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診断料・交通費・キャンセル料など一切ゼロで完全無料の障害HDD出張診断サービスを実際に体験してみた


復旧件数8年連続日本No.1の実績を持つデータ復旧のデジタルデータリカバリーが、新たにRAID・サーバー無料出張診断サービスを開始しました。トップエンジニアが北海道から沖縄まで全国どこへでも出張診断に行き、診断費用・キャンセル費用はもちろん、復旧作業を依頼しない場合でも交通費などを含めて一切の費用がかからないというサービスとのこと。どんなサービスなのかを知るべく、実際にGIGAZINE編集部にあるHDDが壊れたNASの出張診断を依頼してみました。

データ復旧実績No.1|国内最大の復旧センターはデジタルデータリカバリー
https://www.ino-inc.com/


◆無料出張診断体験レビュー

デジタルデータリカバリーのエンジニアがGIGAZINE編集部に到着。出張診断サービスは、基本的に技術者2名で訪問するスタイルとのこと。


さっそく壊れたテラステーション(NAS)を前に、故障内容を説明します。「現時点では中のデータが見られない状態。RAIDで冗長化対策はしていたはずだが、もはやRAID構成も不明な状況。肝心のNAS所有者も出張中でここにはいません」という、まったく参考にならなさそうな情報を伝えます。


「では」ということで、作業開始。


まずは電源をOFFに。


何やら銀色の箱を取り出して……


壊れたNASの隣に並べました。


背面はこんな感じ。NASよりは小さなサイズです。これはHDDを診断するための専用機器を持ち運び可能にしたもの。各種HDDのインターフェイスに適合したボードを組み替えることができるとのこと。


電源ケーブル、SATAケーブルなどの準備が完了。NASをパカリと開けて……


HDDを取り出します。ここまでで約5分。


ポストイットに数字を書いて……


取り出したHDDにペタリ。HDDを区別するためのナンバリング作業。


HDDを次々と取り出してナンバリングしていきます。


壊れたHDDを把握したり、RAID構成を確認したりするために区別は必要不可欠というわけです。


黙々と作業する二人。チームワークの良さが伝わってきます。


すべてのHDDの取り出し、ナンバリングが完了。


そのころ、もう一人のエンジニアはPCを起動して準備中。


そうこうしているうちに、ナンバー「1」のHDDにケーブルを接続して、診断作業スタート。


いきなり何をするのかと思いきや、HDDに耳をあててチェック。HDDが機械的に壊れている状態の「物理障害」かどうかは、まず音でチェックするとのこと。


音を確かめながら、データと照らし合わして何やら確認しています。エンジニア同士のやりとりは数字の伝達、確認が主で、端から見ている限り会話の内容はよく分かりません。


しかし、二人の間では「そうだね」と納得の様子。


音チェックを交代。失敗が許されない作業のため、二人でチェックし合うとのこと。


音をチェックしつつもデータを確認。


データといっても数字・アルファベットの羅列。何がどうなっているのかはさっぱりですが……


二人には何かが見えている模様。なお、「作業中に話しかけられても全然大丈夫ですよ」とのことだったので、何か作業をする度に素朴な疑問をぶつけては答えてもらいながらということで、作業に余分な時間がかかっているのは確実です。


1台、また1台とチェックがどんどん進んでいきます。


もちろん、全部のHDDで音のチェックが欠かせません。


途中、電卓ソフトで何やら計算。


数字と文字の羅列から、記号の羅列まで登場。これが何なのかさっぱり分かりませんが、エンジニアたちは「ふむふむ」とうなずいています。左側の数字・アルファベットにも、その右の意味不明な文字の羅列にも、それぞれ意味があるそうです。


そして、作業から20分経つか経たないかという時点で、結論が出た模様。


今回はHDD自体が機械的に故障する物理障害はなし。RAID構成自体が壊れているわけではなく、HDD内のシステムが破損しデータが見られない状態の「論理障害」もなしで、なんとデータは無事。NAS本体になにか異常があるのではないか(おそらく、NAS内のHDDと筐体の接続部分ではないか)という結論となりました。

◆いろいろ聞いてみた

デジタルデータリカバリーのエンジニア・本社エンジニアチーム総責任者太田高寛氏(左)、大阪支店論理障害復旧エンジニアの榎本琢磨氏(右)に聞いてみました。



GIGAZINE(以下、「G」):
作業が終わり診断結果が出ましたが、ここまでが出張診断の作業ですか?

