宝くじに投じられるマネーは本・映画・ゲーム・スポーツへの合計金額よりも多いと判明、一体誰がどうして大量に買っているのか?
日本では10億円が宝くじの当選金として最高額ですが、世界にはこれをはるかに上回る大金をゲットできる宝くじがあり、庶民だけでなく大金持ちをも熱狂させています。しかし、宝くじで一獲千金を得る人という「光」の部分だけでなく、宝くじにまつわるお金と、大金を投じている人をつぶさに観察すると、宝くじ制度にひそむ「影」の部分が浮き彫りになってきます。
Lotteries: America's $70 Billion Shame - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/business/archive/2015/05/lotteries-americas-70-billion-shame/392870/
2014年にアメリカ国内で宝くじに投じられた金額は705億ドル(約8兆円)。これはアメリカ人の大人全員が300ドル(約3万4000円)、子ども全員が230ドル(約2万6000円)を費やした計算になるそうで、なんとスポーツ観戦チケット、書籍、ゲーム、映画、音楽に投じられた金額をすべて合わせたよりも高額という、にわかに信じられない巨額となっています。つまり、宝くじは他の何ものにも勝る一大エンターテインメント産業となっていると言っても過言ではないようです。
宝くじへの支出具合は州によって大きく違います。最も宝くじにお金を使わなかったのはノースダコタ州で、住民一人あたりの宝くじへの支出は年間で36ドル(約4100円)。これに対して最も宝くじにお金を投じたロードアイランド州では住民一人あたり約800ドル(約9万1000円)。これに、サウスダコタ州、マサチューセッツ州、ウェストバージニア州、デラウェア州が続きます。
想像以上のお金が動く宝くじ事業ですが、アメリカでは6万円以上の当選金には約45%の税金がかけられており、宝くじ収益の約40%が学校などの教育事業に還元されているとのこと。宝くじに当たった人も外れた人もお金を分担しているという構図で、宝くじ事業で得られた収益は教育用途として使われるため、一見して慈善活動として機能していることから宝くじ事業には正当性がありそうです。
しかし、(PDFファイル)デューク大学が1980年代に行った大規模調査によると、貧しい地域であるほど宝くじが積極的に買われているということが判明。また、NC Policy Watchの調査では、最も貧しい地域に住む人のほとんどが宝くじを購入しているという事実が明らかになるなど、宝くじは貧しい人々によって大量に買われているという実態が明らかになっています。
1986年にカリフォルニア州で行われた調査では、宝くじの購入動機が「娯楽のため」という人と「お金(一獲千金)のため」という人に真っ二つに分かれたとのこと。しかし、所得が3万ドル(約340万円)未満の人に限定すれば大半の人がお金を目的として購入している事が分かっています。
また、Garrick Blalock氏らが書いた論文「(PDFファイル)Hitting the Jackpot or Hitting the Skids.」では、貧困層の多さが宝くじ売上げに比例するのに対して、映画館の売上げは貧困層の多さにまったく比例していないという事実から、宝くじを単なる安価な娯楽と位置づけることはできないという指摘がされています。
宝くじに大金を投じる人は貧困からの脱出を夢見る貧しい人が多いという実態とともに、そのような貧困な人は選挙で一票を投じていないという事実も分かっているとのこと。宝くじ事業の収益をどうするかという政策決定プロセスに、「宝くじを最も買っている人」の意見が反映されていないという現実と、貧困を脱するために宝くじに頼らざるを得ない人たちが多いことから、宝くじの収益が教育事業に還元されてはいるものの実を結んでいない実態が、間接的に伝わってくるという皮肉な構図が見えてきます。
By Sara
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