チームやプロジェクトを成功へと導くために必要になる意外な能力とは?
By Novartis AG
「長すぎるわりに何も生み出さず参加者の時間を無駄にする会議」「正直な意見ではなく集団思考に従事するプロジェクトチーム」などは、学校や会社といった組織に属しグループでの作業経験がある人なら誰でも遭遇したことがあるはずです。こういったことがなぜ起こってしまうのか、そしてチームの優劣を左右するのはどんな能力なのか、その答えに迫る実験が行われました。
Why Some Teams Are Smarter Than Others - NYTimes.com
http://nytimes.com/2015/01/18/opinion/sunday/why-some-teams-are-smarter-than-others.html
人間は個体によって能力に差があることは当たり前なのですが、同じ事がグループにも言えるのか、つまり多人数で構成されるグループ間に能力の差が存在するのかという問題を長年研究し続けてきたのが、カーネギーメロン大学のビジネススクールのAnita Woolley教授・マサチューセッツ工科(MIT)大学スローンマネジメントスクールのThomas W. Malone教授・ユニオン大学心理学科の Christopher Chabris教授の3人です。
3人はチームワークにおける能力の違いを明らかにするため、2つの実験を行いました。1つは697人のボランティアを2~5人のグループに分け、論理的分析・ブレインストーミング・協調性・道徳的思考などを伴うさまざまなタスクをこなしてもらい、そのスコアを記録するというものです。グループではなく個人に対して上述の実験を行うと、個人の能力差が出るのが普通ですが、驚いたことにグループでも同じように差が生まれてしまいました。つまり、賢いグループがあった一方で、そうではないグループもあったというわけです。
By Neil Cummings
また、高いスコアを出したグループに3つの特性が備わっていることも分かりました。実験で高いスコアを記録したグループに共通していたのは「1人ではなく複数のメンバーが議論に参加する」「写真に写った顔の表情だけで感情を判別する」「女性の数が多い」ということです。
ただし、3人が行った別の実験では顔の表情だけで感情を判別する、つまり読心術という能力がチームワークにおいて最も重要でないことが分かっています。読心術が重要なのは顔しか見えないオンラインのビデオ会議などで、通常のミーティングでは最重要ではありません。
By William McInnes
最初の実験で判明したグループでも個人と同じように「能力の差」が生まれることを受けて、3人は初めの実験に参加したボランティアにIQテストを受けてもらう実験を実施。その結果「IQの平均が高いグループが、必ずしもIQの平均が低いグループより高いスコアを最初の実験で記録していないこと」が判明しました。つまり「個人のIQレベルはチームワークに大きな影響を与えていない」と言えます。
実験を実施した3人は「いい結果を残す最高のチームに必要なものは読心術やIQではなく、『心の理論』である」と結論を出しました。「心の理論」とは「他者の心の状態・目的・意図・知識・信念・志向・疑念などを推測する心の機能」のことで、相手の動作・行動から心を読む「読心術」とは違い、「社会性の元となる基礎的な認知のレベル」という感じです。簡単に言うと「感情を予想する能力」ではなく「他人の気持ちを察する共感能力」に近いとのこと。
By Apionid
最高のチームに必要なのは、頭のいい人や読心術に長けている人ではなく、他者の気持ちを考え共感できる能力。自分が参加しているチームがうまくいっていないときは、チームに「心の理論」が備わっているか、いま一度確認してみるべきです。
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