太田高寛氏(以下、「太田」):
はい。今回はRAID構成にトラブルがあったわけではありませんが、もしもRAID障害の場合で、復旧をご希望ということであれば、再度、RAIDが構築できるような状態まで診断を進めて、直せるかどうかまで回答します。

榎本琢磨氏(以下、「榎本」):
今回のNASはRAID構成がデフォルト状態とは異なり、ディスクの1番と2番がRAID1というミラーリングの形をとり、3番と4番も同様にミラーリングされていて、この2つをRAID0にするという構成になっていました。そのため、全部のHDDをチェックさせていただきました。まずはこのような診断結果を、お客様にご説明させていただきます。そして、この内容を電話等で本部(東京本社)の担当者に伝え、その情報から本部で復旧作業の費用を算出してもらい、お客様に金額を伝えるという流れになります。

G:
本部からの電話で、金額や復旧に必要な期間が確定した情報として分かるのですが?

太田:
基本的にはそうなります。ただし、症状によってはどれくらいで復旧できるのかが直ちに判断できない場合もあります。物理障害の場合には、復旧自体ができるかどうかが定かでない場合もあるので、金額や復旧期間を100%全員のお客様にご提示できるわけではありません。その反対に、場合によっては、当日中に復旧作業が可能ということもあります。


・無料出張診断サービスの始まりについて

G:
この出張診断サービスですが、全国どこでも無料なのですよね?

太田:
はい。無料です。診断費用だけでなく、交通費なども一切いただいていません。

G:
北海道や沖縄でもですか?

太田:
はい。

G:
診断後、復旧を依頼しないのも……アリ?

太田:
はい。アリです。

G:
このような出張サービスは昔からあったのですか?

太田:
いいえ。2015年5月からスタートしたサービスです。

G:
どうしてこのようなサービスを始めたのですか?

太田:
端的に言うと需要があったからです。データセンターのような多くのサーバーを抱えていらっしゃる企業様や、公共機関のお客様、大手企業様などサーバーを外部に持ち出せないというお客様は多く、出張で症状を見に来て欲しいという要望が多かったのです。それまでは、弊社にHDDや機器一式を持ってきていただく必要があったので利用しづらいユーザー様もいたようです。

G:
こういう出張サービスというのは他社のデータ復旧サービスでも行われているのですか?

太田:
ありますし、増えてきていると思います。

・出張サービスエンジニアの技術レベルとは

G:
他社の出張サービスとの違いはありますか?何かデジタルデータリカバリーの特長などがあれば教えて下さい。

太田:
大きな特長として弊社の無料出張診断では、技術レベルの高いエンジニアのみがお伺いすることになっています。弊社のエンジニアは技術レベルごとに「S」から「E」まで、6ランクに分類されています。HDDの故障はHDDが機械的に壊れている状態の「物理障害」とHDD内のシステムが破損しデータが見られない状態の「論理障害」に分かれますが、物理障害、論理障害それぞれでランク分けがされています。弊社では、物理障害の復旧スキルはC以上(S、A、B、C)でかつ論理障害の復旧スキルがA以上(S、A)のエンジニアだけが、無料出張診断に伺うことができるという運用になっています。


G:
出張診断に行くエンジニアはトップレベルということですか?

