インタビュー

「締切りは発明の母」と言い切る宮崎英高氏に新作「Bloodborne」や開発秘話など根掘り葉掘り聞いてきました


アーマード・コアシリーズ」や「DARK SOULSシリーズ」を手がけたフロム・ソフトウェアと、SCE JAPANスタジオが「Demon's Souls」以来6年ぶりにタッグを組んだPlayStation 4専用ソフトウェア「Bloodborne」が、ついに2015年3月26日(木)に発売しました。Bloodborneのディレクターを務めた宮崎英高さんは、30歳を目前にしてゲーム業界に転身し、入社からわずか10年でフロム・ソフトウェアの取締役社長に就任した恐るべき経歴を持つ人物です。

ディレクターとして「アーマード・コア フォーアンサー」や「Demon's Souls」など数々のヒット作を世に送り出してきた宮崎さんが、社長就任後初めてディレクションを務めたのがBloodborneで、しかも同タイトルはフロム・ソフトウェア初となるPS4タイトルになります。そこで今回は、宮崎さんがBloodborneに込めた思いや開発秘話、そして社長としてゲームのディレクターを務めた経験など、宮崎さんにしか聞けないことを根掘り葉掘り聞いてきました

Bloodborne ブラッドボーン | プレイステーション オフィシャルサイト
http://www.jp.playstation.com/scej/title/bloodborne/


GIGAZINE(以下、G):
では、まず最初に「Bloodborne」を知らない読者もいるので、ゲームの簡単な紹介をお願いします。

宮崎英高さん(以下、宮崎):
そうですよね……苦手なんですが、頑張ります。


G:
そうなんですか(笑)

宮崎:
はい(笑)でも、気を取り直して。ゴシックあるいはヴィクトリアンホラーの雰囲気をベースにして、獣の病がはびこる陰鬱な古都「ヤーナム」を舞台に、プレイヤーは獣狩りの狩人となり、おぞましい謎と血塗れの死闘に挑む、そんなゲームです。


G:
なるほど。

宮崎:
またBloodborneは、我々フロム・ソフトウェアがデベロッパー、SCEさんがパブリッシャーということで協働させて頂いているタイトルです。実は同様の形で、2009年に「Demon's Souls」というPlayStation 3専用のアクションRPGタイトルもリリースさせて頂いていて、困難を克服したときの達成感を重視し、難易度を高めに設定する、といった部分は、その頃から変わらぬコンセプトですね。


G:
ありがとうございます。宮崎さんはBloodborneでディレクションを務めていますが、具体的にはどのようなことをしていたのでしょうか?

宮崎:
開発現場の責任者ですね。少し大げさな言い方をすると、コンセプトを決め、ゲーム全体、あるいはゲームを構成する各要素をデザインし、コントロールし、そのコンセプトを実現するゲームを作り上げる、といった役目でしょうか。私自身でいえば、ゲームシステムデザインと基礎バランス、マップ設計と敵など含めたレベルデザイン、世界観構築からデザインワーク、テキストワーク、もう少しありますが、まあそういった部分を担当者と協働して直接ディレクションしています。

G:
Demon's SoulsはPlayStation 3のゲームですが、今回のBloodborneはPlayStation 4向けのタイトルで、プラットフォームが移行しました。Bloodborneの開発にあたって、プログラミング面で想定外に時間がかかった部分はありましたか。

宮崎:
苦労したところは、やっぱりマップの接続かなあ……今作の舞台となる古都「ヤーナム」については、作り込まれた街並みが、縦横に複雑につながる構造になっているんです。それは私のマップ設計の癖のようなもので、異様な雰囲気の探索しがいのある街を構築したかったんですけれども、まあそのせいで……

G:
時間がかかったと?

