仮想通貨Bitcoinの利用者と非利用者は「仕組みをよく分かっていない」という点で共通していることが判明

By Jonathan Waller

仮想通貨「Bitcoin(ビットコイン)」は、P2Pによって運営され、全取引の履歴をBlockchain(ブロックチェーン)に記録することで信頼性を担保する仕組みで、デジタル世界の新しい通貨としてユーザーが増えています。しかし、Bitcoinについて利用者・非利用者ともに、あまり仕組みを理解していないことが調査で判明し、この実態が仮想通貨の本格普及を妨げる大きな原因ではないかと議論されています。

SIGCHI Conference Proceedings Format - CHI16-Bitcoinstudy.pdf
(PDFファイル)http://www.winlab.rutgers.edu/~janne/CHI16-Bitcoinstudy.pdf

Bitcoin study reveals false beliefs on ease of use and privacy
http://phys.org/news/2016-01-bitcoin-reveals-false-beliefs-ease.html

アメリカのラトガース大学の研究者が、Bitcoinを使ったことがある10人と、Bitcoinを使ったことがない10人の合計20人のいずれも18歳以上の被験者に対して、電話やSkypeを通じて聞き取り調査を実施。Bitcoinに対する意識やデジタル通貨に対する知識などについて質問した結果を(PDFファイル)論文としてまとめました。なお、この論文は、アメリカで開催されるコンピューターと人との関わりに関する会議CHI2016で発表する目的で、研究されたものです。

この研究では、Bitcoinの根幹を支える仕組みのブロックチェーンシステムなど技術的な質問に対して、ビットコインを使ったことのない非ユーザーは仕組みをほとんど理解できていないことが分かりました。そして、多くの非ユーザーは、「Bitcoinは複雑すぎて、とても理解できないはずだ」と考えていることが分かったそうです。さらに、非ユーザーの多くはBitcoinを使うことは「怖い」と感じていたとのこと。

By scottks

しかし、調査結果では、Bitcoinを使ったことがある人もシステムを誤解していたり、まったく理解していない事が判明。さらに、Bitcoin利用者は、実際のセキュリティやプライバシー保護機能以上の能力をBitcoinは備えているという勘違いを基に、Bitcoinに対して「信頼」を寄せていることが分かったそうです。

面白いことに、Bitcoinのユーザーの多くは中央集権的な通貨発行権限者や、政府によるBitcoinへの規制には断固反対の意見を持っているにもかかわらず、政府による預金保護は必要だと考えているとのこと。

また、Bitcoinをなんだか恐ろしいものと考えて利用していない非ユーザーが考える「理想の決済手段」として要求される性質は、すべてBitcoinに備わっていることも判明。結局のところ、Bitcoinに対するスタンスは、利用経験がある人とない人でまったく異なるものですが、「Bitcoinについてあまりよく理解していない」という点では共通することが明らかになりました。

By Antana

今回の結果について研究者は、このような仮想通貨Bitcoinに対する理解不足は、Bitcoinが一般的に普及するのを困難にする障壁になっている可能性を示唆しています。Bitcoinを含む多くの仮想通貨が本格的に普及するには、何はさておき理解しやすい仕組みを提示することが必要なのかもしれません。なお、今回の論文の共同執筆者のJanne Lindqvist博士は、人々のBitcoinに対する知識や考え方がどう変化していくのかについて、引き続き調査していくそうです。