高度1万メートルに放り出されたときに何をすればいいのかが分かるサバイバルガイド
by Edward Allen Lim
飛行機事故の調査を行っているBureau of Aircraft Accidents Archivesによれば、1940年から2008年の間に飛行機事故は1万5463件発生し、11万8934人の犠牲者が出ていて、さらに高度1万フィート(約3000メートル)の落下から生還したのはたったの42人という調査結果が出ています。万が一飛行機事故に巻き込まれてしまい、高度3万5000フィート(約1万メートル)からパラシュートなしで落下した場合に、一体どうすれば助かるのかについて、生き残るためのサバイバルガイドが公開されています。
How to Survive a 35,000-Foot Fall - Plane Crash Survival Guide
http://www.popularmechanics.com/adventure/outdoors/a5045/4344036/
このサバイバルガイドでは、「早朝の飛行機に乗り、離陸後ウトウトと寝てしまったあなたが、周りの冷気と恐ろしい音で目を覚ますと、乗っていた飛行機がきれいさっぱりなくなっていて、身ひとつで高度1万メートルから落下していた」という前提で、落下しつつ、その状況と、取るべき対策を教えてくれます。
・AM 6:59:00、高度3万5000フィート(約1万メートル)
ということで、状況は「高度約1万メートルから落下中」というところから始まります。酔っ払ってホテルのバルコニーから落下することに比べれば、よっぽど時間的な余裕がありますが、呼吸に必要な酸素が十分ではないため、ほどなくして低酸素症を発症して意識を失い、少なくとも1マイル(約1600メートル)はまるで飛んでいく砲弾のように落下し続けることになります。
飛行機から投げ出されてしまって生き残る可能性が低いとしても、周りの状況を理解するのが重要です。飛行機から落下する可能性は2通り考えられます。1つ目は、身ひとつで飛行機から落下してしまい、体を守れるようなものや速度を緩める手段が全くない場合です。2つ目は、飛行機の残骸につかまって「レクテージ・ライダー」となる場合です。レクテージ・ライダーとは、上空からのフリーフォールについて研究しているアマチュア歴史家のジム・ハミルトン氏による造語です。ハミルトン氏は、上空からの自由落下が発生し得るあらゆる状況について研究し、データベースを作成しています。
ハミルトン氏の分析によれば、飛行機事故で空中に投げ出された場合、何らかの飛行機の残骸と共に落下するケースが多いとのこと。レクテージ・ライダーになることができれば、飛行機の残骸につかまることで、落下時や着地時の衝撃を和らげられるという利点があります。1972年には、小型ジェット旅客機のマクドネル・ダグラス DC-9が、フライト中にチェコスロバキアの上空で事故を起こしました。飛行機乗務員のVesna Vulovic氏は高度3万3000フィートから落下しましたが、座席や食事配給用のワゴン、飛行機の破片、他の乗務員に体を挟まれていて、雪の上に着陸したので命は無事でした。
by Transportation Safety Board of Canada
地上に近づくほど、体が重力に引っ張られるため、落下速度は速くなります。しかし、落下速度よりも空気抵抗の方が大きいため、重力と空気抵抗が等しくなると、加速は止まります。落下している人の身長や体重、さらに空気密度などの要因に左右されますが、1500フィート(約460メートル)の高さから人間が落下すると、落下速度は平均して時速120マイル(約193km)になります。高層ビルから身を投げた場合、地面にたどり着くまでの時間はおよそ12秒ですが、高度1万メートルから落下した場合は、落下時間は約3分間とある程度の余裕があります。
・AM 7:00:20、高度2万2000フィート(約6700メートル)
高度6700メートルまで降りてくると、空気中の酸素が呼吸に十分な量となるので、意識が戻るはず。地上到達まではまだあと2分の猶予があります。