宮崎:
はい。マップの接続まわり、データリードまわりは大変だった記憶があります。グラフィックデザイナーも、プログラマーも、とても頑張ってくれました。本作のマップがよいものであれば、それはまず彼らの功績ですね。まあ、当人たちに聞けば、「いや、もっと他に苦労した点が!!!」という話があるとは思いますが(笑) あくまでも私に見えていた範囲では、ということですね。

G:
確かに、言われてみるとヤーナムの町は、ものすごくこだわりを感じられるデザインになっていると思います。では、開発時に当初思い描いていたものとは少し異なる内容になったけれども、「これはこれでありかな」みたいな部分ってありますか?


宮崎:
大きな部分では、ほとんどありませんね。コンセプトレベルでは、開発開始当初からほぼブレずに完成させることができました。これは、SCEさんが信頼してくれた、というのも大きかったと思います。ですが、まあ細かい部分では「想定外だけど、これはこれであり」といったことは沢山あります。というか、それはゲーム開発の面白い部分だと思うんですよね。想定外の攻略法とか、想定外の動きとか、そういったものは中々意識しては作れないし、ユーザーさんの面白い発見の対象にもなり易い。だから、それがゲームを破綻させない限りにおいて、できるだけ残そうとすることがあります。

G:
可能な限り残す?

宮崎:
はい。その方が面白いと思うんですよね。言い訳めいて聞こえるかもしれませんし、実際そういう側面もありそうですが(笑) よい意味で隙のあるゲームでありたいというか。

G:
想定外に出てきたことを残して、ユーザーに発見の余地を与えるというのは興味深いですね。今回初めてPS4向けのタイトルをディレクションしてみて、PS3では表現できなかったけれども、PS4では可能になったことはありますか?

宮崎:
高精細なグラフィックと、風やパーティクルなど各種表現による没入感ある世界観作り、というところは当然あるとして、ゲームディレクターとしては、やっぱりメモリ量が大きく増えたところが嬉しいですね。今作独特の仕掛け武器のシステムなんかも、モーションのメモリ量を圧迫しますから、とても助かりました。


G:
仕掛け武器の話が出てきたのでお伺いしたいのですが、今回のBloodborneから攻撃して返り血を浴びると体力を回復できる「リゲインシステム」という特殊なシステムを採用しています。

宮崎:
「返り血を浴びると」というのは実際には語弊がありますが、確かにリゲインは特殊なシステムですよね。元々リゲインについては、本作のバトルのテーマであった「死闘感」、そのために考えられたシステムなんです。防御の概念を能動的なものに変更し、それにより死闘に誘い、死闘感を演出する、それがリゲインシステムの狙いであり、着想ですね。

リゲインの最初のイメージは、「事後ガード」なんです。ダメージを喰らった後に攻撃することで、防御していれば喰らわなかったダメージを取り返す。事後であれ攻撃自体は能動的なものですし、判断や戦術性の余地もあり、死闘への誘導、死闘感演出にもつながっていけば、ということで考えられたものです。バトルの「死闘感」は本作の主要なテーマの1つであり、リゲインはそれを支える重要な要素の1つですから、うまくいっているとよいのですが。

G:
リゲインで回復できる量は武器によって違うそうですが、武器と回復量のバランスの設定はどのようになっていますか?

宮崎:
リゲイン量は武器の個性の1つとして考え、主に攻撃速度と重さのバランスから調整されているはずですが、極端にリゲインできない武器というのは考えていません。あくまでもリゲインは、本作のバトルシステムの根幹をなす一要素であり、武器の個性によりその根幹を失ってしまうというのは、少なくとも現時点ではあまり望ましいものとは考えなかったのです。

G:
なるほど、リゲインの発想の着眼点が宮崎さんならでは、という風に感じます。ところで、Bloodborneは完全新作ですが、続編ではなく新作を作る面白さはどこにあるのでしょうか?

