従来の核融合炉の10倍のエネルギーを生み出し原発よりもはるかに安全な核融合炉をロッキードが開発中
アメリカの航空機・宇宙船開発大手のロッキード・マーティンが、地球上の電力すべてを賄えるほどの巨大エネルギーを生み出せ、原子力発電のような環境汚染がない核融合炉を従来比で10倍コンパクトにした「Compact Fusion Reactor(CFR)」を開発中です。
Skunk Works Reveals Compact Fusion Reactor Details | Technology content from Aviation Week
http://m.aviationweek.com/technology/skunk-works-reveals-compact-fusion-reactor-details
High Hopes – Can Compact Fusion Unlock New Power For Space And Air Transport? | Things With Wings
http://aviationweek.com/blog/high-hopes-can-compact-fusion-unlock-new-power-space-and-air-transport
核融合炉を研究開発するロッキード・マーティンの研究所「スカンクワークス」は、従来の核融合炉よりも10分の1のサイズの核融合炉「Compact Fusion Reactor(CFR)」を開発中です。CFR開発の様子は以下のムービーで確認できます。
Lockheed Martin: Compact Fusion Research & Development - YouTube
スカンクワークスのトム・マクガイアさんは「50年前に核分裂反応を発明したときに人類は歓喜しましたが、『核融合反応』であればより安全により大きなエネルギーを創出できる」と話します。
これはCFR開発のための実験装置。
核融合を使う次世代の飛行機が燃料切れを心配する必要はなくなります。
核融合反応でのエネルギー創出は、太陽と同じメカニズム。
原子から電子を離脱させた原子核同士を衝突させて新しい原子を生み出す際に膨大な量のエネルギーが生まれてきます。このエネルギーは化学反応で生み出されるエネルギーとは桁違いに大きなもの。
さらに核融合炉では原子力発電所のような核廃棄物が出ないので安全かつクリーンな発電が可能。
世界中のエネルギーを安全に環境を汚すことなく賄えます。
原子核融合炉で大きな鍵を握るのは巨大な電流と数億度という高温の環境を作り出すこと。
CFRは従来の核融合炉に比べて10分の1の小さなサイズで設計しています。
最終的にはトラックに乗せられるくらいのサイズを想定しているとのこと。
コンパクト化で得られるメリットは、開発時間の短縮。従来5年必要だった設計時間を3カ月にできるなど、開発速度アップが期待できます。
試作機は5年以内の完成を予定しているとのこと。
従来の核融合炉では超高温のプラズマ環境下で重水素と三重水素を衝突させてヘリウムを生成させるD-T反応を起こすためのプラズマ閉じ込め方式にトカマク型と呼ばれる技術を採用していますが、大量の電力を必要とするトカマク型では発電できるエネルギー以上のエネルギーが必要という本末転倒な結果が起こりえました。
しかし、タイヤチューブのような形にプラズマを閉じ込めるトカマク型と違って、CFRでは一連の超伝導コイルを使って磁場を生みだしチャンバー内のより広い領域にプラズマを保持することができます。
この新しい方法を採用することで、CFRは同じサイズのトカマク型の反応器に比べて10倍のエネルギーを作り出せるようになるため、サイズを10分の1に小さくできるとのこと。
CFRはまだプロジェクトがスタートした段階ですが、プロトモデルはトラックに積める23フィート×43フィート(約7メートル×約13メートル)のサイズで設計されており、一つのユニットで約8万世帯の家庭用電力を賄える100メガワットの出力を実現するとのことで、ロッキード・マーティンは5年以内に試作機を完成させ10年での実用化を目指しています。
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