Kickstarterで5000万円以上の出資を集めるもプロジェクト中止・返金措置に至ったチームが学んだこととは?


スマートフォンを使って自由にカメラのシャッターを切ることができるツールの「Triggertrap Ada」は、クラウドファンディングサイトKickstarterで目標金額の約6倍の資金を集めることに成功したのですが、結果的に製品化を実現できず集まった資金を出資者に返還することになり、プロジェクトは大失敗に終わりました。なぜ、圧倒的な支持を集めたにもかかわらずプロジェクトは失敗したのか、どうすればプロジェクトを成功させられるのかについて、Triggertrapのハジェ・ジャン・キャンプス代表が、プロジェクト失敗から学んだ教訓としてまとめています。そこにはKickstarterでプロジェクトを立ち上げる人も出資をする人も、知っておくべき教訓の数々が明らかにされています。

How a half-million dollar Kickstarter project can crash and burn — Medium
https://medium.com/@Haje/how-a-half-million-dollar-kickstarter-project-can-crash-and-burn-5482d7d33ee1

Triggertrapのチームが「Ada」のKickstarterキャンペーンを開始したところ、5万ポンド(約920万円)の目標金額に対して29万ポンド(約5300万円)の出資金を集める大ヒットプロジェクトとなりました。潤沢な資金をゲットすることになったチームはキャンペーンの終了後、大喜びで製品作りを本格的にスタートしましたが、そこには予想外の苦難の道が広がっていたとキャンプス代表は振り返っています。


まず、Kickstarterキャンペーンをスタートした当日に、大手カメラメーカーの法務部から当初の製品名が商標違反であるとの警告を受けたとのこと。Triggertrapチームは無用な法廷闘争を避けるために翌日には製品名を「Ada」に変更。変更時点ですでに目標金額の2倍に到達していたため、製品名の商標登録費用も十分捻出できそうで、プロジェクトは順風満帆であると感じていたそうです。

しかし、プロジェクト開始後にAdaで採用予定だったマイクロプロセッサが在庫不足で調達できないことが判明。そのため設計を変更し、代替のマイクロプロセッサを調達する必要が生じました。なお、チップ変更に伴い外装パーツを変更する必要もあり、高品質な3Dプリンターで試作を重ねることで費用はかさむ一方。思わぬ仕様変更にともなう再設計のコストは予想よりも高くつき、この時点で当初のプロジェクト予算の9.4倍の費用が必要になっていたとのこと。


そして、プロジェクト終了後に判明したのが、製造に必要な部品の調達費用が想定以上に上がってしまうことでした。大量生産にならない場合のパーツ単価は予想の3倍も高価であり、見積もりの結果、Ada1台あたり350ドル(約4万2000円)の費用がかかることが判明。これにより、1台あたり99ドル(約1万2000円)で製造しようとしていた計画は木っ端みじんに打ち砕かれました。


左のグラフはAdaプロジェクトにかかる試作機の外装パーツ費用を、右のグラフはAdaの電子部品とソフトウェア開発にかかる費用を示したグラフ。プロジェクト開始前の予想(予算)が青色で、実際に発注してみて分かった見積もりが赤色で示されています。


プロジェクトスタート前にハードウェア製造にどれくらいのコストがかかるのかを計算して、それに合わせて目標金額を設定していたTriggertrapチームでしたが、グラフから明らかなとおり、事前に集めた情報からの見積もりと、実際に注文してみて出された金額との間に大きな差が生じてしまいました。

お先真っ暗な状態に陥ったAdaプロジェクトでしたが、Kickstarterの出資締め切り後に、「出資期限に間に合わなかったが、予約を受け付けてくれないか?」という予想外のメールを大量に受信。大量生産すれば1台あたりの製造コストを大幅に下げられることが明らかだったため、公式サイト上でAdaの「予約販売」を受け付けることにしました。このとき、4000人からの予約販売リクエストを受け付けていたうち、「20%が実際に購入してくれるだろう」「もしかすると半分が購入してくれるかも……」という期待をTriggertrapチームは抱いていたとのこと。