宮崎:
新作であれ続編であれ、ゲーム制作はとても面白いものです。それを前提に、新作には新作の、続編には続編の面白さがありますね。新作は何より自由です。必要であればイチからすべて新調する事ができる。ゲームをトータルデザインするディレクターの立場からすると、とても自由度が高く、また実験の余地が大きく、そういったところは面白いですね。

続編は積んでいく面白さがあります。それは洗練であったり、深彫りであったりするのですが、そうすることでしか作れないものも多くありますからね。私自身続編を作ることが決して嫌いではないです。


G:
ここで少し話を変えて、Bloodborneの表現についてお伺いしたいことがあります。Bloodborneは日本のゲームの中でも描写が、ある意味振り切っている思うんですけども、そういった表現について企画段階でラインを引いたりするものなのでしょうか?

宮崎:
そうですね。それは当然あります。宗教的禁忌などが分かり易いと思うのですが、そういうところは侵さないように注意しています。我々が作ろうとする面白いゲームにとって、誰かを決定的に傷つける要素は、まったく必要のないものですから。

G:
ふむふむ。

宮崎:
似たようなところでいえば、今作のBloodborneでは血の表現に腐心しました。血の表現自体は、世界観や、あるいはバトルの死闘感を表現するために間違いなく必要だったのですが、一方で、生理的な嫌悪感を強くもたらすものにはしたくなかったのです。ですから、血飛沫のエフェクトについては、写実的というよりは象徴的な、一種絵画的な描き方ですし、血の色も、鮮やかで目に痛い赤ではなく、少し褪せて枯れた、落ち着いた色味に抑えています。その方が、私が目指す画作りにも合っていましたしね。

余談ですが、特に血飛沫の激しいキャラクターについては、血の色を灰に近いところにまで調整し、その流れで「灰血病」という名前が生まれたりもしましたね(笑)これらが意図通りうまくいったのか?ということは、また難しい部分もあると思うのですが、まあ、変わったところではそんなことを気にして作っていました、ということですね。


G:
血の表現1つでもそこまで考えて開発に取り組んでいるということですか……。ちょっと話が変わりますが、Bloodborneは国内発売予定日が2015年2月5日から3月26日に変更された、ということがありました。やはり、ゲームとして販売するからには、発売日があって、そこから逆算して締切りを決定していると思いますが、その辺の「締切り」と「クオリティ」のバランスについてお聞かせください。時間をかければかける程、作品のクオリティが上がるという、簡単な話ではなさそうです。

宮崎:
うーん、発売日の話は、色々な人に迷惑をかけまくってしまいました。ここは謝罪しかありませんね。本当に申し訳なかった。それ以外、何を言っても心苦しいです。

G:
締切りを犠牲にしても、クオリティを上げるべきなのか、それとも締切りを厳守するべきなのか、という点についてはどのように思われますか?

宮崎:
一般論としては、常に特定の判断はないと思っています。我々もSCEさんも、別に金持ちの道楽としてゲームを作っている訳ではありません。いいものを作ろうよ、という純粋な理想がある一方で、当たり前ですが、それは厳然とビジネスなんです。私は、これは自戒も含めてですが、そのことを軽く考えるべきではないと思っています。それは何より、我々が自分たちの作りたいゲームを作っていく、その場と状況を守り続けるために必要なことですから。ですが一方で、締切り至上主義、ということでもありません。締切りが重要であることは理解しつつ、それでもユーザーさんに楽しんでもらえるゲームを作り上げるために、どうしても譲れない時もある。

今回のBloodborneでも、大変申し訳ないのですが、一度締切りの再設定を相談させて頂きました。最終的にそれを理解し、受け容れてくれたSCEさんには、非常に感謝しています。簡単な決断ではなかったと思います。

また少し別の視点で言えば、モノ作りにとって、締切りが必要な側面もあると思います。例えば、締切りがあることでアイデアを取捨選択し、あるいは最適化する必要性が生まれ、それはよいゲームにって必要な過程である、というようなことですね。特に私は生来怠け者ですから、俗にいう「締切りは発明の母」なんです。


G:
重みのある名言が飛び出しましたね。

宮崎:
これには、開発チームのメンバーも、SCEさんも、深く同意してくれるんじゃないかな。テキストとか、締切りがあっても酷く遅れますから、無かったら大変なことになるだろうと(笑)

G:
締切り間際だからこそモチベーションが上がるという感じですか?

