戦争から生まれたウェアラブル技術、「懐中時計」と「腕時計」の歴史
By Kit
Android WearやApple Watchによってスマートウォッチが一般的になりつつありますが、もともと「時計」とはポケットに入れて持ち運ぶ「懐中時計」のことを指していました。そんな時計がいつごろから、なぜ腕に着けられるようになったのかということがわかる「腕時計の歴史」がThe Atlanticでまとめられています。
A Brief History of the Wristwatch - The Atlantic
http://www.theatlantic.com/international/archive/2015/05/history-wristwatch-apple-watch/391424/
1916年7月9日にニューヨークタイムズは「腕時計」に関する記事を掲載し、この中でヨーロッパの人々の時計が懐中時計から腕時計へと変化しつつあることを報じています。それまでは懐中時計をポケットに入れておくのが主流だったため、手首に時計を付けるヨーロッパ人を見たアメリカ人は一種のジョークだと感じたとのこと。
もともと懐中時計は1700年代ごろから一般的に使われるようになり、人々は1世紀以上の間、時間をポケットに入れて運んでいました。19世紀は懐中時計が盛んに作られた時期で、改良が進むと本体のサイズは小さくなり、現在でも見られるようなチェーンやストラップが付けられるようになったとのこと。時間を確認する以外にも、懐中時計を持つことが自らの経済状態を示すことができるアイテムとしても人気を呼び、19世紀のアメリカの賭博記録によると、ギャンブルで賭けられるアイテムのうち40~50%を懐中時計が占めるほどだったそうです。
By Robert Clemens
その後、産業革命から19世紀終わりまでに鉄道・工場・電気が発展したことや、ヨーロッパとアメリカでタイムゾーンの標準化が開始されたことで、「時間の確認」は人々にとってさらに不可欠なものとなり、需要増大によって時計の製造技術も大きく進歩しました。
人々の「時間」がいつポケットから腕に移動したのかについては、1914年~1918年の第一次世界大戦が境目となっているとのこと。電話や通信技術の発展により、近代戦で戦う兵士たちは戦場で正確に時間を把握する必要が生まれ始めており、第一次世界大戦から2年ほどで一目で時間が分かる腕時計の着用は兵士の義務となり、腕時計の需要が上昇したわけです。戦争の影響から腕時計が一般市民の間でも使われ始めますが、当初は女性のファッションとしてブレスレットに時計を着けたものが流行していました。
1899年~1902年に起こった第二次ボーア戦争でも、すでにイギリス軍兵士たちが腕時計を着けていたことが分かっています。兵士たちが腕時計を着けていたことは、男性の間でも腕時計が浸透していくきっかけになったとのこと。コートの下などに入れていると出しづらい懐中時計は、1920年代には「時代遅れ」となり、腕時計へと需要が移り変わっていきました。
現代では携帯電話やスマートフォンが普及したことで、腕時計を必要としない人々が増加しており、時間を確認する手段は懐中時計と同様にポケットの中へ逆戻りしました。しかし、GoogleのAndroid Wearや、AppleのApple Watchの登場によって、スマートウォッチの需要が加速していることから、人々は再び歴史をなぞるように、時間をポケットから腕に戻すのかもしれません。
・関連記事
ガラス管の液体が時間を知らせるものすごいデザインの腕時計「HYT H3」 - GIGAZINE
レトロな見た目と数字だらけの文字盤が奇妙な電池不要の腕時計「HALOGRAPH」 - GIGAZINE
容量わずか25KB、腕時計「Pebble」で遊べるRPG「PebbleQuest」 - GIGAZINE
Apple Watchの標準搭載アプリで一体何ができるのか? - GIGAZINE
驚愕のヌルサク動作で操作性抜群の「Apple Watch」のセットアップや基本操作を徹底レビュー - GIGAZINE
Android Wearが大幅アップデートでApple Watchの機能にさらに近づく - GIGAZINE
Android Wearの第1弾、スマートウォッチ「LG G Watch」速攻レビュー - GIGAZINE
スマートウォッチ「Android Wear」を使い倒すための無料アプリ12選レビュー - GIGAZINE
・関連コンテンツ