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現行リチウムバッテリー比2倍のエネルギー密度の全固体電池が数年以内に実用化の見込み


電解液ではなく固体を電解質に用いる「全固体電池」は、バッテリー密度の高さから次世代バッテリーとして電気自動車への搭載が有力視されており、トヨタなどの自動車メーカーが開発を進めている技術です。その全固体電池を「数年で商業化する」というスタートアップ企業が登場しました。

Secretive Company Claims Battery Breakthrough - Scientific American
http://www.scientificamerican.com/article/secretive-company-claims-battery-breakthrough/

全固体電池を数年で実用化・商業化することを計画しているのはアメリカ・ミシガン州のスタートアップ企業Saktiで、これまでは開発中の全固体電池について詳細を話すことを避けてきましたが、開発が順調に進んでいるためか、ついに開発中の全固体リチウム電池「Sakti3」の現状と今後の予想をScientific Americanに明らかにしました。

Saktiのアン・マリー・サストリーCEOによると、Sakti3は薄型ディスプレイや太陽光パネルで用いられている薄膜堆積法を活用して作られており、すでに現行のリチウムイオン電池の最高エネルギー密度の2倍にあたる1143Wh/lのエネルギー密度を持つ全固体電池の作成に成功しているとのこと。そして、「Sakti3はあと数年で商品化できる見込みで、最初に採用される製品は家庭用電化製品でしょう」とサストリーCEOは述べています。


全固体電池は電解液の代わりに固体電解質を用いるためエネルギー密度がリチウムイオンバッテリー比で最大5倍まで高められ、さらに耐久性もリチウムイオンバッテリーよりもはるかに良くバッテリー寿命を格段に向上させられるため、電気自動車用バッテリーの決定版になるという予想もあり、自動車メーカー各社は開発を急いでいます。

Saktiはミシガン大学工学部で異例の早さで教授に就任したサストリーCEOが興したベンチャー企業で、Sakti3の技術自体、2007年のASMEガスタスラーソン賞、2011年のASMEフランククレイス・エネルギー賞などを獲得するなど数々の受賞歴を誇り、GMなどの自動車メーカーから数百万ドル(数億円)の資金提供を受け、またGMの元幹部も取締役に名を連ねるなど自動車メーカーなどからの期待の大きい企業と言えます。


サストリーCEOはSakti3の販売価格については明言を避けたものの、「Sakti3の製造に用いている薄膜堆積技術に大きな進歩があったため、Sakti3の製造もこの恩恵を受ける形です」と述べ、低コストでの製造に見込みがついたことを示唆しています。

また、一般的にアメリカの自動車市場において、「300マイルを100ドルで(約500kmを1万円で)」という燃費が、ユーザーが本格的に電気自動車の購入を検討するラインだと考えられているところ、薄膜堆積プロセスの技術的な進歩によって、この燃費基準もクリアできるとサストリーCEOは予想しています。


抜群の研究実績を誇るサストリーCEOの存在と自動車メーカーからの手厚い援助を受けているという事実から、Saktiへの期待の高さは伺い知れるところ。そのためサストリーCEOの「Sakti3の市場投入まであと数年」という予想には期待せざるを得ません。

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in ハードウェア,   乗り物,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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