インタビュー

13台のBMWをオシャカにしたクリストファー・マッカリー監督に「ミッション:インポッシブル 5」についてインタビュー


2015年8月7日(日)から公開される「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」のため来日したクリストファー・マッカリー監督にインタビューを行い、オール・ユー・ニード・イズ・キルに続いて5回目のコラボとなるトム・クルーズとの映画作りについてや、スタント無しで行ったド迫力のカーアクションのことなどを語ってもらいました。

『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』公式サイト
http://www.missionimpossiblejp.jp/

GIGAZINE(以下、G):
本日はよろしくお願いします。

クリストファー・マッカリー監督(以下、マッカリー):
僕もGH4持ってるよ、いいカメラだよね。(机の上に置いていたGH4を見て)

G:
ありがとうございます。さっそく質問に移りたいと思います。ミッション:インポッシブルシリーズは今回で5作目になりますが、続編を作るにあたって難しいのはどんなところですか?

マッカリー:
一番難しいのは前作よりも優れた作品を作ることだね。ミッション:インポッシブルシリーズはこれまで巨匠と呼ばれる名監督たちが作ってきた作品で、それぞれ個性的に仕上がっている。そんな作品のシリーズとして、同じ棚に並ぶのにふさわしい作品を作り上げるということが、続編を作る上での最大の挑戦だね。


G:
モロッコにあるデータセンターに侵入するシーンでは、侵入不可能なところに侵入するというミッション:インポッシブルらしいシーンになっていたと思いました。水中から「デジタル金庫」を破るというシーンは、侵入方法を先に考えたのか、データセンターという施設を先に考えたのか、どちらでしょうか?

マッカリー:
発想の順番はシーンによって毎回違うんだけど、データセンターのシーンで言えば、私たちのプロダクションデザイナーが「デジタル金庫」のセットを思いついて、僕らにプレゼンして決まったんだ。それからイーサンがどうやって侵入するかを考えたんだけど、「水中のシーンにしたいね」というのが最初からあった。それでイーサンが水中を潜ってディスクを取り戻すっていうシーンをカット無しの長いワンシーンにしようと思って、まずプレビズ(アニマティック)っていうアニメーションでカットなしのシークエンスを作ってみたんだ。

だけどアニメーションを見た時に、データセンターに侵入するイーサンだけが危険な目に遭っているという気がしたんだ。そこでベンジーとイルサをシーンに加えるべきだと気付いたから、カット無しの水中ロングシーンというアイデアは犠牲になったんだ。そのためカット無しで水中シーンを撮ることで出そうとしていた「水中で溺れてしまう」という臨場感を効果的に出せないんじゃないか、という心配があったのも事実だよ。今回の作品が完成したのはプレミア公開の5日前というほど切迫したスケジュールだったから、実を言うと僕とトムは観客といっしょにプレミアを見るまで、完成版のこのシーンを見ていなかったんだ。

だから僕らはプレミアで観客の生の反応を見て、「うまくいった」って初めてわかった。この映画を作る時、最初にトムに言われたのは「映画作りのプレッシャーを観客も一緒になって感じられる映画が作りたい」ということだった。僕らのチームが感じたプレッシャー・現場の混沌・ユーモアを含めて現場で生まれたリアルな雰囲気が、そのまま体感できる映画になっているよ。


G:
本作ではトム・クルーズ本人が数々のアクションをスタントなしでこなしていました。監督から見て本人を使うのは危険過ぎるためトムを外す必要がある、でもトムはやりたい、ということはありましたか?そんな時はトムをどうやって説得しますか?

マッカリー:
トムを説得することはできない。アクションシーンでは安全装置や準備などを万全にして安全面を確保している。その上でスタントを使っても、誰を使っても不可能なシーンであれば仕方ないが、「スタントを使えばできる」というシーンなら、トムは自分から名乗るからね。トムが「やる」といったけどやらなかったシーンで言えば、被写体が速すぎてカメラが近づけなくて「トムがやっているかどうかわからない」というような機材側の問題が生じたシーンでは、アイデアを放棄したことがあった。トムがやっていてもスタントマンがやっても同じに見えるシーンであれば、無理して危険を冒す必要はないよ。

G:
トムが自ら運転したモロッコでのカーアクションシーンでは、何度か横転しかけるほど危険な撮影だったと聞きました。ぶっちゃけると、何台のBMWをオシャカにしましたか?

マッカリー:
確か13台だったと思うよ。さらにBMWのバイクは25台オシャカにしちゃったね。(指でクビを切られるジェスチャーをしながら)

G:
それは予想より多かったですか?

