これがFacebookが動画再生回数を増やす「カラクリ」、コンテンツを他サイトから盗む構図を解説したムービー「How Facebook is Stealing Billions of Views」
今や世界で10億人以上が登録しているといわれるFacebookは、すでに1つの巨大なメディアフォーマットと言っても過言ではありません。Facebook上で再生されるコンテンツは多くの再生回数を上げて多くの広告収入をもたらしているわけですが、ここでFacebookはムービーをYouTubeから「盗む」ことで自分のコンテンツとして扱っているという構図が明らかになっています。数々のムービー作品をYouTubeで公開し、またいくつかの作品が「盗まれた」こともあると言う「In a Nutshell – Kurzgesagt」はそんな現状をムービーで解説しています。ナレーションは英語ですが、YouTubeで日本語字幕を表示することもできます。
How Facebook is Stealing Billions of Views - YouTube
Facebookはサイト上で動画が1日あたり8億回再生されていることを発表しました。
これはすごい数字ですが、実に1000回のうち725回はYouTubeから「盗まれた」ものであるといいます。
その通算再生回数は170億回にものぼります。
動画を「盗む」サイトやアグリゲーターは、YouTubeから動画を引っ張ってきて、Facebook上でバイラル的に拡散します。
その方法が特殊で、FacebookではYouTubeなどに投稿された動画を自社の動画再生フォーマットに乗せ替えることで、自社サイト内のコンテンツとして作り替える仕組みを持っています。
そうすることで、ユーザーがFacebook上で過ごす時間を少しでも長くすることができ、より多くの広告を見せることで広告収入を多くすることができるからなのです。
また、「再生回数」そのものにもカラクリが隠されています。Facebookでは、動画が3秒間再生されると1カウントされるようになっています。しかも、これは動画の音声がミュート状態にあってもカウントが行われるようになっています。
Facebookのページを上からスクロールすると、動画がミュートされた状態で再生されることがあります。実はこの時も「再生回数」としてカウントされるようになっているのです。
その結果、ユーザーのコンテンツへの「エンゲージメント率」には大きな違いが生じます。YouTubeに比べてFacebookで再生される動画は、再生時間が極端に短いという傾向がハッキリと現れています。これは、「再生」がユーザーの意図ではなく自動で行われているからこその結果です。
いわば「都合のよい数字」ではあるわけですが、Facebookはこの数字を持ち出すことで、大きな業績をあげているとして発表しているというわけです。
しかし、本当の問題と言えるのが、動画を自社のフォーマットに載せ替える「Freebooting」と呼ばれる行為です。
動画はFacebookのフォーマットに移し替えられることで、Facebookの拡散力の影響で元のサイトよりも多くの人にリーチすることになります。
その典型的な例がこちら。In a Nutshellが投稿し、Facebookが「盗んだ」ほうの動画は約315万回再生され、13万8000回シェアされたのですが……
盗まれる前のオリジナル投稿の再生数はわずか10万8000回程度で、シェア数も1000回レベルに留まっています。
さらに別の例がこちら。あるユーチューバーの動画は自分のFacebookページで1700万回の再生回数を得ていたのですが……
Facebookに「盗まれた」ほうの動画は、最終的に8600万回の再生回数を記録するに至っています。ここで問題になるのが、「広告料のゆくえ」で、「盗難」の最大の問題点はこの点に集約されるといえます。
この問題は、個人のクリエーターにとっては非常に悪い状況といえます。自分のコンテンツが盗まれることで、コンテンツの作者が誰であるかがわかりにくくなり……
再生で生じた利益までもが吸い取られてしまうという事態が発生するからなのです。
In a Nutshellの例を挙げるとこんな感じ。1本の動画を仕上げるまでには費用と時間、そして熱意が注ぎ込まれ、のべ100時間という作業の後に作品が完成します。
この作業は、動画に表示される広告からの収入によって成り立っているわけです。
また、Patreonの支援も不可欠なものです。
この仕組みによって、個人クリエーターにとって動画作成は「趣味」から「仕事」に変わってきました。
YouTubeはこの「盗難」に対して対策を講じているため、さほど大きな問題になっているとはいえない状況。
しかし、YouTubeでも著作権保護対応の存在ために、映画評論ユーチューバーやゲーマー系のユーチューバーが少なからず影響を受けている状況にはあります。
一方のFacebookでは、あたかも何も問題がないように見せかけてはいるのですが……
実際にはいくつかの問題を抱えています。例えば、現時点での著作権対策はこんな感じ。
1.メールやツイートで、ファンにあなたの動画が盗まれている違反を教えてもらう
自力でFacebookにある盗まれたコンテンツを探し出すのは事実上不可能です。
2.Facebookの規約の「著作権侵害規約」はFacebookではなくGoogleで検索する。なぜならそのほうが素早く欲しい情報にアクセスできる状態だから。
3.見る気が失せるほど長い規約に目を通す
4.実際に盗まれていた動画をFacebook上で確認する
5.最終的にFacebookが動画を削除し、盗難問題は解決する。
一件落着、のようですが、実際にはFacebookユーザーの99%はすでに動画を再生した後なので、問題は何ら解決していないといわざるを得ません。
動画を盗んだ側にも、ほとんど何のおとがめもありません。
これがFacebookにおける「クリエーターの戦い」の構図。まるで、広告から得られる収入は、ムービーという「コンテンツ」に支払われるのではなく、このような「長い戦いに挑んだ対価」であるかのように思えてくる状況です。
Facebookでもこの問題に対応する姿勢は示していますが、依然として削除に至るには数日の時間が必要で、その間に最も大事な時間が過ぎ去っていきます。
そして、盗まれたことで得られなかった広告収入は依然としてクリエーター側に分配されない仕組みとなっています。
このような状況では、Facebookをクリエーターの「パートナー」と捉えることなど到底できません。
Facebookは盗んだ動画を用いることで「盗品動画帝国」を築き上げ、クリエーターの存在を無視しています。
これは巨額の利益をあげている企業が取る行動とは言えないでしょう。
もっとも、Facebookでもすでに新しいマネタイゼーションの方法をテストしており、今後は広告収入を分配する何らかの変更が加えられる可能性はあります。
しかし現時点でこの恩恵を得ることができているのは、一部のメジャーなメディアのみで、たくさん存在している小さなクリエーターはほとんど無視されている状態といえます。
そこで、動画を見ているユーザーのみなさんにお願いしたいことがあります、とIn a Nutshellは提案。
Facebookで盗まれたコンテンツを見つけた時は、コメント欄でオリジナルのコンテンツへのリンクを示し、盗まれたコンテンツであることを指摘すると同時に、クリエーターに問題を通知してください。
また、今見ているこのムービーを広く拡散して、問題を広く知らせてください。
In a Nutshellは最後に、私たちが自由なインターネットに求めるものは、コンテンツに対する「クリエイティビティ」や「コミュニティ」の醸成、そして「素晴らしい作品」そのものであり、これは誰にとっても共通するものと言えるでしょう、としており、「Facebookには、私たちの『邪魔者』ではなく、『パートナー』になって欲しいと願っています」と指摘しています。
さらに詳細な情報については、下記のHank Green氏による解説を見ればいろいろなことが書かれているとのこと。また、In a NutshellのようなクリエーターをPatreon.comで金銭的に支援する事への理解を求めていました。
Theft, Lies, and Facebook Video — Medium
https://medium.com/@hankgreen/theft-lies-and-facebook-video-656b0ffed369
・つづき
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