メモ

これまで秘密主義だった世界有数の音響メーカー「BOSE」を支える2人の人物とは?

By MIKI Yoshihito

BOSE(ボーズ)」はアメリカに本社を置くスピーカー・ヘッドホンなどの音響機器メーカーです。創業者はマサチューセッツ工科大学(MIT)のアマー・G・ボーズ教授なのですが、彼の死後BOSEのCEOという重責を担うこととなったボブ・マレスカCEOが、これまで秘密主義を貫いてきたBOSEとボーズ教授についてニュースメディアのCNETに語っています。

Bose's new beat - CNET
http://www.cnet.com/news/bose-new-beat-ceo-maresca-profile/


BOSEのボブ・マレスカCEOは、代表就任時にBOSEの「技術革新および製品の品質」にこだわるという会社のDNAに、新しい方針を加えることで会社を次のレベルに進化させようとしてきました。そんなマレスカ氏がCEOに就任する少し前、彼には直属の上司兼指導者となる創業者アマー・G・ボーズ教授がいました。ボーズ教授は2013年に83歳でこの世を去ることとなるのですが、その間際、マレスカ氏はボーズ教授の病室で彼と話をしていたそうです。

ボーズ教授は入院していたこともあり、当時マレスカ氏が率いていたチームの開発したSoundLink Mini Bluetooth speakerBose QuietComfort 20 Acoustic Noise Cancelling headphonesといった製品について詳しく知らなかったそうですが、これらの製品についてマレスカ氏が熱心に解説すると、ボーズ教授はこれらの製品を直接見てみたいと言ったそうです。ボーズ教授がどれくらい真剣に「見たい」と言っているのかわからなかったそうですが、マレスカ氏は「午前6時にデモをみせる」と約束します。

その翌日、マルスカ氏は2つの製品を持参し、iPhoneでボーズ氏が好きな曲を再生して実際に使用してもらったそう。最初にノイズキャンセリングイヤホンのQC20を使用してもらったところ、「ボーズさんはノイズキャンセリング技術はここまできたのかと圧倒され、満面の笑みを浮かべていました」とマレスカ氏。その後、ポケットに入れていたワイヤレススピーカーを取り出し、ベッドの脇に置いてYo-Yo Maを流したそう。当時を振り返りながらマレスカ氏は「私はボーズさんが本当に音楽を楽しんで満たされた様子だったことを覚えています。彼はとても幸福で、自身の設立した会社を誇りに思っており、だからこそ我々は彼が喜ぶような製品を作り上げることができたのです」とコメント。なお、マレスカ氏が病室を訪れた数時間後にボーズ氏は息を引き取ったそうです。


2013年7月12日、BOSEの創業者であるボーズ教授は、自身の作り上げた企業をマレスカ氏に託して亡くなりました。世界有数の音響メーカーを託されたマレスカ氏ですが、彼はシリコンバレーの実業家ではなく、ボーズ氏と同じMITの卒業生です。その出自の違いからか、マレスカ氏は他のシリコンバレーのテクノロジー企業とは異なるアプローチをとります。

マレスカ氏は初め、CEOという職に就くことを望んでおらず、自分はCEOやその他役員といった職位に適していないと主張していました。2005年にはCEO職に就くことを固辞しており、「私は明らかに企業の代表といったポジションには向いていない人間です」と語るように、CEOとなった現在もその役職は嫌々引き受けている状態だそうです。


それにも関わらずマレスカ氏はBOSEのCEOに就任したわけですが、その理由について「ボーズ教授に大きな借りがありました。また、私は彼のことを非常に尊敬しているので、彼のためならばなんでもやろうという気持ちがあったのです。私はいつか研究職に戻ることを望んでいますが、そのプランは今のところ実現しそうもありません」と語っています。