宮崎:
うーん、モチベーションは常に高いつもりなんですけどね。でも、危機に直面してこそアイデアが出る、というのは確かにあります。何度助けられたことか。故に「締切は発明の母」なんです。

G:
締切り間際の切羽詰まった感じが伝わってきます。Bloodborneの開発で最も忙しかった時期はいつですか?

宮崎:
これは、マスターアップの直前ですね。年末から年始にかけて。それ以前も決して楽な開発ではありませんでしたが、やはりそこが一番忙しかったと思います。

G:
それはどうしてでしょうか?

宮崎:
我々にとってPS4世代初のタイトルでしたからね。最後になって想定外の問題というのが発生し易いんですよ。私が最初にディレクションしたアーマード・コア4も、PS3世代初のタイトルでしたが、世代初のタイトルには、やはり独特の難しさと忙しさがあります。そういった意味では、忙しさに懐かしさがあったのも事実ですね(笑)

G:
そうだったんですね。そういった時期に忙しすぎて徹夜することなどもあるのでしょうか?

宮崎:
そうですね。翌日が厳守の締切だが……というような時は、徹夜することもあります。それは事実です。ただ、基本的に私としては、そうした特別な状況でもない限り、徹夜などはすべきでないと思っています。少なくとも常態化させるべきではない。実際に忙しかったメンバーには怒られそうですが(笑) 本当にそう考えています。一般論としても、休むべき時には休む方が、結果としてよい仕事を継続できると思いますし、何かしらモノを作るというか、作ろうとする人間にとって、よい刺激を受ける時間も必要だと思うんです。

G:
休日に何をして過ごすかが、クリエイターにとって必要な要素ということですか?

宮崎:
別に休日に限りませんし、何から刺激を受けるのかというのは人それぞれですけどね。ただ、いずれにしろそういう時間は必要だと。もちろん、人によっては仕事こそが刺激であって、できるだけそれをやっていたいんだ、ということもあると思います。それを止めるつもりもありません。というか、私自身がそういう人間ですしね。ゲームを作る仕事は刺激的だし、たまに、深夜のテンションでゲームを熱く語り合う時間とか、すごく楽しいし刺激になる(笑)

ただ、それを全員に求めようとも思っていないんです。皆何かしら、その人にあった刺激、それを受ける時間が必要である、ということですね。最初の話のように、どうしようもない状況はあります。できればゼロにしたい。


G:
では、次に開発チームのスタッフについてお伺いします。今回のBloodborneに限らず、開発チームのメンバーを選ぶときはどういった感じで選んでいるのでしょうか?

宮崎:
弊社、フロム・ソフトウェアは、いわゆる「固定チーム制」ではないんですよ。固定化された「アーマード・コアチーム」「DARK SOULSチーム」といったものは存在しません。もちろん、ある程度コアになるメンバーは効率化のため固定することもありますが、基本的には、フロム・ソフトウェアという大きなチームがあって、各開発ごとに、最適なメンバーを選ぶ形にしています。

G:
フロム・ソフトウェアという大きなチームの中でメンバーを常に最適化するために心掛けていることはありますか?

宮崎:
まずは適性と、本人の意志を確認します。常にそれらを完全に考慮できるわけではありませんが、やはり適性があり、意志に沿ったものの方が良い仕事ができますから。その上で、これは私が社長になってから特にですが、ある程度メンバーをシャッフルするようにしています。

例えば、経験の深いベテランと、野心はあるけど経験は浅い若いメンバーを組み合わせたり。そうすることで、皆が適度な刺激を受け続け、またノウハウを共有し、フロム・ソフトウェアが1つの、生き生きとした大きなチームとして、機能して欲しいと思っているんです。

G:
では、Soulsシリーズの開発スタッフがBloodborneを引き継いだということではないと?