マッカリー:
映画「アウトロー」をやった時には9台をオシャカにしたけど、今回はもっと激しいアクションシーンを撮影することがわかっていたので、思ったより多くなくて済んだよ(笑)


G:
撮影ではイレギュラーなことがたくさん起こると思うんですが、そのイレギュラーが結果的にいい方向に転んで思っていた以上に良いシーンが撮影できた、ということはありましたか?

マッカリー:
そうだね、今回はなかったけど、「アウトロー」の時はアクシデントが良いシーンを作ったことはあったよ。トンネルから出てくる時に樽にぶつかるシーンでは、本当はそのまま進むはずだったんだけど止まってしまって、逆にそれが良かって正式に使ったことはあった。ローグ・ネイションでは、綿密にプランを立てていたけど、現場で何度も変更が起きた。「どうしてもこれはできない」ということでアイデアを犠牲にせざるを得ないこともあったよ。実際そのせいでストーリーがどういう展開になるのか自分でもわからなくなったほどだったんだ。

だからカーチェイスに関しては「これでは尺が足りないんじゃないか、もっと必要じゃないか」と思っていたくらいだったけど、あとでカーアクションシーンが長すぎてカットしたから、結果オーライだね。ひとつ言えるのは、車を壊しすぎずに済んだことはハッピーだったかもしれないね(笑)。心残りがあるんだけど、バイクチェイスのシーンで、イルサを追いかけるレーサーの顔のアップが撮れなかったんだ。レーサーもイルサもフルフェイスヘルメットを着けていたから、実はレーサーのアップはイルサを撮影したカットをCGで作り替えている。そのため、バイクチェイスのシーンはイルサがイルサを追いかけていることになるんだ。


G:
マッカリーさんはローグ・ネイションの脚本と監督を手がけていますが、作品によっては監督だけを担当する時と、本作のように脚本・監督をどちらも担当する時があります。この時の違いについて教えて下さい。

マッカリー:
とてもいい質問だね!映画の脚本を書くっていうのは、いろんな人のビジョンを自分の目を通してひとつにまとめていくという作業。監督っていうのはみんなの仕事を自分のビジョンに合わせるという作業。全く反対に位置する2つの仕事だけど、共通しているのは「ストーリーテリング」ということ。それぞれに別のスキルが必要で、実際に自分が脚本を書いた作品を監督するとなると、脚本家としての自分を守ろうとしてはダメなんだ。脚本を指標やガイドラインとして立てながら、それを無視することも大切だよ。でも自分で書いた脚本というのは、なかなか無視することは難しいものだよ。


G:
最後の質問です。映画監督を目指す学生に向けて、学生時代のうちにやっておくべきことなど、何かアドバイスはありますか?

マッカリー:
またとてもいい質問だね!僕が彼らに話すべきことは、自分が映画作りをするチャンスを待つのではなく、今すぐ始めることだ。20年前に僕が映画作りを始めたころは、カンタンに映画を作るツールが手に入る時代じゃなかったけど、今はなんでもできる。当時の僕は映画を作りたいと思っても、許可がなければ撮ることはできなかった。今の時代は脚本を書くのはもちろん、監督・撮影・編集や、配給に至るまで全部自分で行える時代になっているからね。落とし穴としては、誰かからお金をもらわないと「正式な監督じゃない」と思っている人が多いが、本当に映画作りを愛してやっていけば、あなたにお金を出して雇ってくれる人は現れるよ。一言で言うと「映画を撮るために許可を得るな」ということさ。


(c) 2015 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
トム・クルーズが飛行機にガチでぶら下がった裏話を披露した「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」記者会見 - GIGAZINE

トム・クルーズが軍用機にしがみついて飛び立つ「ミッション:インポッシブル 5」予告編公開、とんでもないアクション満載 - GIGAZINE

「ミッション:インポッシブル」最新作で飛行機にしがみつくトム・クルーズはガチで本人だった - GIGAZINE

「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」でトム・クルーズが本当に運転した大迫力のカーアクション&メイキング映像 - GIGAZINE

トム・クルーズらがCGではなく本当に実物の機動スーツで走って戦う「オール・ユー・ニード・イズ・キル」特別映像GIGAZINE独占公開 - GIGAZINE

トム・クルーズが「目覚める・戦う・死ぬ」を繰り返してギタイと戦う「オール・ユー・ニード・イズ・キル」特別映像第2弾GIGAZINE独占公開 - GIGAZINE

・関連コンテンツ

in インタビュー,   映画, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.