がんや糖尿病よりも精神障害になる可能性の方が高いと判明、「精神障害になりにくい人」は何が違うのか?

by Caleb Woods

うつ病や急性ストレス障害といった精神障害について「自分とはあまり関係のないもの」と考えている人も多く、実際に自分が精神障害となった時に恥を感じてなかなか人に言えないということも起こり得ます。しかし、近年に行われた大規模な調査では、人が人生のある時点において精神障害になる確率は80%以上であり、がんや糖尿病よりも身近な病気であるということが示されています。一方で、中年の年齢まで一度も精神障害にかかならなかった人も存在することから、「これらの人は何が違うのか?」ということも調査されています。

Mental Illness Is Far More Common Than We Knew - Scientific American Blog Network
https://blogs.scientificamerican.com/observations/mental-illness-is-far-more-common-than-we-knew/


これまでに行われた調査によると、アメリカの全人口の20~25%の人々が精神障害を患っており、学校や仕事、人間関係に支障をきたしているとのこと。アメリカで行われた国民調査の結果によると、1990年代中頃から2000年代初期にかけては特に精神障害の報告が多く、人生のある時期において精神障害を経験したという人は約半数にも上ったと言われています

上記の調査はさまざまな年代・性別・社会的地位・民族性を持つ人々を対象にした大規模なものですが、一方で、注意しなければならないのは、精神障害を報告した被験者はみな、自分の人生を振り返って「あのとき私は精神障害だった」と語っているということ。人間の記憶は変質しやすく、過去に精神障害を患っていたと語る人が、自分の状態をどれほど正確に把握しているのか?という問題があります。また、国民調査に対して3分の1もの人々は回答を行っていませんが、追跡調査を行った結果、これらの「回答しなかった人々」は、メンタルヘルスの状態がより悪い傾向にあることがわかっています

そこで、2017年2月に発表された研究は、「被験者に対して過去の精神障害の経験を問う」のとは別のアプローチで調査を実施。この調査では、ニュージーランドに住むある世代の人々を誕生から中年期まで追跡し、数年ごとに徹底的に調査して、「調査を行った時点から数年後に精神障害になる形跡があったかどうか」が評価されました。

数年ごとに証拠ベースで何度も人々を調査した結果、人々が人生のある時点において診断可能な精神障害になる可能性は80%以上にもなることが判明しました。この調査の結果、被験者のうち短期間の精神障害さえ引き起こさなかった人はわずか17%。調査と調査の間には数年の期間があいたので、その期間内、調査では計測できない時期にもわずかな精神障害さえなかった人は、さらに少数であると見られています。なお、ニュージーランドの別の地域やスイス、アメリカで同じ調査が行われた時も、同様の結果が見られたとのこと。これはつまり、人は糖尿病や心臓疾患よりも、精神障害を経験する確率が高いということです。

by agressti vanessa

一方で、「精神障害になる」と聞くと、生涯にわたって患うもの、という印象を持つかもしれませんが、一般的に私たちが「精神障害」とするものの症状が出るのは短期間で、治療薬などを飲まなくとも完治することがあることも同研究でわかっています。クレアモント大学院大学の社会心理学者であるJason Siegel教授は、人は友人や同僚の健康上の問題が一時的である時に、より同情的になり助けになろうとする傾向があると主張しており、「一時的な精神障害も多い」という情報が広まることは有益だと考えられます。しかし、「一時的」とは言えども精神障害が患者の人生に大きな影響を及ぼすのは事実であり、精神障害の症状に該当する人であれば、かなりの機能に問題が生じているはずなので、人の助けが必要になるのです。

しかし、同研究結果は、精神障害について「人が人生のうちで経験する『当たり前のこと』を医療上の問題にしている」とも受け取られるという問題を含んでいます。

非営利組織のMental Health America代表であるPaul Gionfriddo氏は精神障害を「普通のこと」と考えており、「この調査結果には驚きません」と発言しつつも、「だからといって常に耐えられるものではありません」と語っています。3年前にMental Health Americaがウェブ上で自分が精神障害であるかどうかをチェックできるツールを公開したところ、現在では、1日3000人もの人がウェブサイトにログインして自分が精神障害かどうかや、治療によってメリットが得られるかどうかを調べているとのこと。

米国予防医療専門委員会は、11歳以上の人々に対して精神障害のテストを定期的に行うことを推奨していますが、定期的にテストを行う人はごくまれです。Gionfriddo氏は、がんや糖尿病のような病気に対して人は定期的な検査を行い早期発見を心がけているのに、精神障害についてはそうでないことを指摘。「精神障害かどうかのテストは、大人にとって血圧検査と同じくらいに一般的であるべきです」と主張しました。

一方で、今回の調査で、人生のうち一度も精神障害を患ったことのない「驚くべき人々」が報告されたのも注目すべきことです。これらの人々をより深く調査していくことで、精神障害の人々を助け、人が人生を楽しむための見識を共有することも可能だとみられています。

現時点では、これらの人々には「家族に精神障害の病歴がないこと」そして「5歳頃の時期においてネガティブな感情を示すことが少なく、仲間と上手につきあい、自己管理が上手である」という傾向があったことが判明しています。一方で、裕福さや知能、あるいは身体的な健康度について他の子どもたちと違いはなかったとのことです。

by Mi PHAM

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in サイエンス, Posted by logq_fa