ヒットチャートではわからない「真のヒットソング」が音楽配信サービスの統計から浮き彫りに

By Jeff Blum

1900年代半ばにラジオやレコードが普及して以来、多くのヒットソングが人々の心を惹きつけてきました。時代ごとに「名曲」と呼ばれる楽曲が歴史に名を残してきたわけですが、それらの楽曲が実際にどの程度聞き続けられているのかを把握することは非常に困難なものでした。

しかし、ネットを使って音楽をストリーミング配信するサービスの登場により、その状況は変化しつつあります。2006年にサービスを開始した世界最大級のユーザー数をほこる音楽ストリーミングサービスのSpotifyの再生回数をもとにした統計をとると、「名曲」とはまた別の、本当に長く聴き続けられている「真のヒットソング」が別に存在していることが見えてきています。

THE MOST TIMELESS SONGS OF ALL-TIME
http://poly-graph.co/timeless/

さまざまなデータにもとづいて音楽の動向を分析しているPolygraphは、ヒットチャートでの動きとSpotifyでの再生回数をもとに真のヒットソングの動向を調査しています。

例えば、1996年にR&BユニットのBlackstreet(ブラックストリート)がリリースした楽曲「No Diggity」は、同年11月のビルボードホット100で1位をマークするなど、ヒットソングと呼ぶ実績のある曲となっています。曲タイトルの「No Diggity」は「その通りだ」や「もちろん」を意味するスラングで、ブラックストリートとDr. Dre(ドクター・ドレー)が共演して作られた曲です。

Blackstreet No Diggity - YouTube


Polygraphのページを開くと、ページ上部に以下のようなグラフが表示されます。これは、1990年代の10年間にリリースされた曲のうち、Spotifyでの再生回数が多いものを表したもので、横軸の右にあるほど再生回数が多い(=真のヒットソング)であることが示されています。


このグラフによると、1990年代の曲の中で最大のヒットソングはNirvana(ニルヴァーナ)の「Smells Like Teen Spirit」で、その実績は他を圧倒。No Diggityもトップ5あたりの位置にランクインしています。実際にページを訪れてマウスでクリックすると、それぞれの曲を少しだけ聴くことができるので、どんな曲が実際によく聴かれているのか参考になるかも。


再生回数ではブッチギリの1位を獲得したニルヴァーナの曲ですが、実はこの曲が登場した1991年当時にはビルボードチャートで6位という最上位を記録したにとどまっています。しかしそんな楽曲でも、その後のニルヴァーナの人気、さらにはリーダーだったボーカリスト、カート・コバーンの死などで伝説的ともいえる人気を保っていることで90年代の楽曲では再生回数トップをマークし、「真のヒットソング」と呼べる状況になっています。

なお、このデータはSpotifyのリストに含まれる楽曲をもとにしたデータに限定されており、ビートルズやテイラー・スイフトといった昨今の有名アーティストが含まれていない点には一部注意が必要とのこと。各アイコンをクリックすると実にさまざまな楽曲を聴くことができるようになっており、数々のオルタナティブロック・グランジ系アーティストのほか、ホイットニー・ヒューストンの名曲「I Will Always Love You」などの名前を見つけることもできます。


次のグラフでは、ラップ/ヒップホップのジャンルでのデータを検証しています。以下のグラフは1986年から1999年にかけてリリースされた曲のうち、こちらも同じくSpotifyでの再生回数をグラフにプロットしたもので、横軸がリリース時期、縦軸が再生回数を表しています。実際のグラフでは好きなアーティストで検索することも可能です。


上位を見ると、一番再生回数が多かったのがブラックストリートの「No Diggity」で、それに続くのがドクター・ドレーの「Still Dre」となっており、両方に関わっているドクター・ドレーの影響力の大きさを垣間見る結果となっていました。両者に続いてノトーリアス・B.I.G.ハウス・オブ・ペインなどがランクインしています。


Polygraphはこのグラフについて、「ラキムパブリック・エナミージェイ・Zといったビッグネームが入っていないのを嘆く声もあると思うが、これは一つのジャンルの中では常に新しいものが入り、古いものがどんどんと忘れ去れて行く事を意味している」と解説。一世代で輝かしい実績を挙げたアーティストであっても、後年にわたって人気を保つことは並大抵ではないという事実を語っています。

