取材

スタジアムの野球観戦を最高に楽しむべく生の戦いから目を離さずに必要な情報をゲットできる「スマートグラスライブ観戦」とは?


プロ野球観戦で迫力やライブ感を楽しみたいならばスタジアムに足を運んで生で観るに限ります。しかし、球場では当然ながらテレビ中継のようなカウントや各選手などの情報表示はなく、解説や実況中継もなし。スマートフォンの1球速報もタイムラグがあり何よりも選手から目を離してスマホを確認する必要があるため、せっかくの生観戦の良さを半減させてしまいます。そんな、「生の戦いから1秒たりとも目を離すことなく必要な情報をゲットしたい!」というわがままな願いも、メガネタイプのウェアラブル端末を使えばすべて解決可能です。

MOVERIO BT-200AV/BT-200 | 製品情報 | エプソン
http://www.epson.jp/products/moverio/bt200/

日本ハムファイターズの本拠地の札幌ドームに到着。


秋の大型連休中の試合とあって大勢の観客で賑わっています。


「秋のファミリースペシャル2015」と銘打たれた、日本ハムファイターズVSソフトバンクホークスの23回戦。


すでにホークスのペナントレース優勝が決定しているにもかかわらず、クライマックスシリーズで戦う可能性があるということで消化試合という雰囲気はなし。スタンドはほぼ満員となっていました。


まもなくプレイボール……


というころ、内野スタンド席の一角に、なにやら報道陣の注目を集めるご一行。


みなさんメガネをかけています。


そして手には小型の端末。


これはエプソンのサングラスタイプのウェアラブル端末「MOVERIO BT200」。どこでも大画面で映像を再生できるスマートグラスです。


よく見ると、メガネonメガネの人も。


このMOVERIOを装着した団体は、日本ハムの試合を観戦するために台湾から北海道を訪れた旅行客。台湾人のスーパースター陽岱鋼(ようだいかん)選手を応援に来たというわけです。


みなさん陽選手のユニフォームを着ての応援。近年、北海道を訪れる台湾人や中国人旅行客が増加中で、陽選手を擁する日本ハムファイターズの試合を観戦するために札幌ドームを訪れる人も多いそうです。


そこで、外国人旅行客に野球を存分に楽しんでもらえるようにと、日本ハムとエプソンがコラボして、ウェアラブル端末を使った翻訳ライブ中継が試験的に行われたというわけです。


MOVERIOはシースルータイプのスマートグラスなので、リアルな試合の様子とコンテンツ映像を同時に楽しむことが可能。イヤホンの音声では北京語で実況中継が行われており、イニングの合間には北京語で翻訳・リメイクされた陽選手をメインとした映像コンテンツが上映されます。分かりにくい試合の情報を、リアルタイムに翻訳して表示させることで、海外旅行客でも試合をフルに楽しめるというわけです。


北京語によるリアルタイム翻訳を支えるのは、球場にいる4人のスタッフ。右の女性2人が同時通訳を担当し、左の女性2人は、ボールカウントや球速表示を手入力するとのこと。


今回のリアルタイム翻訳中継には、コンテンツ配信プラットフォーム「potaVee(ポタビ)」を活用。従来の映像配信では約5秒のタイムラグがあったところ、野球用の情報表示では更新される情報が少ないこともあり、音声エンコードに必要な時間である約0.5秒までタイムラグを短縮させることに成功したとのこと。このため、ライブ感を損なうことなく中継できるようになっています。


ということで、さっそくMOVERIOがどんなウェアラブル端末なのかをじっくり見せてもらいました。


MOVERIOはメガネタイプのウェアラブル端末で、重さは約88グラム。


レンズの中央に屈折率の異なる部分があります。


サイドからプロジェクターで投影した映像を……


レンズ正面で反射させることで、最大320インチ相当の画面を表示できます。エプソンはプロジェクター開発に一日の長があり、その技術がスマートグラスMOVERIOに活用されています。


ツルの部分は微調整可能。


MOVERIOにはイヤホンと……


小型の端末が付属しています。


プラスチックの端末表面をなぞったりタップしたりすることで、Androidプラットフォームで動作するMOVERIOを操作可能。


「メニュー」「ホーム」「戻る」は物理ボタンとなっています。


なお、リアルタイム翻訳中継用のMOVERIOは容量5000mAhのモバイルバッテリーで駆動していました。


プロジェクターはサイドに内蔵。


レンズはかなり厚め。エプソンの開発担当者は、さらに小型・軽量に進化させると話していました。


そうこうしているうちにスターティングメンバーの発表。札幌ドームは2015年から大型ディスプレイを左中間、右中間に2枚設置。向かって右側のディスプレイでスコアボード、ボールカウント、打順などを表示し、左側のディスプレイで個別の選手の情報や応援歌などを表示。一般的なスタジアムの2倍の情報量でゲームを楽しむことができます。


まずは先攻のソフトバンクホークス。


続いて後攻の日本ハムファイターズ。1番バッターは台湾からの観光客期待の陽選手でした。


午後2時、プレイボール。


MOVERIOではこんな風に、情報が表示されます。テレビ中継のような情報を表示させつつ、ライブの迫力を楽しめるので、外国人観光客ならずとも、日本人の野球ファンにも求められそうなシステムとなっていました。


食い入るように見入る女性。


もちろんお目当ては陽岱鋼。


この日は4打数3安打の猛打賞。


札幌ドームを大いに盛り上げてくれました。


初回に3点リードしたホークスに対し、1点ずつ追いかけるファイターズ。しかし、3回以降は互いにチャンスは作れどあと1点が遠い、緊迫した試合展開が続きます。


とうとうホークスの1点リードで9回の裏ファイターズの攻撃を迎えると……


ノーアウトランナー1塁の場面で、なんと6番レアード選手が逆転2ランを放ち、ファイターズの劇的なサヨナラ勝ちで試合は幕を閉じました。


今回の日本ハム&エプソンのコラボによるスマートグラスを使ったリアルタイム翻訳野球観戦は、15人という限られた人数の外国人観光客向けにリアルタイム翻訳で情報をVR表示するという試みです。しかし、実際にスマートグラスによる野球観戦をした観光客の反応は上々で、スタジアムのWi-Fi環境が整えば、技術的にはすべての観客がスマートグラスを装着して野球を観戦する、ということも可能とのこと。今後は、スポーツ観戦のツールとしてスマートグラスが活用される場面が増えてきそうです。

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in 取材,   モバイル,   ソフトウェア,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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