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Microsoft初のノートPC「Surface Book」のデザインと設計はこうやって開発された


Microsoftは、2015年10月6日に開催したWindows 10デバイス発表会で初のノートPC「Surface Book」を突如発表しました。Surfaceシリーズ初のノートPCでもある同端末は、画面を取り外してタブレットとして使用することも可能だったり特徴的なヒンジが目を引いたりと、「その中身がどうしても気になってしかたがなかった」ということでニュースメディアMashableの中の人が、Surface Bookの開発者に早速インタビューを行っています。

Inside the creation of the Microsoft Surface Book
http://mashable.com/2015/10/07/microsoft-surface-book-inside-story/

Microsoft初のノートPC「Surface Book」がどんな端末なのかは以下の記事を読めば分かります。MacBookなどの競合製品にあたる端末ですが、ただのノートPCではなく画面をキーボードから分離させて13.5インチタブレットとして使用することも可能な端末。「手書きよりもなめらかなのでは?」と思わせるスタイラスペンや、特殊なヒンジ機構、タブレットとキーボードの両方に搭載されたGPU、マグネシウム製の美しい筐体など見どころ盛りだくさんなノートPCです。

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Mashableがインタビューしたのは、MicrosoftのWindowsデバイス開発部門でリーダーを務めているPanos Panay氏とデザイン・チーフを務めるRalf Groene氏。Groene氏はSurface Bookの「ディスプレイをパタンと閉じてもキーボードとディスプレイが密着しない構造」を考案したデザイナーだそうです。


Panay氏は「誰かが私に『なぜSurface Bookはタブレットではないの?』と聞いてくるかもしれませんが、これは全くもってタブレットではありません。Surface Bookはクリップボードなんです。Surface Bookはこれまでの端末とは全く異なる使い方をされるでしょう」と、Surface Bookがこれまで世の中に存在してきたどの端末とも全く異なるものであることを強調しています。さらに、Surface Bookを使うユーザーは、使用時間の約8割をノートPCとして使うことになるだろうともコメントしており、タブレットではなくあくまでノートPCであるとしています。

Surface BookはタブレットにもノートPCにもなれる端末ですが、Microsoftは同端末について述べる際に「2in1」などの言葉を使ってタブレットとノートPCのハイブリッド端末であることを強調することはありません。その代わり、Panay氏はSurface Bookを「クリップボード」と呼んでいます。その理由についてPanay氏は、「クリップボードは何かを書いたり、読んだり、学んだりする際に使うものです。そのクリップボードをさらに生産的にしたいと思いませんか?」と、読み書きや勉強、何にでも使えるクリップボードを進化させた形がSurface Bookであると述べています。

デザイナーのRalf Groene氏(左)とPanos Panay氏(右)


Surface Bookの設計は、黄色いテープが貼られた黒いボール紙から始まった模様。Surface Bookの開発がスタートしたのは、Groene氏の「やぁPanos、本を作ろう」という突然の一言からだった、とPanay氏は明かしています。

ただの黒いボール紙ですが、ここからSurface Bookはスタートしました。


そんな気まぐれにも近い一言から2、3年が経過し、設計チームは黒色のモックアップを作り上げます。このモックアップを最終的なSurface Bookと比べると、「大まかなサイズ」と「ディスプレイを開閉可能である」という点以外はほとんど別物に仕上がっていることが分かるそうです。Panay氏は「私たちは『本を次の次元に進化させる』という共通のビジョンを持っていました」と語ります。

その後、Groene氏が「画面を取り外し可能にしよう」という突拍子もないアイデアをプロジェクトに持ち込み、Panay氏はこれに賛同。プロジェクトに参加しているエンジニアたちに対して、「これまでで最高のノートPCで、読み物をするのに最高のスクリーンで、ディスプレイを取り外したくなる、新しいカテゴリーを生み出そう。これが『Surface』で、私たちが作るべきものだ。さぁ、みんなで一緒に改革を起こそう」と語ったそうです。


チームはSurfaceシリーズのDNAを引き継いだノートPCの開発を目指していたわけですが、そこに立ちはだかったのは、従来のSurfaceと同じような画面とキーボードのつながりでは、画面をさまざまな角度に固定できないという問題。Groene氏のデザインチームはこの問題に半年も取り組んでいたそうで、その末にヒンジを取り付ける、という解決方法が飛び出します。

大量に並べられたSurface Bookのヒンジ部分の試作品。ヒンジはGroene氏お気に入りのデザインになっており、プロジェクト内では「キス」と呼ばれているそうです。


そして、ヒンジを取り付けてディスプレイをいろんな角度に固定できるようにするには、ディスプレイ部分をしっかり支えられるくらいにベースのキーボード部分が重くなる必要があります。しかし、実際にはディスプレイ部分とキーボード部分にはそれほど大きな重量差がないようで、重量はポンド(1ポンド約450g)ではなくオンス(1オンス約28g)で比較されます。


タブレットを単体で動作させるためにはどうしても上部のディスプレイ部分に多くの要素を詰め込む必要があります。しかし、ノートPC形態の際にディスプレイをしっかり固定する必要もあるので、プロジェクトは「どこに何を積むのか」で大苦戦した模様。そんな中、Surface Bookのハードウェア設計チームとWindows 10のソフトウェア開発チームの協力により生まれた構造が、「タブレット部分とキーボード部分にそれぞれ別のGPUを搭載する」というもの。

この構造についてPanay氏は「こういった構造はこれまで見られませんでした。このプロダクトはベースに1つ、そしてセカンドGPUがタブレット部分にも搭載されている初めての端末でしょう」と述べ、これこそがソフトウェア開発チームとハードウェア設計チームが密接に開発に携わることで生まれた構造であり、タブレットとキーボードの重量バランスを保つ要素のひとつであるとしています。

他にも、Surface Bookのディスプレイ分離システムや……


タブレットとキーボードをつなぐコネクタ部分についても語られています。


そんなこんなで完成したSurface Bookの試作品を時系列で並べまくるとこんな感じになります。

・おまけ
Surface Pro 4がバラバラに分解され、発熱問題のあったSurface Pro 3から液体冷却システムが改良されていることが明らかになっています。

Here's How The Improved Liquid Cooling System Works In The Surface Pro 4 - Microsoft News
http://microsoft-news.com/heres-how-the-liquid-cooling-system-works-in-the-surface-pro-4/

Surface Pro 3はCPUが長時間動作可能になるよう、液体冷却システムを実装していました。以下の写真がSurface Pro 3の液体冷却システムで、蹄鉄型の銅製ヒートパイプ内に液体を流し、CPU周辺の冷却を行っています。しかし、Surface Pro 3のシステムでは冷却が不十分で、端末の一部に熱が集中してしまうという問題が発生していました。


対して、Surface Bookと同時に新たに発表された「Surface Pro 4」では、液体冷却システムが改良されています。新たな液体冷却システムでは、CPU周辺の冷却パーツによって気化された冷却液がヒートパイプを通って端末中央下部に配置された大型の放熱プレートへと送られ、液化した後に再び冷却パーツへと移動して内部冷却のための循環が出来上がっているそうです。


放熱プレートが従来よりも多くの熱を分散することになるので、軽い作業であれば、冷却ファンを動作させる必要もなくなります。

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in ハードウェア,   デザイン, Posted by logu_ii

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