太田:
はい。このようなランク条件のエンジニアは、ほんの一握りの、上位数%の技術者と考えていただければ結構です。

G:
ランクの違いはスキルの違いとのことですが、具体的に教えて下さい。

太田:
弊社ではお客様のHDDの復旧作業ができるのは物理、論理ともに「C」ランク以上のエンジニアに限られます。これは、Cランク以上であれば大半の復旧事例を取り扱えるということです。しかし、中にはデータ復旧にあたって高い能力・技術力が求められるケースもあり、その難題をクリアできる技量、幅の広さに応じてB、A、Sとさらに上位のランクをもうけています。

G:
特に難しい復旧技術を習得したエンジニアだけが出張診断に伺うということですが、その理由は何ですか?

太田:
まず、データ復旧を依頼されるお客様の機器内は、複数のHDDを仮想的に1つのボリュームに見せ運用する技術であるRAIDが組まれている場合がほとんどです。RAIDは特殊な技術であるため障害内容の特定が難しく、データ復旧業者であっても誤った判断を下すことが少なくありません。弊社にも誤った判断が下されて作業された結果、中の情報が書き換えられ完全な復旧ができないという状態のHDDが持ち込まれることも少なくありません。このような事態を防ぐために、弊社では論理障害のトップエンジニアが出張診断に伺っています。

また、RAID機器の復旧作業では、RAID構成を特定したり、どのHDDに障害が発生しているのかを突き止めたりという作業が必須ですが、中でも「障害が発生しているHDDのうち、どのHDDの復旧がより安全で最短で行えるのか」という判断を下すことが重要です。この判断は非常に難しく、例えばよく障害の例に出される「磁気ヘッド」に障害がある場合について言えば、物理障害に分類される磁気ヘッド自体の障害なのか、磁気ヘッドを制御するプログラムの問題なのかによって、復旧の方法は大きく異なります。

このような症状だけでなく障害まで特定して初期診断を行うには、最低でも当社の技術レベルCランクの物理障害に対する知識・技術力が必要となります。初期診断を誤ればHDDは絶対に復旧できないので、弊社では無料出張診断にトップエンジニアを伺わせているのです。


G:
論理復旧スキルはA以上必須ですが、物理復旧スキルはC以上と基準が若干緩いのは出張先で物理復旧することがないからですか?

太田:
原則、物理障害が発生している場合は自社ラボに持ち帰って復旧作業を行う為です。物理障害を復旧させようと思うとクリーンルームと呼ばれる特別な設備が必要であり、そのような整った環境がなければ弊社の技術も活かせないと考えています。ただ、中には今すぐデータが必要だからとその場で物理障害も復旧を希望するお客様もいらっしゃいます。そういった要望があれば、物理復旧スキルA以上のエンジニアも同行し、物理障害の復旧を行う事も可能です。もちろん、出張用物理復旧設備を導入・開発しておりますので、安心してご依頼頂けます。

G:
トップエンジニアが出張に出かけてしまうとなると、東京本社の作業はたいへんではないですか?

太田:
社内には私たち以外にも「トップエンジニア」と呼ばれる者が数名常駐しているため、問題ありません。更に、先ほどお話ししたとおり、大半の復旧作業はCランクのエンジニアでも可能です。弊社のCランクエンジニアは、他社ならばトップレベルエンジニアという場合もあるほど技術力が高いので、出張のために数名抜けても特段、問題はありません。

G:
ケースとしては少ない特別な問題に対応できるかどうかがSやAランクとCランクを分けるということですか?

太田:
そうなりますね。特に規模が大きいもの、RAID機器やサーバー機器の復旧ができることが基準にはなります。個人、法人を問わず、弊社にデータ復旧として持ち込まれたり送られたりするのは、ノートPC、デスクトップPC、外付けHDDなどの単体というのが絶対的な数としては多いので、それらに関しては、弊社のCランクのエンジニアであれば十分、対応できます。

G:
ランク取得試験のようなものがあるのですか?

太田:
あります。試験項目があり、物理障害にしろ論理障害にしろ、特定の技術に関して一定のレベルをクリアしないとランクは取得できません。

G:
ちなみに、お二人のランクはいかほどですか?

