ハードウェア

アメリカ横断に挑戦したヒッチハイクロボットが速攻でぶっ壊されたことが判明

By hitchBOT Official

カナダの研究チームが作ったヒッチハイクロボットの「hitchBOT」がアメリカ大陸横断の旅を開始したところ、わずか2週間後に何者かによって破壊されてしまったことがわかりました。ネットでは壊されたHitchBOTの写真が広まっていますが、実際に危害を加えた人物は特定されていません。

Hitchhiking robot's cross-country trip in US ends in Philly
http://bigstory.ap.org/article/fc26378306a44d62bc9eb14b122f9b70/hitchhiking-robots-cross-country-trip-us-ends-philly

hitchBOTはカナダのライアソン大学およびトロント大学による研究チームが作成したロボット。青色と黄色の手足が付いた筒状の胴体を持ち、顔の部分にはLEDマトリクスが搭載されていくつかの表情を再現できるようになっています。体の中にはコンピューターが内蔵されており、人間と音声で会話することができるので、ドライブ中にコミュニケーションを取ることもできるそうです。

By hitchBOT Official

hitchBOTの旅は、こんな風に道路脇で車に乗せてくれる親切な人を探すところから始まりました。

By hitchBOT Official

hitchBOTを乗せてもいいというドライバーはこんな風にロボットをシートに乗せ……

By hitchBOT Official

しばらくの間、行けるところまでhitchBOTを乗せてあげるというわけです。なお、hitchBOTには電源用の太陽光パネルが搭載されていますが、このようにドライブ中にシガーソケットから電気をねだることもあるとのこと。

By hitchBOT Official

ちなみに、hitchBOTの設置風景はこんな感じ。車のシートに座ることを前提に設計されており、自分の足で立つことができないので、スタンドのような棒をお尻から伸ばすことで道路脇に座るように置かれます。

By hitchBOT Official

このhitchBOTはこれまでにカナダとドイツ、そしてオランダでヒッチハイクの旅を成功させていました。

ヒッチハイク・ロボ、3週間でカナダ横断に成功 « WIRED.jp


訪れた先では人々から歓迎されおり、数々の記念写真がhitchBOTのメッセージとともにアップされています。hitchBOTが開発された目的はロボット技術の研究というわけではなく、逆に人々がヒッチハイクを行うロボットに遭遇したときにどのような行動を取るのかを調査するためにあるとのこと。実は、研究対象はロボットではなく、人間のほうだったというわけです。

I have been embracing the rich and colourful culture of The Netherlands. Thankfully, I look good in orange! I would love to dance “Skotse trije” in these clogs, wooden shoe? Thank you Yvonne Kampherbeek for the photos from your home, and the Klompenmuseum 't Oale Ambacht!

@hitchbotが投稿した写真 -

なお、hitchBOTには自分でメッセージを書く機能は備わっていない様子。SNSなどに投稿されたメッセージは、研究チームのゴーストライターによるもののようです。

I'm heading off! I can't wait to make new friends, just like those at @aircanada! @fraukezeller @exogram and I thank you very much. || Abflug! Ein großes Dankeschön an meine Erfinder @fraukezeller und @exogram und an meine Freunde bei @aircanada. #hitchBOT

@hitchbotが投稿した写真 -

このように、各地の人々から歓迎されてきたhitchBOTでしたが、アメリカでの旅の途中で悲劇に襲われることになります。2015年7月17日にアメリカ東海岸のマサチューセッツ州をスタートし、西海岸のサンフランシスコを目指してアメリカ横断のたびに出たhitchBOTは、開始からおよそ2週間が過ぎた8月1日頃にペンシルバニア州フィラデルフィアに到達したところで何者かによって危害が加えられたとのこと。

hitchBOT | A robot exploring the world


サイトではhitchBOTからのメッセージとして「なんてことでしょう、僕の体が壊されました。でも僕は生きたまま家と友達のところに戻ります。いいロボットには悪いことが起こることもあるものですね!僕の旅は現時点では終わってしまいましたが、人類に対する僕の愛情が無くなることはありません。友達のみんなありがとう」という泣かせるメッセージが掲載されています。

Oh dear, my body was damaged, but I live on back home and with all my friends. I guess sometimes bad things happen to good robots! My trip must come to an end for now, but my love for humans will never fade. Thank you to all my friends.

