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「コンテナ」はどのようにして世界を変えたのか?

By Phil Parker

衣類や電化製品などの大量生産品は「コンテナ」によって海を渡り世界中に運送されています。国外で生産されたものであれば、普段何気なく着ている服や食べ物はほとんどがコンテナ船で運ばれているのですが、輸送船を実際に見かける機会は多くないため、「なぜコンテナが使われているか」ということまではあまり考えないかもしれません。そんなコンテナによる物流の仕組みや、コンテナが世界中にどれほどの影響を与えた革命的アイデアだったのか、ということがまとめられています。

How Shipping Container Changed the World
http://nautil.us/issue/29/scaling/the-box-that-built-the-modern-world-rp

香港エクスプレスの輸送船は、ハンブルグ港のコンテナ・ターミナル「Altenwerder」に33時間停泊します。輸送船は船首から船尾までで1200フィート(約365メートル)あり、横幅は157フィート(約47メートル)もある巨大なもので、最大積載量はISO規格の仕様の「20フィートコンテナ」で1万3167個まで。Altenwerderの特注クレーンは毎時150個のコンテナの上げ下ろしが可能です。国際規格のコンテナで統一しているため、どんな船でも貨物をコンテナに詰めれば世界中のどの港へでも運送できるわけです。

By Ana Ulin

4月中旬にハンブルグ港を出発した香港エクスプレスの輸送船は、エルベ川を70マイル(約112km)下って北海に出ます。時速25マイル(時速約40km)でイギリス南部のサウサンプトン港に向かい、1カ月後にシンガポールに入港し、6月上旬には韓国・釜山に到着します。次に中国では上海・寧波(ニンポー)・深圳(シェンチェン)特別市の3カ所を周り、最後にシンガポールに戻ります。わずか2カ月足らずの間に、この輸送船は延べ1万2500マイル(約20116km)を移動し、世界中の11カ所の港に寄港。1年間にこのルートを4~5回辿ることで、年間140万トンの積み荷を運ぶことができます。この量はiPadに換算すると18億台相当です。

コンテナが登場したことで大量の貨物を配送できるようになり、今やあらゆる貨物が世界中に低コストで配送されています。コンテナは1つ1つがシステムで管理されていて、地点から地点への効率的な輸送ルートが算出されています。2014年では、世界中で合計5億6000万個の20フィートコンテナが運送され、総重量は15億トンにものぼりました。石油・鉄鋼・石炭などは特殊なかさ高貨物船で運ばれますが、それ以外の90%を占める衣類・車・コンピュータなどは全てコンテナで運送されているとのこと。

By www.GlynLowe.com

コンテナの輸送は、単に大型船で港から港へ運べばいいというものではなく、荷物を詰め込んだコンテナを輸送船の停泊している主要港まで運ぶトラック、主要港から各地の港まで輸送するフィーダー船、さらに港でコンテナの上げ下ろしを行うクレーンの運転士、税関検査官、コンテナの鉄道輸送があるなら鉄道関係者……と多くの人が関わるとても複雑なプロセスがあります。しかし、コンテナが持つ均一性により、作業はスムーズに行えるようになっています。

トラックや列車は国際規格のコンテナを輸送できるように設計されており、クレーンも同サイズのコンテナを素早く上げ下ろしできるように作られています。こうした積み重ねの結果、例えば中国の工場で作られた衣類がヨーロッパの顧客の手元に届くまでの時間は35日程度で、シャツ1枚あたりの輸送コストもわずか1セント(約1.2円)以下に抑えられています。

マサチューセッツ工科大学輸送物流センターのジェームズ・ライス次長は、この効率化された輸送を「コンテナ輸送に必要なのは船と寝台とコンテナを置く場所だけ」と表現。輸送費が抑えられることから「製造業者にとって『どこで何を生産するのか』が問題ではなくなるのです」と、コンテナが製造業のグローバル化を実現したことを語りました。

なお、世界で初めてコンテナで貨物が輸送されたのは1956年4月26日で、コンテナを発明したのはアメリカ人のマルコム・マクリーン氏。コンテナが登場すると同時期にさまざまな会社が独自規格のコンテナを導入し始めたため、異なる企業のコンテナをクレーンで積み込めない、といった問題が起きていたとのこと。コンテナの標準規格化を行ったのは連邦海事局で、1961年に10・20・30・40フィートコンテナを使用する船には連邦補助金を出されるようになりました。その数年後には国際標準化機構(ISO)がコンテナの設計を標準化したことで、対応するクレーンを導入すればどの港でも貨物の上げ下ろしが可能になったとのこと。

By Command Webmaster

マクリーン氏のアイデアにより、1980年中期までにはアジア・北アメリカ間の船積商品のコストは半分以下になり、今なお輸送コストの低下は継続しています。一見すると単なる箱である「コンテナ」が世界に与えた影響は計り知れないわけですが、ビル・ゲイツ氏も「2013年に読んだ記憶に残る7冊の本」の1冊に、マルコム・マクリーン氏やコンテナの未来について書かれた「コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった」を選出しており、ゲイツ氏は「私のコンテナに対する見方は完全に変わりました」と絶賛しています。

なお、コンテナ物語はAmazonでも販売中です。レビュー欄も5つ星の投稿が多く、「それまでの旧態依然とした港の慣習、物流の非効率さ、それに伴い港の周辺に固まらざるを得ない製造拠点、流通拠点。そうしたものを含めて、世界経済を一変させてしまったコンテナは、その影響力・経済効果を考えると、『(隠れた)20世紀最大の発明』と言っても過言ではないのかもしれない」「街中を走る『EVERGREEN』と書かれた緑色の海上コンテナがなんであるのか謎が解けて、これまた面白かった」などと評されています。

コンテナ物語―世界を変えたのは「箱」の発明だった | マルク・レビンソン, 村井 章子 | 本 | Amazon.co.jp

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in メモ, Posted by darkhorse_log