太田:
私は論理がSで物理がC。榎本が論理がAで物理がCです。

・出張ツール

G:
使っていた専用機器について詳しく教えて下さい。

榎本:
これはHDDを専用ソフトで解析するために接続する機械です。インターフェイスを交換することで、SATAだけでなく、SASやSCSIなどさまざまな種類のHDDに対応できます。診断にお伺いする前に、HDDのインターフェイスが何かを事前に確認した上で、セットアップをしてから訪問します。


太田:
もちろんご使用のインターフェイスが何なのか、お客様自身が分からないという場合もあるので、すべてのインターフェイスに対応できるように準備をしていき、現場で確認後、インターフェイスを組み替えるということもあります。


G:
この機械は何という名前なのですか?

太田:
名前ですか!?あまり考えたことがなかったですね。出張ツールとしか呼んでませんでしたが、確かに名前をつけてもよいかも(笑)


榎本:
これとは異なり、さらに大きな機器もあります。今回は、モバイル性の高い機器をお持ちしましたが、ディスプレイ一体型のより大きな機械もあります。

G:
ノートPCで使っていたソフトウェアも含まれたタイプということですか?

榎本:
はい。デスクトップPCのような機器になります。


G:
モバイル性の高いこの小さな機器との違いは何ですか?

榎本:
基本的な機能自体は同じですが、HDDを8台同時につなげられるなどの点が異なります。サーバーなどHDDの本数が多い機器の診断の場合はそちらを用います。


・HDDから聞こえる「音」

G:
診断作業を見ていて気になったのですが、HDDに耳をあてていましたね。音を聞いているとのことですが、あの作業は必ず行うのですか?

榎本:
はい。必ず行います。

G:
機械でのチェックの前にやるのは、人間の耳の方が優秀ということですか?

榎本:
ええ。感覚なのですが、何万件と症状を見てきていると、こういう音だとこういう症状というのは分かります。


G:
論理障害も聞き分けられますか?

榎本:
論理障害の場合は基本的にはHDDは正常なので分かりません。音で見抜けるのは物理障害ですね。

G:
物理障害の中にも音の違いはあるものですか?

榎本:
ええ、あります。

G:
具体的にどんな違いですか。音なので言葉では説明しにくいとは思うのですが。

榎本:
実は、音の違いの細かい内容は企業秘密という部分があります。おおざっぱに言うと、磁気ヘッドが壊れると「カチカチ」という音が鳴りますが、そのカチカチ音にも何十種類の違いがあり、それぞれ症状が異なります。もちろんHDD製造メーカーによっても特徴があり、音は違います。他のデータ復旧業者では、この物理障害の音での区別はできないことが多いと思います。

G:
この音の聞き分けは、訓練するのですか?

榎本:
します。復旧が完了しデータを取り出して待避させた後で、その故障したHDDの音を確認します。ブラインドテストのような形で、音から症状を予測するという訓練もします。そういう何百件という症状で音を聞いている中で、音から症状を推測できるようになってきます。また、復旧前に出された診断と、実際の障害との相違なども検証して、データとして蓄積しています。同じ型番でもHDDの中の構造が違うということもありますし、極端な話、製造している国によって音が違うということもあります。

G:
HDDも代替わりしますよね。そうすると、常に聞き分ける対象の音も変わってきますよね。

榎本:
変わってきますね。日々アップデートが必要です。

・診断では何を計算しているのか?

G:
診断中、関数電卓を使っていましたが、どういう計算をしているのですか。

太田:
目的はいくつかあるのですが、例えばRAID復旧の場合、復旧するために必要ないくつかの情報があります。その情報を調べるのに計算が必要なのです。


榎本:
やっている作業を具体的に説明すると、まず2進数で書かれたデータを16進数に書き換えます。これはデータをより見やすくするためです。もう少し具体的に言うと、数字を左から読むか右から読むかで別の値ということで内容がまったく変わるのですが、16進数にすると一方向になるというか、整うというイメージです。次に、16進数のままだと計算がしにくいということがあり、さらに10進数に直します。16進数を経て10進数にすることで比較的頭に入ってきやすくなるという利点があります。

