神について考えることで意思決定におけるAIの受容を高める可能性があるという研究結果

映画やゲームといった娯楽から医療現場まであらゆるものにAIが組み込まれつつある中で、「AIをどこまで受け入れるか」は人によって大きく異なっています。カザフスタンのナザルバエフ大学の研究者らは宗教の信仰が意思決定にどのように影響するかについて焦点を当てて分析した結果、「神」の存在についての意識がAIの受容を高める可能性があると示唆しました。
Thinking about God increases acceptance of artificial intelligence in decision-making
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10438833/
研究では、意思決定におけるAIの受容に影響を与える心理的要因を検証するために、合計2462人を対象とした8つの実験を実施しました。8つの実験では、それぞれ神について考える意識である「神の顕著性(Salience of God)」を操作した上でAIに関する意識調査をしています。
実験1では、神や宗教的概念について事前に記述させたグループと単にその日の出来事について記述したグループで、人間の推奨とAIの推奨のどちらに頼るかという相対的な好みを示しました。なお、参加者の信仰の強さは有意な差がないことが確認されています。結果として、神について記述させられたことで神の顕著性が上がったグループは「実験中に神について考える時間が長かった」と回答した上で、人間からの推奨を受けることを好む傾向が有意に低くなったことが判明しました。

実験2では、「神の顕著性がタスクをこなす際にAIに頼る意欲を高める」という可能性を4つのサブ実験(2a〜2d)で検証しました。実験2aと2bでは、神について記述させることで神を意識させたグループとそうでないグループを比較し、それぞれ架空の投資と聞きたい音楽についてAIと人間のどちらの助言を聞くか回答しました。実験2cと2dはトルコで実施された事前登録済の研究で、モスクが見える場所で参加者を募集したり、待合室で流す音楽を通して神を意識させたりと、環境的手がかりの有無によって神の顕著性を操作しています。その後、食品関係のアンケートで人間の栄養士と栄養を専門とするAIのどちらのアドバイスを聞くか判断しました。いずれの実験でも、神を意識したグループはそうでないグループよりAIを受け入れる割合が10%以上も高かったことが報告されています。
実験3では、医療における意思決定の文脈で神の顕著性の役割を調査した事前登録実験において、根底にある心理的プロセスに関する仮説を兼用しています。ここでも神の顕著性が低い条件では参加者の33.5%がAIの推奨を好み、神の顕著性が高い条件では参加者の44.3%がAIの推奨を好んだように、神の顕著性が判断に強い影響を与えていることが分かりました。
実験4では参加者を3グループに分け、「神の顕著性が低い」「神の顕著性が、神の完全性を強調する形で高い」「神の顕著性が、人間の完全性を強調する形で高い」という事前介入を受けました。その上で人間のトレーダーが選んだ仮想通貨とAIがアルゴリズムで選択した仮想通貨のどちらを選ぶかを回答した結果、神の顕著性が高い2グループの方がAIを優先する割合が14%高く、そして神の完全性を強調した方がAIの受容度は高まることが示されました。つまり、神の顕著性によりAIの受容が高まるのは、神を意識することで「人間は不完全だ」と感じるため、AIに頼るようになると研究者らは推測しています。

その他の説として、神の顕著性が高いとAIを選択しやすくなるという理由について、AIの「ブラックボックスで動作する、仕組みが分かりにくいシステム」が、神の意思決定に似ていると感じているからではないかと研究者らは考えました。そこで実験5では、AIをブラックボックスと認識するか、説明可能なシステムと認識するかを事前教育することで、選択がどのように変化するかを実験しています。その結果、AIの仕組みが不明かどうかは選択にほとんど影響せず、神の顕著性を高められたグループはAIの説明にかかわらず一貫して人間の助言よりもAIの助言を選ぶ傾向が強いことが確認されました。
研究者らはすべての実験を通じて「神の顕著性によるAI受容の効果は特定の分野に限られたものではなく、さまざまな文脈において一貫して確認されました。また、参加者の宗教的信念や実験方法、国籍などにも大きく左右されないことが示唆されています。神についての考えは、自己を相対的に小さく感じさせ、人間の不完全さを認識しやすくすることで、意思決定において人間に頼る必要性をあまり感じなくなり、AIベースの推奨事項を受け入れやすくなるのです」と説明しています。また、実験ではAIの精度や能力を変えなくても受容度が変化していることから、人々がAIを受け入れるかどうかは技術的な優劣だけでなく心理的要因にも大きく左右されると考えられます。
論文では最後に「機械の『知能』における飛躍的な進歩は、恋愛相手選びから医療処置の選択に至るまで、生活のほぼあらゆる側面における人々の意思決定方法を良くも悪くも変える可能性を秘めています。世界最古の制度の1つである宗教の基盤である『人間と神との関係』を理解することが、人々が世界の最新技術を受け入れる理由を理解する上で、私たちをより深く理解する助けとなるかもしれません」と研究の意義について語りました。
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