宮崎:
当然共通するメンバーも多いですが、固定したチーム全体が引き継いでいる、ということはありません。SOULSにしても、チームが強く固定されて派閥化するのは嫌なんですよ。例えばライバルなんて、社外に素晴らしい開発会社、チーム、個々の開発者が山ほどいらっしゃるじゃあないですか。フロム・ソフトウェアのような小さな会社で、内側にそれを求める必要はないんです。


G:
なるほど。次は、作品の評価に関して聞かせてください。インターネットでは結構売上至上主義的な部分があって、作品の評価の1つとして売上が重要な要素として考えられているところがあります。当然、作品の評価自体が売上で決まるわけではないと思いますが、売上以外で作品を評価するにはどのような点に注目するべきだと思いますか?

宮崎:
そうですね。指標は幾つか持っています。売上という話がありましたが、それも当然重要です。先ほども少し触れたとおり、我々のゲーム制作は一方で厳然とビジネスですし、我々が作りたいゲームを作る場と状況を守るためにも、必要なものです。ただし、それだけを指標にすることはありません。例えば分かりやすいところでは、メディアさんなりユーザーさんなりの評価やレビューがあります。結局のところ、我々の目的は皆さんにゲームを楽しんでもらうことですから、これは重要ですし、ビジネス的な話でも、評価は次につながっていくものですから。

上記2つ以外にも指標はあります。極端な言い方をすると、売上も、メディアさんやユーザーさんの評価も低いタイトルがあったとして、でもそれが決して完全な無為ではなく、フロム・ソフトウェアの糧になった、ということがあるんです。例えば、人材が育ったとか、そこで得た技術やノウハウが次のタイトルにつながっていったりだとか。

G:
なるほど……。

宮崎:
まあなので、評価は結構多角的ですね。もちろん、売上が伴わないタイトルばかりでは困ってしまうのは事実ですが(笑)

G:
話の中で出てきたユーザーレビューは、宮崎さん自身結構ご覧になるんですか?

宮崎:
そうですね。主に精神状態が安定しているときに(笑)

G:
やっぱり、精神状態が不安定なときは見たくないものですか?

宮崎:
まあ、そうですね。見たくないというよりは、見た結果が悪い方にいきそうだから、今はやめておこう、という感じですね。

G:
なるほど。レビューなどに書かれているユーザーさんの意見をゲーム開発に反映するというのはあるのでしょうか?

宮崎:
はい。鵜呑みにするか、というとまた少し違うのですが、参考にしています。ゲーム制作者としては、メディアさんなり、ユーザーさんなりのレビューって、すごく貴重なものだと思うんです。作ったゲームを熱心にプレイしてくれて、それを前提とした、すごく熱くて、丁寧で、深いレビューが、統計的な意味を持つくらいにある。それは制作者として望んでも得難いものです。糧にしないなんて、いかにも勿体ないでしょう。それに、やはり単純に嬉しいものですしね。


G:
ここからは少しBloodborneとは関係のない話を少し聞きたいと思います。宮崎さんは、以前のインタビューでインディーズゲームのような小規模なゲーム開発にも興味があるとおっしゃっていました。GIGAZINEでもインディーズゲームの記事を掲載することがありまして、その中でクラウドファンディングで出資を募るインディーズゲームが近年増加しています。開発者から見て、今までにはなかったインディーズゲームの盛り上がり方についてどう思われますか?

宮崎:
良いことだと思いますよ。変な話ですけど、ゲーム制作のプロジェクトをスタートするには、結局何らかの原資が必要なわけじゃないですか。そうした原資を得る手段が多岐にわたるのは、私はとても良いことだと思います。

原資を得るために「我々が作ろうとしているゲームは価値がありますよ」ということをプレゼンテーションし、理解を得るのは、実際にすごく難しいことなんですよ。だから、原資を得る手段が限られてしまうと、その限られた手段に対して有効なプレゼンテーションもまた限られてしまい、結果、実際に作られるゲームも限られてしまう、といったことが起こりやすい。


それではつまらないし、閉塞的ですから、インディーズなり、クラウドファンディングなりが、1つの新しい手段となり、それが新しいゲームにつながっていくのであれば、1ユーザーとしてもとてもワクワクしますね。

また別の観点で言えば、私が将来会社をクビになった時に、それらがゲームを作る希望になってくれるかもしれない、ということもあります(笑) 私はやはり、ずっとゲームを作っていたいですし、そのためにワンチャンでもあれば、ということです。実際はそんなに簡単なものではないことは、よく分かっているつもりですが。

G:
宮崎さんはずっとゲームのディレクションに携わっていきたいと考えているということですか?