変換した情報からHDDのデータを読み取るのですが、情報の中にはそれ自体で意味を持つものだけでなく、他の情報を指し示すものなどもあります。そのため、ある数値を足し合わせたりかけ合わせたりしないと正しい情報にならないなど、さまざまな場面で計算作業が必要となります。ただ、書かれている情報だけを見ても答えにはたどり着かなくて、かけたり足したりパズルのようなものなのです。

太田:
イメージしやすいように簡単なたとえで説明すると、「C」というある情報を取得したいけれど場所が分からないという状況で、「A」と「B」という情報がCのアドレス(場所)を指し示しているというのは分かっている場合、AとBの情報を元に、Cの場所を探し出して情報を取得するということがあります。


また、HDD内の「C」という情報が正しいかどうか確認したいというときで、Cは「A」と「B」の和であることが分かっているという状況もあります。このときには、AとBの情報を取得してその和を計算して、HDD内のCと同一のものかを確認する、ということもあり、計算するために電卓が必要になるというわけです。


G:
AやBやCという情報というのは、1台のHDD内で完結するものですか?

太田:
いいえ。情報は複数台のHDDにまたがる場合もあります。先ほど診断しているときにHDDを何度か差し替えていたのは、それぞれのHDDの情報を見るためです。

G:
電卓による計算作業は、ソフトウェアの中にプログラムとして含めることはできないのですか?

太田:
情報の場所が変わるのでできないですね。HDDが論理的な障害がまったくないという条件であればプログラムをあてはめることはできるのですが、どこが壊れているかというのは人間でしか分からないので、少しでも壊れていればプログラムはエラーを発して機能しなくなります。まったくもってイメージしづらいとは思うのですが(笑)


G:
何となくは分かりました、何となくですが(笑)

・出張診断サービスで見たトラブル事例

G:
出張サービスが始まってから、多くのトラブルを見てきたと思いますが、どのような症状が多いですか?何か傾向はありますか?

太田:
出張診断に関してということでは、物理障害と論理障害の割合は半々という感じですね。本社に持ち込まれるHDDの場合、7対3くらいの割合で物理障害が多いのですが、出張診断では同じくらいです。サーバーやRAID機器に関して言うと、ネットワークエンジニアの方が、間違えてデータを消してしまったという人為的なトラブルが目立っていて、論理障害のケースが増えているという事情があります。

G:
出張診断サービスということでも、他のデータ復旧サービスと競争だと思うのですが。ライバルとの違いというのは何かありますか?

太田:
さすがに他社の出張サービスを利用したことがないので正確には分かりません。ただ、以前、他社さんと出張サービスでニアミスしたことがありました。弊社のエンジニアが到着したときには他社のエンジニアが来ていたということがあったようです。

G:
ユーザーさんが、両方に出張依頼をしていたと。

太田:
そのようです。先に来ていた業者さんはすでに診断を終えていたので先に帰られて、それから弊社の診断というような状況でした。すれ違いのような状況だったようなので、具体的に何をやっていたのかまでは分からなかったのですが。

G:
ちなみにそのときの結果は?

太田:
弊社にご依頼をいただきました。症状自体は比較的軽微なものだったので、他社さんでも復旧できないものではなかったと思います。

G:
依頼者の決め手は何だったのでしょうか。

太田:
正確なことまではさすがに分かりませんが、そのときに他社が提示した金額が、同様の事例の市場価格からするととんでもなく安価だったことは依頼者の方から聞いています。確かに障害の内容からすると異常なくらい安価でした。おそらく、データ復旧を依頼される方は、さまざまな業者やサービスを調べられていると思います。当然、価格についても調べているはずで、それに照らし合わせれば安すぎて信頼できない、という事情があったのかもしれません。


G:
初期診断をしたあとで、そのまま復旧するというケースもあるのですよね。

太田:
あります。本来、弊社では故障したHDDのクローンを他のHDDで復元してから、そのクローンに対して復旧作業を行います。つまり、お客様のHDD自体には何か手を加えるというわけではありません。しかし、実際には一刻も早くデータを回収したいというお客様がいて、その場合はクローンをとらずに直接、HDDで作業をするということもあります。もちろん、お客様がリスクを承知でそれを望まれた場合に限りますが。

G:
どういう症状や条件だとその場での復旧が可能、もしくは不可能ですか?

