秘密裏に行われる核実験をどうやって検知しているか解説したムービー
By Nicolas Raymond
1996年9月に採択され、日本も1997年7月に批准している包括的核実験禁止条約(CTBT)では、宇宙空間・大気圏内・水中・地下を含むあらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止しています。条約の順守を検証するため、世界337カ所に「地震学的監視観測所」「放射性核種監視観測所」「水中音波監視観測所」「微気圧振動監視観測所」の4種類の監視観測所が設置されているのですが、これらの観測所が一体どのようにして核実験を検知できるのか、ということがイラスト付きで詳しく解説されています。
How To Detect A Secret Nuclear Test - YouTube
2015年2月の段階で、CTBTに署名済みで未批准の国は「アメリカ・中国・エジプト・イラン・イスラエル」の5カ国。未署名・未批准の国は「北朝鮮・インド・パキスタン」の3カ国です。
引き続き条約の発効に向け、全ての発効要件国による署名および批准が求められていますが、すでに世界中に24時間核実験を監視する「国際監視制度(IMS)」というシステムが張り巡らされています。
このムービーではIMSがどのように作動しているのか、という仕組みについて解説されています。もし世界のどこかで核爆発が起きると、膨大なエネルギーが放出されることになります。
放出されたエネルギーは音速で空中・水中・地中を移動するため、世界中にある観測所の観測データから、三角測量で核爆発の発生地点を割り出すことができるわけです。
ごく単純に説明すると、地上の観測所は地球上の嵐・氷河・火山の噴火・隕石の墜落・ロケットの発射・スペースシャトルの事故、および核爆発によって発生する全ての超低周波音を検知しています。
これらの中で、核爆発が発する超低周波は飛び抜けて大きいため、その他自然現象などと間違ってしまうことはないとのこと。
水中の爆発は「水中音波センサー」で検知することが可能。海洋底にものすごく感度の良いマイクが浮かんでいるようなものです。水中ではほかに検知される自然現象が少ないため、地上と同様に他の検出データと混同してしまうことはないとのこと。
地下で行われる核実験については、主に地震計の観測データで監視されています。地震計は大型地震・小規模地震・火山の噴火・採掘・飛行機の墜落事故などを検知していますが……
科学者は簡単にどのデータが核爆発なのか見分けることが可能です。例として、2006年・2009年・2013年に北朝鮮の地下で大きな衝撃が検知されていますが、いずれも核爆発だったと結論が下されています。
IMSは世界中の地震波・水中音波・微気圧振動を24時間監視しているほか……
世界80カ所に設置された放射性核種監視観測所が大気中の核活動を監視しています。
放射性核種監視観測所は、核実験が行われた決定的証拠となるデータを検出するだけでなく、放射性降下物が大気にのってどのように分散するかを可視化することが可能。2009年の北朝鮮核実験で、放射性降下物が日本に流れてきたことを示すデータも表示されています。
地下で秘密裏に行われる核実験は、ほかに比べて検知が難しいのですが、各種センサーが疑わしいデータを示した場合、IMSは現地に調査団を送ることも可能。ただし、いまだ条約が発効されていない状態のため、現段階では現地調査が違法の措置とされています。
このように、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)が設置したIMSは、すでに世界中で作動しており、今なおセンサー類の整備・改善が行われています。また、検知している自然現象データは科学発展のために提供されており、例えば津波を予知したり、監視したりできるそうです。「核兵器のない世界」を実現できる仕組みは整ってきており、発効要件国の署名・批准が望まれています。
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