予約販売で台数を稼ぎ、Kickstarterの受注分の製造費用を捻出しようとしたTriggertrapチームでしたが、ふたを開けるとAdaの製品価格の高さから予約要請をした人のうち1.5%未満の人しか実際に購入意思を示さなかったそうです。予約販売のもくろみが外れたキャンプス代表は、銀行や投資家に出資を求めましたが、予約販売でほとんどの人が脱落したという事実からAdaプロジェクトの採算性に疑問符をつけられ、「Triggertrapチームの将来性は評価するが、製品Adaについては話が別」という評価を受け、最後の望みも絶たれることになりました。

Adaの製造を強行すればTriggertrapが破綻することは明らか。AdaのためにTriggertrapのスタッフを路頭に迷わせるわけにはいかず、また、Triggertrap自体が消滅すればKickstarterで支持してくれた多くの人の期待を裏切る結果になるのも明らかでした。そのためキャンプス代表は、ついにAdaプロジェクトの失敗を認め、Kickstarterの出資者に出資金をすべて返還することにしました。キャンプス代表にとってKickstarterの出資者は単なる顧客ではなく、AdaやTriggertrapチームに熱狂してくれる大きなサポーターであり友人でもあったため、Adaを製品化できなかったことは痛恨の極みであると感じたそうです。


こうしてAdaプロジェクトは失敗に終わることになりましたが、キャンプス代表は以下の6つの教訓を学んだとのこと。

◆1:素早く失敗する
キャンプス代表がAdaプロジェクトを振り返って痛感しているのが、後手に回った数々の失敗とのこと。また、失敗に気づいたときに素早くリカバリーできなかったことが、傷口を広げることになったとのこと。つまり、Adaプロジェクトでは「失敗することを失敗した」のであり、素早いリカバリーがあれば、結果が変わっていた可能性があったはずだとキャンプス代表は考えています。

◆2:お金で問題を覆い隠さない
キャンプス代表はKickstarterプロジェクト終了後、予想をはるかに上回る出資金をゲットし、実際に口座に大金が振り込まれるのを確認して、すっかり気が大きくなってしまったとのこと。「これだけの大金があれば、どんな問題も大きな問題にならないだろう」と感じたそうですが、現実はそうでありませんでした。プロジェクトのスタート前にも通じて言えることは、「お金で問題解決できる」という考えを捨てることだとのこと。

◆3:プロジェクト計画はタイトに
Adaプロジェクト失敗の最大の原因は綿密なプロジェクト管理ができなかったこと。製造コストの見積もりの甘さだけでなく、急なマイクロチップと設計の変更など、プロジェクト計画をしっかりと立てておけば防げたミスが致命傷になりました。

◆4:スコープクリープを避ける
マイクロプロセッサの変更によってソフトウェアなどの設計変更が生じた際に、より良いUIデザインを追求した結果、ソフトウェア開発費用が増大したのも大きな失敗だったとのこと。プロジェクト進行に伴って計画がどんどん肥大化してしまうスコープクリークはぜひとも避けるべきとキャンプス代表は考えています。

◆5:適切なスキル
キャンプス代表はAdaプロジェクトをスタートさせた時、プロジェクトを成功させるのに必要なあらゆるスキルが備わっていると思っていたそうですが、実際には信じられないくらい間違いを連発したとのこと。プロダクト開発の経験が乏しいチームの場合、プロダクトマネージメントの経験があるスタッフを招へいすることも場合によっては必要だとキャンプス代表は考えています。

◆6:内向きにならない
プロジェクトが進むにつれ、大きな問題がいくつも生じる度に客観的に物事を見ることができなくなりがち。しかし、常に冷静にプロジェクト全体を客観視することが求められているとのこと。

Kickstarterプロジェクトの成否は目標金額の出資が集まるかどうかでは決まらず、むしろ出資金をゲットしてからが本番で、大きな山を超えられるかどうかがプロジェクトの真の成否を決めるということが、Adaプロジェクトの事例からよく分かります。クラウドファンディングで資金調達をしようと考える開発者にとってAdaの教訓が役立つことは言うまでもありませんが、出資して商品をゲットしようと考える人も「プロジェクトが本当に成功するのか?」について厳しくチェックする必要があるということを、Adaプロジェクトは教えてくれそうです。

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