太田:
まずはHDDが正常に機能するのが前提なので、その場で復旧できるのは論理障害に限られるのですが、例えばRAIDの構築情報が消えているだけで、データは書き換わっていない場合は、データからどういうRAID構成だったかを判断して、その場で復旧することは可能です。あとは、ファイルシステムが壊れている場合なども、その場での復旧が可能です。RAIDに関しては、複数台のHDDに同じファイルシステムの情報があるので、比較的復旧は簡単です。他のHDDをヒントに作り直すことは可能ですので。

反対に復旧が難しいケースとしては、RAIDでデータを消去した場合、パリティごと削除した場合は難しくなります。

G:
それは、人間の操作で消えるものですか?それとも偶然ですか?

太田:
偶然消えることはないですね。システムエンジニアの方が何かがおかしいと感じて、どのディスクが壊れているのか分からないまま、エラーランプがついているからとHDDを入れ替えてリビルド(再構築)作業をしている場合は難しくなります。リビルドによって構築されていたRAIDの情報が書き換わってしまうので。ただし、リビルドを途中でやめたとか、エラーで先に進まなかった場合などは、難度は高いですが復旧できる可能性は出てきます。

G:
出張診断に行って判断できる症状のうち、どれくらいがその場で復旧が可能でしょうか。

太田:
論理障害の場合で、だいたい7割くらいのケースではその場で復旧できるという感触を得ています。中には物理障害でもその場で直せるものもあります。例えば、不良セクタと呼ばれる読み込めない領域がある場合ですとか、磁気ヘッドが弱っているだけというケースです。他社では磁気ヘッドが壊れているのか、弱っているだけなのかの差を見極められないと思うのですが、弊社では少し弱くなってきて読み込めないだけという症状も判断できるので、弱っている磁気ヘッドを特定して読み込みをコントロールしクローンさえ取ることができれば、復旧は可能です。


G:
どの磁気ヘッドが弱っているのかはどうやって判断するのですか。

太田:
基本的には音ですね。

G:
やはり音なのですね。ところで、出張診断の結果「復旧不可能」という判断が出されるケースもあると思うのですが、どういう場合でしょうか。

太田:
一番多いのはバックアップデータから丸ごと上書きした場合ですね。誤操作でバックアップデータに戻ってしまっている場合は難しいですね。これは、ごく希な例で、物理障害などはその場では復旧できないですが「本社に持ち帰っても復旧できない」という診断を下すことは1%もないはずです。

・HDD故障率の動向やヘリウム封入HDDについて

G:
ちょっと脱線させてください。以前、取材させてもらったときに、HDDの型番別の故障率データをもらったのですが、故障が多い型の傾向は変わっていますか?

太田:
それほど変わっていないのではないでしょうか。
(ここで以前のデータを見る)
あ、けっこう違いますね。直近のデータが完全に頭に入っているというわけではないのですが、以前のデータを見る限り、変化しています。例えば、前回4位だった「ST2000DM001」などは、圧倒的に増えていますね。


G:
この何年かの間の経年劣化などで、故障するものが増えているということなのでしょうか。

太田:
そうかもしれません。

G:
最近、大容量HDDでヘリウム封入モデルが出ていますが、復旧のためにケースを開けるとヘリウムが飛散してしまい復旧できない、ということはありませんか?

太田:
実はヘリウム対応の手段はあります。まだデータ復旧で依頼された実例はありませんが、直す技術自体はすでにあります。まだ、極秘事項ですが、手段はあります。

・無料出張サービスの今後

G:
いやらしい話、この無料出張診断サービスを始めたことで、データ復旧依頼の成約率は上がりましたか?

