ハードウェア

3Dプリンターで視覚障害者向けの触覚地図を持ち運び可能なノートサイズで出力するプロジェクト


3Dプリンターは、建築料理、果てはリアルすぎる等身大フィギュアなどの作成にも活用されていますが、点字や凹凸を印刷することで視覚障害者向けの「触地図」を作る手段としても研究が進められています。

How 3D-Printed Maps Are Helping the Blind and Visually Impaired - CityLab
http://www.citylab.com/tech/2016/02/3d-printing-gives-maps-a-high-tech-boost-for-the-visually-impaired-blind/471231/

The Potential of 3-D-Printed Maps to Help the Blind - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/technology/archive/2016/03/3-d-printed-maps/471738/

アメリカ・ニュージャージー州ニューブランズウィックには、Joseph Kohn Training Centerという、盲目の人や視覚障害者向けに職業スキルを教えている州立施設があります。施設内の地図は、高さ2フィート×幅3フィート(約60cm×90cm)もある巨大な古い木製のもので、教室や階段といった設備を手彫りの点字と木片で表しています。しかし、地図は壁に掛けられていて持ち運ぶことができないため、生徒たちは3階建ての建物の内部構造をすべて覚えておく必要がありました。

そこで、ニュージャージー州にあるラトガーズ大学で機械エンジニアリングを研究しているHowon Lee氏と学生のJason Kim氏が、共同で3Dプリンターを使った地図の開発を2015年夏からスタートしています。Lee氏とKim氏は、大学の3Dプリンターとモデリング用ソフトを使い、視覚障害者用の触地図データを作成。Joseph Kohn Training Centerの古い木製の地図は、建物3階分の地図が1枚にまとめられていましたが、新しく作成された地図ではすべての階が別々のパーツに分かれています。さらに、地図の大きさはノートサイズと小型のため、バインダーにまとめて保存でき、持ち運ぶ事も可能です。

以下の写真に写っているのがLee氏とKim氏で、実際に3Dプリンターで出力したミニサイズの触地図を持っています。


2人が作成した触地図には、Joseph Kohn Training Centerの建物のすべての設備が載っていて、部屋の種類ごとに異なる記号が使われています。例えば男性用トイレは丸印、女性用トイレは三角形、エレベーターは四角、階段は横線、というような感じで、視覚障害者が地図に触れることでどの場所にどんな施設があるのかを認識できるようになっています。


視覚障害者向けの触地図は1880年代から存在しており、建築家や科学者が改良を行ってきましたが、ほとんどの地図は1枚の大きな紙にエンボス印刷で凹凸をつけたものでした。Lee氏によれば、3Dプリンター製地図の強みは携帯性、作成速度、耐久性とのことで、「最大の強みは、使う人に応じて地図の内容を変更できるという点です。地図上に必要な情報を載せて3Dモデルを作成し、3Dプリンターにデータを送れば、手のひらサイズの地図を出力してどこでも持ち運べるのです」と語ります。以下の触地図は、点字による情報を増やしたバージョン。


Lee氏とKim氏は、3Dプリント地図を低コストで作成できる方法を模索中で、Joseph Kohn Training Centerの学生全員に触地図を配布できるくらいコストダウンすることが目標だそうです。さらに長期的な目標として、「街全体の地図を作ること」を掲げているとのこと。Lee氏は「3Dプリンターで街全体の地図を作れるようになれば、工事などで街の様子が変わったとしても、デジタルデータを修正することで、地図を常に最新の状態に保つことができます」とコメントしています。

視覚障害を持つ人は世界中におよそ2億8500万人ほどいると概算されていて、3Dプリンターで手軽に地図を作ることができれば、生活の助けになると見られています。なお、日本では国土交通省が3Dプリンターを使った立体地図の技術開発を行っています。

触地図サイト
http://cyberjapandata.gsi.go.jp/tactilemap/

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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