アリが大気中の二酸化炭素を減少させていることが25年がかりの研究で判明
By Charlie Stinchcomb
大気中の二酸化炭素の増加は温室効果によって地球温暖化の原因になっていると言われており、世界各国でCO2排出量の削減が取り組まれています。そんな大気中の二酸化炭素を小さなアリが減少させていることが、アリゾナ州立大学地理学・都市計画スクールのロナルド・ドルン教授の25年がかりの研究によって判明しました。
Ants as a powerful biotic agent of olivine and plagioclase dissolution
http://geology.gsapubs.org/content/42/9/771
25 year experiment shows ants can break down minerals, sequester CO2 | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2014/09/25-year-experiment-shows-ants-can-break-down-minerals-sequester-co2/
多くの鉱物では二酸化炭素と反応することで風化作用が起こり、炭酸塩を生成しながら粘土鉱物に変換されていきます。暖かい地域では風化作用が盛んに起こるため、大気から二酸化炭素が多く消費され、気温を冷やす影響があります。一方で涼しい気候では風化が遅くなるため、大気に二酸化炭素が蓄積して気温が高くなる傾向にあります。いくつかの岩の表面が露出するのはこれらの物理的風化作用によるものですが、生物が影響を及ぼすこともあります。
例えば、木の根は割れ目やすき間に伸びていき、周囲の岩を押し上げます。また、土中の地衣類や菌類は岩をゆっくりと溶かすものがあり、穴を掘る生物が岩を押し上げることも。地質学の研究にあたってこれらの生物学的影響を考慮することは困難であるそうです。
By Becky EnVérité
ドルン教授は25年前から風化作用を含む地形学的特徴の長期的な資料収集に関する研究を行っており、アリゾナ州のカタリナ山地や、テキサス州のパロ・デュロ・キャニオンなどでハワイの玄武岩を砕いた砂を使った観察を行っていたとのこと。ドルン教授は裸地・木の根・アリの巣を含むさまざまな環境下に50cmの穴を開けて、フタの空いたプラスチックパイプに玄武岩砂を詰めて、5年ごとにサンプルを集めました。教授は25年間分のサンプルから風化作用によって生産される炭酸塩の分量測定と、電子顕微鏡を使った分析を実施しました。
その結果、アリの巣のサンプルの風化作用が目立って進んでいることが判明。菌類などの生物的作用が確認される場所では風化作用が通常の10~40倍ほど速く進行しますが、アリの巣では50~175倍にもなっていました。また、アリの巣の中には炭酸塩が蓄積されていましたが、シロアリの巣では木の根と同じ程度だったとのこと。アリの巣内部の鉱物が風化する様子を見た人は今までに誰もいないため、実際にどのような現象が起こっているかは今後の研究にかかっています。
By Bill & Mark Bell
ドルン教授は、アリは巣作りのため土や砂粒を動かすため、鉱物が大気にさらされることで風化作用が加速しているのではないか、と予想しています。さらに、アリの多様化と増加が始まったポイントと、数百万年前に恐竜時代の高温気候から氷河期へシフトして、大気中の二酸化炭素が減少したポイントと同じであることは関係があるかもしれない、と述べています。
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