さらにリリース時期を10年ごとに区切って再生回数をランキングしたのがこのグラフ。2000年代最初の10年間では、Eminem(エミネム)やThe Killers(キラーズ)、Linkin Park(リンキンパーク)などの名前が並んでいます。


1990年代だと、やはりニルヴァーナがダントツのトップ。これにマライア・キャリーやグーグードールズ、オアシス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズなどの名前がランクイン。


80年代になると、さすがに懐かしい名前がめじろ押しになってきます。ジャーニーやマイケル・ジャクソン、サバイバー、トレイシー・チャップマンなど、当時のビッグネームが並んでいるほか、ボン・ジョヴィやU2といった現役アーティストも含まれているのが面白いところ。


70年代では、クイーンやフリートウッド・マック、ダイアー・ストレイツ、スティービー・ワンダーなどがランクイン。それにしても90年代ランキングに名前が挙がっているエアロスミスがこの70年代ランキングにも名前があるというのは驚きです。また、ダイアー・ストレイツも息の長い活動を続けるバンドですが、ランキングに入っている曲は1980年代のMTV黎明期に大ヒットした「Money For Nothing(マネー・フォー・ナッシング)」ではなく1978年にリリースされたマイナー調のもの悲しい楽曲「Sultans Of Swing(悲しきサルタン)」でした。


60年代の1位には、こちらも現役で活躍を続けるローリング・ストーンズの「Paint It Black(黒くぬれ!)」が入っており、これにヴァン・モリソンやマーヴィン・ゲイ、オーティス・レディング・CCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)など音楽の歴史に名を刻むビッグネームがめじろ押し。とはいえ、グラフを見ればわかるように、80年代以降の楽曲に比べると再生回数は大きく落ち込んでいます。これは、Spotifyのユーザー層や、今回サンプルした「1985年以降に生まれたユーザー」というユーザーの嗜好も多分に含まれていることが考えられます。また、60年代を語るときには欠かせないビートルズが含まれていないのは、Spotifyの楽曲リストに含まれていない事が大きな理由のはず。


50年代にまでさかのぼると、エルビス・プレスリーやジョニー・キャッシュ、チャック・ベリー・ビング・クロスビーなどのロックンロール、オールディーズ時代を彩った名前が並んでいます。


これらのチャートを比較すると、前の世代にヒットした「名曲」と呼ばれる楽曲が、必ずしも現代でも多く聴かれるわけではないとPolygraphでは分析しています。これはもちろんメインとなってSpotifyを利用するユーザーの年齢層や好みの傾向があるために一概に結論づけられるものではありませんが、一つの傾向として「ヒットソングを決定づけるのは、必ずしもヒットチャートで上位に入った曲には限らない」というポイントを挙げることはできそうです。

さらにPolygraphのサイト内では、年ごとのビルボードランキングとSpotifyでの再生回数をプロットしたグラフなどを見ることができます。以下のグラフではチャート順位が黒い丸の大きさで、そして横軸を右に行くほどSpotifyでの再生回数が多いことを示しているのですが、黒丸が大きいからといって必ずしもSpotifyで多く再生されているわけではない事が非常によくわかるグラフとなっています。


このほか、サイトでは再生回数が時間軸でどのように推移したのかをインタラクティブなグラフで見ることも可能になっています。必ずしも全ての楽曲が含まれていない事や、サンプリングの対象となるユーザー層にもある程度の偏りがみられることも念頭に置いておく必要はありますが、ヒット音楽の歴史における実態を見るうえで、現代の状況を正確に把握できる興味深いデータの一つということができそうです。

・関連記事
ユーザー自身よりもユーザーの好みな音楽を知るために音楽ストリーミングサービス「Spotify」が行っていることとは? - GIGAZINE

音楽ストリーミング「Spotify」はどうやって音楽業界に貢献しているのか? - GIGAZINE

なぜ音楽聴き放題サービスのアーティストへの支払いはこんなにも少額なのか? - GIGAZINE

一体オンラインで何曲売れば、アーティストは生活していくことができるのか?を表す図 - GIGAZINE

なぜ今頃Appleはビートルズの楽曲を配信開始することをこんなに大々的にアピールしたのか? - GIGAZINE

128

in ネットサービス,   動画, Posted by logx_tm