表記する必要がある
◆09:二次創作作品のクリエイターは著作権や商標法のもとにおいて、作品や作品の要素を登録してはいけない
◆10:二次創作作品はCBSおよびParamount Picturesとの関係性や、同社による承諾を意味するものではない
1966年に放送が開始された「スター・トレック」シリーズは、ファンとのコミュニケーションを重要視しており、二次創作の映像作品に関して制作者と問題が発生したことはありませんでしたが、エンターテインメント系のニュースを扱うThe Mary Sueによれば、今回二次創作のガイドラインが制定されたのはAxanar Productionsという制作会社が大いに関係しているそうです。
Axanar Productionsは、クラウドファンディングサイトのKickstarterで制作資金を調達してスター・トレックの二次創作品であるショートムービー「Prelude to Axanar」を制作しました。
Prelude to AxanarはYouTubeで公開されていて以下のムービーから視聴できます。
Prelude to Axanar (Official) - YouTube
Prelude to Axanarは他の二次創作作品と比べてクオリティがかなり高く、スター・トレックファンからも好評を集めたため、Axanar Productionsは長編作品「Star Trek: Axanar」の制作プロジェクトを立ち上げKickstarterとIndiegogoで出資を募り、合わせて約120万ドル(約1億2000万円)の資金を調達することに成功。これを良しとしなかったのがスター・トレックの権利を有するCBSとParamount Picturesです。
CBSとParamount Picturesは、Axanar Productionsによる二次創作作品が無許可の作品であり、スター・トレックの設定や人物、種族など著作権で保護されているはずの多くの要素を無断で使用していると主張し、Axanar Productionsに対して損害賠償および公開・制作中止を求める訴訟を2015年12月30日に起こしました。
原告のCBSとParamount Picturesの弁護団が、バルカン人のとがった耳やクリンゴン人が話す架空の言語のクリンゴン語などAxanar Productionsが侵害しているスター・トレックの要素をまとめた書類を送付したり、Axanar ProductionsがCBSとParamount Picturesの主張するスター・トレックの要素は著作権保護の対象にならないと指摘して棄却の申し立てを行ったりするなど争いは泥沼の様相を呈していました。
しかし、5月20日に開催されたスター・トレックのイベントで、2016年7月にアメリカで公開される映画「スター・トレック Beyond」の製作総指揮をとるJ.J.エイブラムス氏が、訴訟はファンに対する適切な対応ではなく、二次創作作品とスター・トレックは対立すべきではないという結論に達し、スター・トレック Beyondのジャスティン・リン監督がCBSとParamount Picturesに対して訴訟の取り下げを要請していることを明らかにしました。
J.J.エイブラムス氏が訴訟に関して発言しているところは以下のムービーから確認できます。
JJ Abrams Says AXANAR Lawsuit Is "Going Away" - YouTube
Axanar ProductionsとCBS、Paramount Picturesによる争いは和解の方向へ進みつつありますが、今回の訴訟を機にスター・トレックの二次創作のガイドラインが制定されたというのが大方の予想になります。なお、長編作品のStar Trek: Axanarの予告編が公開されているものの、長編というだけあって「二次創作作品は15分以下、もしくは最大2話で合計30分以下」といったガイドラインに触れる可能性もあり、実際に公開されるかどうかは記事作成現在のところ不明です。
AXANAR Teaser Trailer "Honor Through Victory" - YouTube
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