ハミルトン氏が語ったのは「自分は死ぬために落ちているのではない。必ず着陸する」という気持ちを持つことが大切だということ。上空から落下して生き延びた人の多くは、列車の天窓や、干し草の山、茂みなどがクッションとなって生還しています。樹木もクッションとしては悪くないのですが、枝が体に刺さる可能性があります。また、電線に体をぶつけて跳ね返らせることで生還した例もあるとのこと。雪原や沼地はクッションに適している一方で、液体は圧縮性が小さくクッションとして不適当なので、湖や海などに着水するのはよくないそうです。たとえば、海に落ちるのは歩道に衝突するのと同じくらいの衝撃があるため、体が粉々に砕けてしまうとのこと。
次に考慮するべきは落下中の姿勢です。スカイダイビングの姿勢を想像して、腕と脚を広げておなかを地面に向けて、背中を丸めて頭は上向きにします。この姿勢だと空気抵抗が大きくなり、空中で体を思い通りに動かしやすくなります。しかし、体をリラックスさせてはいけません。
by Morgan Sherwood
また、着陸時の姿勢についても考える必要があります。1963年に発行された連邦航空庁(FAA)の文書には、「脚を揃えて、かかとを上空に向けて、膝を抱えることが生存率を上げる」と書かれています。また、アクロバットやレスリングのトレーニングを積んでおくことで、生存率が上がるとのこと。
水に落ちる場合は、着水の一瞬で体にナイフが突き刺さるような痛みを覚えるそうです。脚から入水する方法と、両手をがっちりと握りしめて手から入水する方法の2通りがあります。どちらにせよ、着水のギリギリまで落下用の体を広げた姿勢を取るのが重要。また、着陸する場所に関わらず、必ず頭を守って手か足から着陸することが重要です。転落死の死因で最も多いのは頭蓋の損傷によるものです。もしも頭からの着陸を回避できないのであれば、顔は犠牲にして頭頂部や後頭部を守ることが、生存率を上げることにつながります。
by Brian Dewey
・AM 7:02:19、高度1000フィート(約300メートル)
地上まで1000フィートを切ると、残された時間はあと6秒ほど。「着陸」に備えて集中しましょう。統計的に生き残る可能性が高いのは、飛行機の乗務員か、子どもか、もしくは軍用機で飛行中のケースです。過去40年以上の間に、民間機の事故で生存者がたった1人だったケースは、少なくとも12件発生しています。生存者のうち4名は飛行機の乗員で、7名は18歳以下の子どもでした。FAAは、「4歳以下の子どもは大人に比べて骨格が柔軟であり、筋緊張が少なく、皮下脂肪が多いため内臓器官が保護されやすい」と分析しています。他にも、体が小さい人は飛行機の破片による傷を負いにくく、体重が軽い人は重力の影響が弱いため落下速度を緩めることができるという利点があります。
・AM 7:02:25、高度0フィート(0メートル)、地上
これまで述べてきたような対策を取った上で、いよいよ衝突の瞬間を迎えます。幸運にも外傷が少なく命が助かった場合、タバコの一服でも吸って生還を喜びましょう。
幸運な生存者の1人であるユリアナ・ケプケさんは、1971年のクリスマスイブ、ペルーのリマからペルー北東部にある都市イキトスを目指していたロッキード L-188 エレクトラに乗っていました。アマゾン上空を飛行していたはずのケプケさんが気がついたときには、飛行機はジャングルのど真ん中に墜落し、隣に座っていた母親は死亡していました(LANSA ペルー航空508便墜落事故)。
このとき17歳のケプケさんは、生物学者である父親のアドバイスを思い出し、村を探すために水脈をたどり始めました。ワニやアカエイを棒で追い払いながらジャングルを進み、持っていた飴と汚れた水のみで生き延びていたそうです。10日間にわたってジャングルを歩き続けたケプケさんは、川沿いの小屋で休んでいたところを材木の伐採に来ていたグループに発見され、無事に保護されました。このときのことをケプケさんは「私は正しい選択を行って事故現場をいち早く離れることができました。森や川を進む方法を知っていたので恐くありませんでした」と振り返っています。のちに、この生還は「奇跡の詩」という映画になっています。
飛行機事故に遭遇する確率は、その他の交通機関の事故に比べれば圧倒的に低いのですが、頭の片隅にこのサバイバルガイドのことを覚えておくと、万が一の時に役立つかもしれません。
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