宮崎:
そうですね。元々ゲームが作りたくて転職した身ですし、ゲーム制作、ゲームディレクションは、実際とにかく楽しいんですよ。社長の言うことではないですが、ディレクションするな、と言われたら、進退を真剣に考えると思いますよ(笑)

G:
新しいプラットフォームへの挑戦というのはどうでしょうか?ソニーの「Project Morpheus(プロジェクト モーフィアス)」とかFacebookの「Oculus Rift(オキュラス リフト)」といったVRヘッドセットが登場しましたが、宮崎さんは「VRヘッドセットでゲームを作りたい」と思いますか?


宮崎:
あります、すごいありますよ!VRヘッドセット体験はとても衝撃的なものでしたし、同時に、新しいゲームフォーマットを必要とするデバイスだとも感じました。ゲーム制作者の端くれとしては、すごく興味を惹かれるじゃないですか。余談かもしれませんが、ポリゴンの初期のころ「スーパーマリオ64」にすごく感動したんですよ。

G:
ほうほう。

宮崎:
新しい技術を使って、その技術に適したゲームを、最初期にここまで完成させられるものかと。当時私は大学生だったのですが、よく分からないテンションで興奮していた覚えがあります。すごいと思った。もちろん、ポリゴンとVRヘッドセットは概念レベルからまったく異なるものですが、そこにまた新しいゲームフォーマットが生まれるのなら、そこに携わってみたいというか、ほんの端っこでいいから関与してみたいというのは、思いとしてはありますね。だから、展開にすごく期待しています。

G:
宮崎さんが作ったVRヘッドセット向けのゲームは、ユーザーとしてもぜひプレイしてみたいです。それでは最後になりますが、GIGAZINE読者にメッセージをお願いします。

宮崎:
そうですね、Bloodborne、既に発売されていると思いますが、よろしければ手にとって遊んでみて下さい。最初に触れたように、世界は鬱々と暗く、戦いは血塗れの死闘で、難易度もやさしくはない、そんなゲームですが、だからこその緊張感と、その先の達成感を感じて欲しいと思っています。よろしくおねがいします。

G:
ありがとうございます。もう一点、開発者として今後ゲームを作っていこうと思っている人に向けたメッセージをお願いします。

宮崎:
そこはシンプルですね。すごく楽しいですよ、と。決して楽な業界ではないと思いますし、何の責任もとれないので無責任かもしれませんが、意志があれば是非ゲームを作って欲しいと思います。それは一緒にゲームを作る仲間としても、あるいは1ユーザーとしても。

G:
Bloodborneの開発も、楽しんでされたということですか?

宮崎:
はい。すごく辛いことも多かったけど、総論としてはやはり楽しかったです。開発チームのメンバーも、サポートしてくれたSCEの皆さんも、そうであれば嬉しいですね。彼らには、本当に感謝しています。私一人では何も作れませんし、きっと楽しくもないでしょうから。

G:
本日はありがとうございました。

宮崎:
ありがとうございます。

インタビューではどれほどゲーム開発を愛しているか、どれほどこだわってBloodborneの開発に取り組んだか、宮崎さんの熱い思いがこちらにもヒシヒシと伝わってきました。「ゲームのディレクションを辞めろ」と言われたら会社を辞めるくらいの熱い気持ちを抱く宮崎さんがディレクターを務めたPS4向けゲーム「Bloodborne」は絶賛発売中です。

Amazon.co.jp: Bloodborne(通常版): ゲーム

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in インタビュー,   ゲーム, Posted by darkhorse_log

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