さらに、Twitterなどではバラバラに破壊されたhitchBOTと思われる写真が広まっており、研究チームもこの画像を確認しているとのこと。

EXCLUSIVE PHOTO: evidence of vandalized hitchhiking robot in #philly. #hitchBOTinUSA trip is over.... pic.twitter.com/VAjvGQzF3u

— AndreaWBZ (@AndreaWBZ)

BFvsGFというユーザーがYouTubeにアップロードしたムービーでは、フィラデルフィア市街地に置かれていたhitchBOTの「最後の姿」が収められていました。ムービー後半にはhitchBOTを車に乗せて、あるベンチまで運ぶシーンが収められているのですが、hitchBOTのGPS信号はその場所を最後に途絶えてしまったそうです。

DRONE PRANK + NO WHEEL WHEELIE - YouTube


この事件に対し、アメリカ国内でも怒りの声が巻き起こっている様子。これまでの成功がうそのように一瞬で終わりを迎えてしまったhitchBOTの旅でしたが、研究チームの一員でhitchBOTの生みの親の1人でもあるFrauke Zeller氏は「hitchBOTの力になってくれた全ての人に感謝しています。とても素晴らしい経験でした」とコメントしています。

By hitchBOT Official

◆2015/08/06 14:40 追記1
事件後、YouTubeにhitchBOTが破壊されてしまう「最期の瞬間」とみられる衝撃の映像が公開されましたが、後にこの映像はフェイク(偽物)だったことが明らかになっています。

まず、街角の監視カメラが捉えた「最期の瞬間」として公開されたのがこのムービー。

The Hitchbot's Last Moments | FULL "Surveillance Footage" - YouTube


暗い夜道をこちらに向かって歩いてくる男性の姿。手前にあるベンチにhitchBOTが座らされている状態ですが、大きなゴミ箱に遮られてその姿は見えません。


その後、1度は現場を通り過ぎた男性でしたが、再び戻って来て殴る蹴るの攻撃を開始。なぜこの男性が突如暴行を始めたのか、画面からは全くその状況が理解できませんでした。


hitchBOTの両腕のようなパーツを投げ捨てて立ち去る男性。何も知らずにこの映像を見せられると思わず怒りすらおぼえてしまう内容になっていました。


しかし、このムービーは完全な作り物だったことが後に判明しています。

HITCHBOT PRANK ON THE NEWS!! - YouTube


「犯行」に及んでいた男性ですが……


なぜか監視カメラをのぞき込んでいます。


実はこの監視カメラは男性が仕込んでいたもので、hitchBOTと思われた腕の残骸も実はニセモノ。公開されたムービーはこの男性らの手によるものだったことが明らかになっています。


カメラに映っているのは、上の記事中にも登場していた動画ブロガー(vlogger)である「BFvsGF」の男性。ムービーでは「俺たちが力を合わせないといけない。誰がやったのかわからないが、俺たちは自分で調査を行う」と、今回の行動に出たことを語っています。


ホームセンターで買った材料にスプレーで色をつけ、hitchBOTの腕を再現する男性。


YouTubeムービーのコメント欄で男性は「俺たちがhitchBOTを最後に乗せたドライバーになっている。それは事実だが、事件がおこって以来マスコミが俺たちのところにやってきてそのことを詳しく聞いてくるようになった」とし、自分たちが犯人のように扱われているような状況におかれていることを匂わせています。その上で、「『試してやる』という方針に基づいて、マスコミにいたずらをしかけてやった」と行動に至った背景を語っています。

ムービーには「Don't Always Trust the News!(マスコミをいつも信じるな!)」とのメッセージ。その意図は完全に計り知れない部分はありますが、かなりマスコミに対してイライラが募っている様子だけは伺えます。


◆2015/08/06 14:40 追記2
事件のあと、「本当のフィラデルフィアはそんな場所じゃない」ということでhitchBOTの後継者を自分たちの手で作ろうという動きが始まっています。

The Hacktory » Next Steps
https://www.thehacktory.org/hitchbot-efforts/next-steps/

フィラデルフィアに拠点を置き、「ハック」と「工場(ファクトリー)」を連想させる名前の集団「The Hacktory(ハックトリー)」では、「フィリー(フィラデルフィアの略称)のスゴさ、才能の豊かさを知らせ、この悪評の悪夢を断ち切るため」にhitchBOT再現プロジェクトを開始。ロボットを作るための部品や知識、そしてプロジェクトを記録して公開する映像クリエーターなどを広く募ることで大きな動きを作り出そうとしています。


プロジェクトは現地時間の8月6日(木)18時から21時の間に市内中心部にあるドレクセル大学・ExCITEセンターで開催される予定。サイトでは「hitchBOTタイムライン」のページが開設されてこれまでのhitchBOTの歩みが紹介されています。また、今後のプロジェクトの進行具合が掲載されることになるのかもしれません。

The Hacktory » HitchBot Timeline

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
世界で初めてチケットを買って飛行機に乗ったロボット「Athena」 - GIGAZINE

トレーニングしていく程に表情豊かに成長し、遠隔操縦も可能な学習ロボット「Romo」レビュー - GIGAZINE

孫社長の夢だった感情認識ロボット初号機の「Pepper」に会って感じる技術の進歩 - GIGAZINE

Amazonが人間の代わりに働けるロボット開発のコンテストを開催、300万円の優勝賞金は誰の手に? - GIGAZINE

ついに人工知能搭載の「セックスドール」登場、さらにVRヘッドセットで理想の相手に触れる機能も - GIGAZINE

「考えるだけ」でロボットアームを自在に操る女性がステルス戦闘機F-35を飛ばすことにも成功 - GIGAZINE

in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.