以下のムービーはBOSEのトップシークレットであるテストラボの内部を映した貴重な映像。


ボーズ教授は長年MITで働いていたことで有名ですが、彼は死ぬ2年前に、自身の持つBOSEの株式をMITに寄付しました。このことについてBOSEからのコメントは一切なく、MITからは簡易なプレスリリースが出されただけでした。寄付された株式は議決権のないものだったそうですが、MITは毎年BOSEから非常に多く配当金を受け取っています。MITはこの配当を「MITの教育と研究ミッションを維持・前進」させるために使用しているとのことですが、具体的な配当金額までは不明です。なお、MITはこれらの株式を販売することはできず、議決権がないので経営に関する口出しも行えないようになっています。

ボーズ教授は自身が株式をMITに寄付した事実を公表することを嫌い、BOSEからは一切情報が公開されませんでした。しかし、CEOに就任したマレスカ氏はそういったBOSEの秘密主義的なスタンスは間違っていると考え、ボーズ教授がなくなる直前から企業内部に新しい変化を持ち込むようになったそうで、教授の死後BOSEの変化はより大きくなっていきます。

現在のBOSEのラインナップを見るとわかるように、ボーズはヘッドホンやスーピーカーでBluetoothやWi-Fiを駆使した端末を多く取り扱っています。これらの製品は決して安くはありませんが、マレスカ氏がCEOになる前までよりもお手頃な価格で購入できるものが増えており、こういった変化について「私はBOSEがかつての姿よりも大きく変化できると考えています」とマレスカ氏。


BOSEのこれまでの軌跡は常に順風満帆であったというわけではありません。1971年にはコンシューマー・レポートがBOSEの901スピーカーに関する調査報告書を公開したのですが、その内容が製品の評判をおとしめるものであるとして、BOSEは訴訟を起こします。BOSEの901は、特許も取得した壁や床から跳ね返ってきた音と見事なコンビネーションを生みだす9つの小さなドライバーが組み込まれたスピーカーで、それまでのスピーカーとは全く異なる「生演奏の臨場感を再現するような」異次元の音を放つスピーカーでした。

BOSEはこの901に対するコンシューマー・レポートの評価が誹謗中傷であるとして訴えを起こしたのですが、結局は裁判は最高裁までもつれ、コンシューマー・レポートが調査においてミスを犯したかどうかではなく、悪意を持って評価を下したかどうかが論点となりました。なお、裁判は1984年に最高裁判所がBOSEの訴えを認める形で決着しています。

製品をおとしめるようなレビューと裁判により、901スピーカーの未来は閉ざされてしまったのかと思いきや、2016年現在も901スピーカーは6度のモデルチェンジを繰り返しながらBOSEのラインナップとして残り続けており、今では年間35億ドル(約4000億円)の売上を記録する主力製品に成長しています。

By Jesús Rodriguez

裁判沙汰の影響から、BOSEは熱狂的なオーディオオタクやベテランのオーディオレビュワーなどから敬遠されるようになっていった模様。しかし、近年はオーディオが主観的な経験であることを十分理解して製品調査などに過剰に反応するようなこともなくなっている、とマレスカ氏。

なお、ボーズ教授が最期に楽しんだというBluetooth対応小型スピーカー「SoundLink Mini Bluetooth speaker」はGIGAZINEでもレビューしています。詳細は以下から。

BOSEのBluetooth対応小型スピーカー「SoundLink Mini Bluetooth speaker」を使ってみました - GIGAZINE

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
宙にフワフワ浮かぶBluetoothスピーカー「Air Speaker」を一足先に使ってみた - GIGAZINE

4000円台で買えるCreativeのワイヤレス2.1chスピーカー「T3150」レビュー - GIGAZINE

サウンドへのこだわりや便利な機能を詰め込んだ「Sound Blaster Roar」フォトレビュー - GIGAZINE

手のひらサイズで音楽を楽しめるワイヤレススピーカー「Creative Woof」 - GIGAZINE

BOSEが音楽ストリーミング配信サービス開始に向け人材を募集 - GIGAZINE

in メモ, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.