サイエンス

保守派もリベラル派も「自分の政治的信念に合致したニュース」を信じやすいという研究結果


政治に関するフェイクニュースは現実世界に深刻な影響を及ぼしており、「対立陣営はフェイクニュースを流して世間を操っている」と感じている人もいるはず。スタンフォード大学の心理学者らが主導した新たな研究では、人々は政治的信念や教育レベル、推論能力などにかかわらず「自分の政治的信念に合致したニュース」を信じやすいという結果が示されました。

When Politics Trumps Truth: Political Concordance Versus Veracity as a Determinant of Believing, Sharing, and Recalling the News
https://psycnet.apa.org/fulltext/2025-33892-004.html


News consumers are more influenced by political alignment than by truth, new study shows | Stanford Report
https://news.stanford.edu/stories/2024/10/new-study-shows-that-partisanship-trumps-truth

People trust news that matches their political views- Earth.com
https://www.earth.com/news/people-trust-news-that-matches-their-political-views-even-when-its-fake/

政治的なフェイクニュースについては、長年にわたって「非常に政治的バイアスが強く学歴の低い、一部のメディア消費者のみが信じるもの」というのが一般的な認識でした。言い換えれば、自分の政治的信念に合致しているフェイクニュースを信じてしまうのは、ごく限られた少数のグループに過ぎないという考えです。


その後のいくつか研究では、「あらゆるタイプの人々はニュースの真実性を自身の政治的信念よりも優先する」という結果が報告されています。いずれにせよ、多くの人々は「フェイクニュースにだまされるのは自分のような人間ではなく、もっと特殊な人々だ」と考えるかもしれません。

しかし、これらの研究には「事前質問などで被験者がニュースの真実性に目を向けやすくなっている」「党派性が曖昧なフェイクニュースが混ざっている」「ニュースの情報源が示されているため、CNNなどの有名メディアの情報を信頼しやすい」といった限界があるとのこと。


そこでスタンフォード大学の博士研究員であるマイケル・シュワルベ氏らの研究チームは、これらの問題を回避した実験を設計しました。

実験では被験者の意識を「ニュースの真実性」からそらすため、「記憶に焦点を当てた研究」のように見せる質問が含まれました。そして、「大統領候補のドナルド・トランプ氏の支持派/反対派」のどちらかに合致する政治的見出しを用意し、ニュースのソースについては示されず見出しのみに焦点が当てられました。また、すでに話題になっているフェイクニュースを用いると、被験者が「これは確かフェイクだと話題になっていた」と気付く可能性があるため、すべてのフェイクニュースは研究チームが作成したものが使われました。

研究チームが作成したフェイクニュースには、「ワシントンD.C.のトランプホテルで退役軍人が無料で宿泊した」「トランプ氏、ビジネス界の大物との非公式会議で『貧乏人は好きじゃない』と発言」といった実際にあり得そうなものから、「トランプ氏、チェスのグランドマスターでチャンピオンのマグヌス・カールセンに勝利」「トランプ氏が教皇の格好でハロウィーンの乱交パーティーに参加」といった極端なものまでありました。

これらのフェイクニュースには32~71語のキャプションが添えられ、本物のニュースと混ぜてランダムで被験者に提示されました。研究チームはその他の質問と混ぜて、被験者がフェイクニュースをどの程度信じたのかを調査したとのことです。


分析の結果、親トランプ派の被験者も反トランプ派の被験者も、本物のニュースをフェイクニュースよりも真実性が高いと評価しました。しかし、ニュースを信じる傾向は「被験者の政治的信念」に強い影響を受けており、自分の政治的信念に合致したニュースを真実だと思いやすいことが明らかになりました。

さらに、政治的信念によるバイアスは、フェイクニュースよりも本物のニュースでより強力になりました。つまり、人々はたとえ本物のニュースであっても、自分の政治的信念に反するようなニュースを信じない傾向が強かったというわけです。

これらの、ニュースを信じるかどうかで真実性よりも政治的信念との一致を優先する傾向は、政治的信念だけでなく学歴や推論能力を超えてまたがっていました。シュワルベ氏は、「私たちは人々が真実よりも政治的整合性に影響される効果を発見しました。どちらの政治的立場でも、また推論テストでいい点を取った人でもその傾向が見られました。このような傾向が広く見られることには、少し驚きました。人々は『不都合な真実』に対して強い抵抗を示していたのです」と述べています。

論文の共著者で、スタンフォード大学の心理学教授を務めるジェフリー・コーエン氏は、「誰もが、問題があるのは相手の方だと考えています。人々は、『私じゃない!』と言うのです。しかし、多くの社会心理学研究がそうであるように、実はこの問題は政党や教育水準の上下を問わず、かなり広くまん延していることがわかりました。問題は誤った情報だけではなく、私たち自身の心のフィルターにあるのです」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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