ハードウェア

PCとデジタル一眼を使って地球から遠く離れた太陽系外惑星を観測する方法


夜空の星を美しく撮影するためには、星の動きを自動で追尾してカメラを向け続ける「自動赤道儀」と呼ばれる機材が必須。そんな自動赤道儀をDIYで自作し、さらに市販のデジタル一眼カメラを使うという安上がりな方法で地球から遠く離れた地球系外惑星の観測に成功してしまったデヴィッド・シュナイダーさんのムービーがYouTubeで公開されています。

DIY Exoplanet Detector - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/geek-life/hands-on/diy-exoplanet-detector

シュナイダーさんがDIYで自動赤道儀を作成する様子は以下のムービーでも紹介されています。

How To Detect an Exoplanet with a DSLR - YouTube


「PCとデジタル一眼レフカメラがあれば、あとはいくつかの機材を準備するだけで太陽系外惑星を検出することができます」と語るシュナイダーさん。


自作感あふれるカメラ台にセットされた一眼レフ。これが地球の動きに合わせて角度を変えながら撮影することができるというのだから驚きです。


地球系外惑星を検知する方法は以下のとおり。肩に載せたデカいカボチャのようなものが光を放つ恒星で、手に持っている小さなカボチャが地球のような惑星です。惑星は自ら光を放たないので、通常の方法で検出することはほぼ不可能と言えます。


惑星が恒星の周りを公転するとき、タイミングがうまく合えば恒星と地球の間を横切る瞬間があります。このときに生じる恒星の光量の変化を検知することで、惑星の存在を確認することができる、というわけです。この方法はトランジット法と呼ばれ、NASAなどでも実際に用いられているれっきとした手法です。


というわけで、さっそく機材の準備をスタート。夜空の星を撮影すると言うことで、一般的なユーザーの多くが持っている短いレンズではズームが足りなくて撮影ができません。ということで、シュナイダーさんはオークションサイトのeBayに出品されていた中古のニコン製300mmレンズを92ドル(約1万円)で購入。


しかしシュナイダーさんが持っているのはキヤノンの「EOS Kiss F(北米名:EOS Rebel XS)」。安さで選んだとおぼしきニコンのレンズを装着するために、シュナイダーさんはAmazonでニコン‐キヤノンアダプターを15ドル(約1800円)で購入しました。


そしてコレがDIY版自動赤道儀を作るための材料一覧。


まずは、どこにでもありそうな合板を2枚。これに加えて、ムービーには映っていませんが土台用の木製パーツなどが後で出てきます。


そしてアルミ製の小さなブロックと……


ねじ山が切られた長めの棒を1本。軽く曲げられているのですが、この形がキモになってきます。


壊れて使えなくなったインクジェットプリンターから引っこ抜いてきたプラスチック製のギヤを2枚。


ドアの根元などに使われるヒンジを1つ。


そして、ここは少し高度になりますが、赤道儀を駆動するステッピングモーターを制御するための基板を作成。自作マイコンのArduinoを流用すれば簡単に作れる模様です。


まずは土台となる部分を準備するため、合板製の三角形の土台を用意。3スミには高さを調整するためのボルトが取り付けられています。


土台の上に角柱をセットするのですが、上面が斜めにカットされているのがポイント。この角度は、シュナイダーさんが住んでいる地域の緯度に合わせて決められています。


ステッピングモーターの軸に、インクジェットから外したギヤを圧入。なお、いつの間にかモーターが用意されていたり、ボードに穴が開けられていますが、これはシュナイダーさんのマニアックそうな人柄を勘案して補完していけばOKかも。


2枚あった合板をヒンジでつなぎ合わせます。


片方の裏面に、マイコンなどの制御部をボルト留め。


カメラを固定するための雲台をネジ止めして……


あらかじめ曲げておいたねじ棒を板の穴に通し、プラスチック製のギヤの穴にねじ込んでいきます。


動作が分かりやすそうなカットがこちら。モーターの回転でネジ棒に取り付けられたギヤが回ることで駆動力が発生し、2枚のボードを開く力がかかります。この力でボードの角度を変化させ、夜空の動きに合わせてカメラを向けるというのが動作の仕組みとなっているのでした。


ベースにセットした角柱のナナメ部分にボードをネジ止めすれば、本体の完成です。


夜空にセットされたDIY自動赤道儀の姿。モーターの駆動用には、自動車かバイク用の小型バッテリーが用いられている模様です。


今回狙ったのは、「M27 Dumbbell Nebula(亜鈴状星雲)」の近くに見え、太陽系から63光年離れた位置にある「HD 189733」と呼ばれる恒星。この星は惑星「HD 189733 b」を持つことが知られており、惑星が横切る際に生じる光の変化を検知して、惑星の存在を確かめてやろう、というのが狙いです。


ということで得られたデータをプロットしたのが以下のグラフ。約108分にわたってわずかに光量が減少したことが確認され、デジタル一眼レフカメラによる太陽系外惑星の検知が成功しました。なお、大気の揺らぎなどの影響を除去するためには、Irisというフリーソフトを用いたとのことでした。


このように、シュナイダーさんは高価な機器を購入することなく、わずか200ドル(約2万円)程度の予算で地球系外惑星の観察に成功しました。工夫次第で誰でもこのような観測ができるようになったのは、機材の発達のおかげと言えるのかもしれません。

なお、自作が困難な場合でも各メーカーから自動赤道儀が発売されているので、興味のある人は試してみてもいいかも。持ち運びにも便利なビクセンのポータブル赤道儀「星空雲台ポラリエ」だと、Amazonで3万5000円程度で入手が可能となっています。

Amazon.co.jp: Vixen 星空雲台ポラリエ(WT) 4955295355051: カメラ・ビデオ

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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