太田:
実は、弊社に数あるお問い合わせの中で出張診断サービスのお問い合わせは1日にほんの数件です。ですから、正直なところ出張診断サービスによって成約率が上がるというレベルではありません。ただ、大きい企業様や官公庁様など、これまで社外にHDDや機器を持ち出せないため、復旧を依頼することができなかったというお客様からのお問い合わせは増えました。先ほども言いましたが、ユーザー目線で要望されたから、需要があったから始めたサービスですので。

G:
潜在的な需要はありそうですか。

太田:
そうですね。お問い合わせは着実に増えてきています。

G:
となると、増えていく需要に対応するためにはトップエンジニアをどんどん育成しなければなりませんね。

太田:
急務なのですが、トップエンジニアはほんとうに一握りで、そんなに簡単には育たないものですから……辛いところですね。出張診断の依頼の増加もありますが、新たに物理障害でもどうしてもその場で直して欲しいという声も挙がってきているということもあります。今後は出張での物理復旧を考えていかなければならないとも思います。


G:
現場でHDDを開けて物理障害を復旧すると言うことですか。

榎本:
はい。それはもちろんクリーンルーム環境下でということですね。すでにクリーンルーム環境を作り出す持ち運び可能な装置は開発されていて技術自体はあります。

G:
となると、物理障害へのスキルもさらに高いものが求められるのでは?

榎本:
そうなるでしょうね。そういう点ではトップエンジアがますます必要になります。


G:
最後にもう一度確認なのですが、出張診断サービスは無料なのですよね。

太田:
はい。無料です。他社の中には無料とうたいながら「交通費は別途必要」「診断後のキャンセル料が必要」など何らかの費用が必要なものがあるようです。けれど、それでは「無料」って何なのということで、ユーザーからすればだまされた気分になると思います。当初は出張エリアを限定するという考えもあったのですが、求められるからにはということで全国どこでも出張に応じる方針です。場合によっては海外出張もあるかもしれません。

G:
出張診断サービスを依頼されるのは主にどういうユーザーですか?

太田:
大きな企業様や官公庁様、大学などの研究機関が多いですね。

G:
個人の人も?

太田:
いらっしゃるのですが、リソースの問題ですべてのお客様に対応するのは難しいという状況です。エンジニアの技術力などサービス品質を保つ必要があるので。子どもの写真などのデータ復旧をしたいという気持ちはよく分かりますが、大がかりなシステムや法人様の業務に必要なデータ復旧のどちらを優先させなければならないかということを考えたときに、個人さまには弊社に機器をお送りいただいたり持ち込まれたりすることをお願いすることもあります。


榎本:
2015年10月から大阪にもラボを開設しましたので、東京近郊のお客様だけでなく関西圏のお客様にも持ち込みいただきやすくなりました。もちろん、大阪からも出張に伺いますので、関西以南のお客様の元へも迅速に伺う事が可能となりました。また、郵送で機器をお送りいただく場合でも、翌日には弊社にHDDが届くことがほとんどで、出張診断と弊社のオフィスでの診断は実質1日の違いしかないため、機器を持ち出せないなど出張診断でないといけない、というお客様を優先させていただいています。

G:
本日は、GIGAZINE編集部まで出張診断に来ていただきありがとうございました。

◆おまけ
取材後に、デジタルデータリカバリーからもらった最新版HDD故障率トップ10は以下の通りです。

1:Seagate「ST2000DM001」(3.5インチ)
2:Samsung「HN-M101MBB」(2.5インチ)
3:Seagate「ST31000528AS」(3.5インチ)
4:Seagate「ST3000DM001」(3.5インチ)
5:Seagate「ST1000DM003」(3.5インチ)
6:WesternDigital「WD20EARS」(3.5インチ)
7:WesternDigital「WD5000AAKS」(3.5インチ)
8:Seagate「ST2000DL001」(3.5インチ)
9:Seagate「ST9500325AS」(2.5インチ)
10:Seagate「ST31000524AS」(3.5インチ)

データ復旧実績No.1|国内最大の復旧センターはデジタルデータリカバリー
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